ラブレター
いつも、誰かに依存・執着して生きていた。恋人・友達・家族、誰に対しても。
それが、愛で安心だと、信じ疑うこともなかった。
依存も執着も近くにありすぎて、もう自分の一部なんだと思っていた。
依存・執着する世界しか知らなかった。
それが、私。
あなたは、藤の色が似合う人。
努力家で、たくさんの目を持つ、真ん中の人。麺類が大好きで、好きなお弁当のおかずはからあげ。そんな人。
依存も執着もない世界が、俺の理想。
それが、あなた。
あなたの声を初めて聞いたとき、身体中の細胞が喜んだ。
懐かしく、苦しくもあたたかい。
この瞬間、あなたと同じ今を生きていてよかった。と本当に思った。
あなたとの出会いは、私に濃密な想いを教えてくれた。
だからこれは、あなたが私にくれた愛のかけらたち。
最初から、SEXは苦手だった。
何回してもやっぱり慣れなくて、正直好きじゃなかった。
過去に、恐怖や諦めからSEXをした。気持ちの伴わない。そんなSEXだった。
今思えば、相手にどれだけ嫌だという気持ちが伝わっていたかはわからない。
好きな人には彼女がいた。
私は2番目、もしくは体だけの都合のいい相手。
そして、SEXの相手は彼の友達。
『彼女と別れて、ゆきのそばにいる。』
と言った数時間後、
私は嘘つきになっていた。
彼の友達は、
『なにもしていない』
彼の彼女は、
『ゆきちゃんは、心が病んでいるから嘘をついている。』
彼は
『・・・・・』
これが彼らの選んだ答え。
残ったのは、心が病んだ嘘つきだけ。
私の中はぐちゃぐちゃで、
もう、どうでもよかった。
あの時から、私にとってSEXは、ただの道具でしかなかった。
自分を誤魔化すために、新しい傷をつけ、傷の上書きをしていった。
ずっと、感情に蓋をして生きていた。そうすることでしか、生きられなかった。
怒りも悲しみも憎しみも恨みも、ないことにして。
隠せば隠すほど、反発して大きく、苦しくなるのに。
息のしにくい世界。
それが、私の生きる世界だった。
過去の話、そんなふうに思おうとした。
『今、生きている。それでいい。』
だが、傷を見るたび思う。
頭ではわかっている。だけど、
なにかが違う。
『本当は、そんなこと思っていない。』
幸せじゃないとは思っていない。
幸せだと思う。
それでいいのかもしれない。
だけど私は、苦しかった。
幸せなら、どんなことも許し、受け入れられるのだろうか。
癒えることなく残り続ける傷もある。
あの時、隠した感情達が、すぐそばで私を見ている。
溢れてくる恐怖。いつもなにかに怯えながら過ごす日々。
幸せだけど、息がしにくい。
本当は、自分が1番嫌だった。
傷をつけ続けることでしか、生きれない自分に腹が立った、情けなかった、軽蔑すらした。
自分が1番、自分を嫌っていた。
顔では笑いながらも。
なぜあの時、あなたに話したのか、わからない。
ただ、あなたがよかった。
言葉のでてこない私を、あなたは急かすでも、言葉をかけるでもなく、ただただ、待ってくれた。
はじめて、あなたはあなたのままでいいんだよ。と言ってもらえたような、そんな気がして、涙がこぼれた。
気がつけば、あなたは大切な人だった。
あなたから、溢れてくる心地良い音や空気、五感が喜ぶのがわかった。
あなたの前では、コロコロ表情が変わる、子供みたいな私がいた。
あなたとの会話の中には、たくさんのヒントが隠れてた。
答えではなくヒントが。
甘やかすでも突き放すでもなく、厳しくも優しい言葉がそこにはあった。
だけど、期待させるようなことは、ひとつも言ってくれなかった。
私が知っていた優しさとは、違うなにかをくれた人。
子供のように、泣きじゃくる私に、
『深呼吸してください。』
まず呼吸を整えて、落ち着いてから、今やること、できることに集中する。と教えてくれた。
ずっと、他人を優先してきた私には、自分を優先するってことがわからなかった。
自分に愛情を向けるって意味も。
まずは自分、それから家族や身近な人、と言われても、私はあなたを優先したくてしかたがなかった。
『自分のことも愛すし、優先もするけど、あなたのことも優先したい。』
『まずは自分からですよ。』
『まずは自分を知ることです。』
『自分が1番、自分に優しく。』
何度も繰り返された、言葉達。
自分のことや感情を、適当に扱って、人に合わせて、ただなんとなく生きていた私は、わかっているつもりで、本当はなにもわかっていなかった。
自分に1番優しくが、できていなかった。ずっと無視していじめてた。
人に謝る癖がある私が、本気で謝らなきゃいけなかったのは、他の誰でもなく私自身だった。
嫌われることがなにより怖くて、とりあえず謝っていた。それ以上に、謝ることで、『いいよ。』と
相手に言ってほしかった。私自身の安心のために。
いつからか、そんなことが普通になり、自分の都合で謝っていたことに気づいた。
癖に苦しくなっていると、
『思考の癖に気づいたら、まずは落ち着かせる、でいいですよ。』
『すこしずつ、すこしずつ。』
と言ってくれた。
人との距離は、近ければ近いほど、安心できると思っていた。
だって、ずっと寂しかったから。
ぽっかり空いた、この穴を埋めてくれる人が、いつか現れると信じていた。この人だ、と思っても長くは続かず、また次の人を探す、その繰り返し。
あなたは言った。
『相手を思いやれる距離感でいられたら。』
考えたこともなかった。
当たり前のように、できていると思っていたから。
だけど本当は、ぜんぜんできていなかった。
自分のことでいっぱいいっぱいになり、相手を思いやる余裕なんてなかった。
あなたに、もっとこっちを見てほしくて、私はどんどん欲張りになった。
私は、あなたに頼り甘えた。
今まで、他の誰かにしてきたのと同じように。
あなたは言った。
『俺がいないと、ゆきさんの実生活に影響することがあるなら、俺はいないほうがいいくらいなんだよ。』
『俺は、寂しさを埋めるための人にはなりたくないですよ。』
『俺は薬じゃないですよ。』
『薬と表現したのは、依存・執着になってますよ、ってことです。』
言葉の意味がわからなかった。
薬にもしていないし、執着もしていない、と本気で思っていたから。
あなたとの間に距離ができて、毎日泣いていた。頭が痛くなるほどに。
悲しくて寂しくて、あなたのいない世界は恐く、真っ暗な未来しか思い描けなかった。
だけど、いくら真っ暗な未来しか思い描けなくても明日はやってくるし、時間は過ぎていく。
毎日泣きながらも、あなたが教えてくれたことを思い出し、続けていた。それだけ。
ある時、思った。
頭が痛い時、薬を飲むように、
辛く苦しくなると、私はあなたにLINEした。
自分でどうにかしようとする前に、あなたを頼り、あなたに魂を逃がしてた。
薬にしていたんだ。執着しているんだ。と、やっとわかった。
なのに、頭ではわかっていても、執着はもう私の一部になっていて、どうしたら切り離せるのかわからなかった。
執着という形でしか、愛することを知らなかった。
時が経っても、不安は消えるどころか大きくなっていた。
心のバランスが完全に崩れていた。
既読はつくけど、返事はこない。
なのにLINEすることが、辞められなくなっていた。
いつからか、既読がつくだけでもいい、ブロックされてないだけいい、と考えるようになっていた。どんな形でも。と、本気で思ってた。
自分で自分と向き合うって、決めたはずなのに、いつからか、あなたに褒めてほしいからに変わってた。
『依存・執着を手放して、自分に向けてください。』
あなたに嫌われたくなくて、手放そうと思っても、どうすればいいかわからないし、もし手放せても、あなたのことが全て泡のように消えてしまうような気がして、恐くて苦しくて、わからなくなっていた。
だけど、思い出した。
あの頃、あなたを思うと、あったかくて、ホッとした。
今、あなたを思うと、不安で嫌われることが恐くてしかたがなくなる。
あなたを想って、たくさんの気持ちを感じ、味わい、知ったんだ。
あなたが、離れることを選んでくれなかったら、私はずっと、あなたに頼って甘えて、自分ではなにもできなくなっていた。
あなたの言っていた『俺軸』になってた。
あなたを神様に、薬にして。
それがわかった時、悲しいけど離れてくれてありがとう。って、
やっと思えた。
本当はわかってた。
返事がないのが返事だって。
でも、認めたくなくて、わからないふりをしてた。
そして、やっと気づいた。
私は、私を見てほしかったんだ。
ずっと。
可哀想な私、病気の私ではなく、
私というひとりの人間を。
親も友達も恋人も、私のことなんて見ていない、見ようとしていない、と思ってた。
だから私は、相手の望む私を演じた。自分じゃないものになろうとした。そうすれば、必要な人間になれるから。
だけどそれは、自分に嘘をつくことだった。苦しかった。
ないものばかり見て、探してた。
ずっと、ひとりだと思って。
『誰に見てほしいの?』
その瞬間、あなたを想って、気づいたの。
あなたは私を見てくれてた。
そう、最初から。
私の中の私を見ようとしてくれてた。気づいたとき、涙が溢れた。
愛で包まれた、あたたかな世界に私はいた。
見ていなかったのは、私だった。
あなたは私に、たくさんのことを教えてくれた。
真ん中でいるために大切なことや、いろんな感情も。
いっぱい泣いて、苦しくもなった。
だけど、ひとつひとつ乗り越えた先には、気づきがあって、少しずつありのままの自分に戻っているのがわかる。
あなたが教えてくれたことは、
今も私の中で生きている。
だから。
きっと今、私にできることは、
自分を知り、許し、愛すこと。
今、あなたを思うと、優しく穏やかな気持ちに包まれる。
だから
いつか会う、その日まで。
バイバイ。
