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工程分析の種類と活用——単純工程分析・詳細工程分析の進め方

「改善したいけど、どこから手をつければいいかわからない」——その答えが「工程分析」にあります。工程分析とは、製品や作業者の動きを工程記号で分類・記録し、改善の糸口を見つける手法です。IEの基本中の基本でありながら、現場で正しく使われているケースは意外と少ない。今回は、単純工程分析と詳細工程分析の違いと進め方を、現場での実践例とともに解説します。

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■ はじめに:工程分析とは何か

工程分析(Process Analysis)とは、製品が原材料から完成品になるまでの工程、または作業者が行う一連の作業を、決められた記号で分類・記録し、現状を「見える化」する手法です。

IE(インダストリアルエンジニアリング)の基本ツールのひとつであり、改善活動の出発点として広く使われています。

工程分析で明らかになること:
・どの工程に時間がかかっているか
・停滞・運搬など非価値作業がどこにあるか
・工程の流れに無駄な動きはないか
・改善すべき優先工程はどこか

「なんとなく忙しい」「なんとなく流れが悪い」という現場の感覚を、数字と図で客観的に表現できるのが工程分析の強みです。

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■ 工程記号の基本:4つの記号を覚える

工程分析では、JIS規格に定められた工程記号を使います。まずこの4つを覚えることが出発点です。

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【○(丸):加工】

原材料・部品の形状・性質・機能を変える作業。
例:切削・溶接・組付け・塗装・ネジ締め・検査(※検査は別記号の場合も)

→ 価値を生む工程。増やしたい工程。

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【□(四角):検査】

品質や数量を確認する作業。
例:寸法測定・外観検査・数量確認・受入検査

→ 必要だが価値を直接生まない工程。精度を上げて回数を減らす方向で改善。

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【⇒(矢印):運搬】

製品・材料・部品を移動させる作業。
例:台車での搬送・フォークリフト移動・コンベア搬送・手で持ち運ぶ

→ 原則として無駄。レイアウト改善・自動搬送化で削減を目指す。

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【▽(三角):停滞(貯蔵・滞留)】

製品や材料が動かない状態。
例:棚・倉庫での保管・工程間での仕掛り待ち・検査待ち・手待ち

→ 最大の改善ターゲット。停滞はリードタイム延長とコスト増の原因。

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【補足:複合記号】

加工と検査が同時に行われる場合は○の中に□を書く複合記号を使います(例:自動機での加工中に自動検査が走る場合など)。

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■ 2種類の工程分析

工程分析には大きく2種類あります。目的と対象によって使い分けます。

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【① 単純工程分析(Simple Process Analysis)】

工程全体の流れを大まかに把握するための分析です。

特徴:
・工程ごとに記号と概要を記録するだけ
・時間・距離の詳細計測は不要
・1時間以内で現状把握できる
・改善の「どこに手をつけるか」を決めるために使う

使いどころ:
・はじめて工程を分析するとき
・全体の流れを俯瞰したいとき
・どの工程に問題があるか特定したいとき

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【② 詳細工程分析(Detailed Process Analysis)】

工程の詳細(時間・距離・作業者名など)まで記録する、より深い分析です。

特徴:
・各工程の所要時間・運搬距離を計測・記録
・工程記号に加えて、数値データで現状を定量化
・分析に時間がかかるが、改善効果の定量化ができる
・改善前後の比較に使える

使いどころ:
・改善案の効果を数値で示したいとき
・ボトルネック工程の時間を正確に把握したいとき
・改善後の効果測定をしたいとき

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■ 単純工程分析の進め方

【ステップ1:対象工程を決める】

まず分析する範囲を決めます。「どこから・どこまで」を明確にしないと、分析が広がりすぎて完成しません。

例:「原材料の受入から、製品の完成品棚入れまで」

【ステップ2:工程を書き出す】

対象の工程を順番に書き出します。ポイントは「現場を歩きながら」観察して書くことです。頭の中だけで書くと、実際と異なる場合があります。

書き出し例(ある製品の加工ライン):

  1. 材料倉庫から取り出す

  2. 台車で加工ラインへ搬送

  3. 切削加工

  4. 加工完了品を置く

  5. 検査担当へ持ち運ぶ

  6. 寸法検査

  7. 合格品を次工程棚へ運ぶ

  8. 次工程(組付け)を待つ

  9. 組付け作業

  10. 完成品棚へ搬送・保管

【ステップ3:工程記号を割り当てる】

書き出した各工程に、工程記号(○□⇒▽)を割り当てます。

上の例で割り当てると:

  1. 材料倉庫から取り出す → ⇒(運搬)

  2. 台車で搬送 → ⇒(運搬)

  3. 切削加工 → ○(加工)

  4. 加工完了品を置く → ▽(停滞)

  5. 検査担当へ持ち運ぶ → ⇒(運搬)

  6. 寸法検査 → □(検査)

  7. 合格品を棚へ → ⇒(運搬)

  8. 次工程待ち → ▽(停滞)

  9. 組付け作業 → ○(加工)

  10. 完成品棚へ搬送・保管 → ⇒(運搬)+▽(停滞)

【ステップ4:集計して現状を把握する】

各記号の数を集計します。

この例では:
・○(加工):2工程
・□(検査):1工程
・⇒(運搬):5工程
・▽(停滞):3工程

加工2工程に対して、運搬5工程・停滞3工程——これが現状の非効率さを示しています。

【ステップ5:改善のヒントを見つける】

記号の集計から、改善の方向性が見えてきます。

この例での改善ヒント:
・運搬が多い → レイアウト見直し・工程間距離の短縮
・停滞が多い → 工程間の生産バランス調整・仕掛り在庫削減
・加工の比率が低い → 非価値工程を削減して加工に集中できる環境に

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■ 詳細工程分析の進め方

単純工程分析で改善ポイントが特定できたら、次は詳細工程分析で数値化します。

【ステップ1〜3は単純工程分析と同じ】
工程の書き出しと記号の割り当てまでは同じ手順です。

【ステップ4:時間・距離を計測する】

各工程の所要時間をストップウォッチで計測します。運搬工程は距離(メートル)も計測します。

計測のコツ:
・最低3回計測して平均をとる
・スマートフォンの動画撮影を使うと後から確認できる
・作業者に「いつもの速さで」やってもらう(意識して速くしてもらわない)

詳細工程分析表の例:

| No | 工程名 | 記号 | 時間(秒) | 距離(m) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 材料倉庫から取出し | ⇒ | 45 | 15 | 往復 |
| 2 | 台車で搬送 | ⇒ | 60 | 20 | |
| 3 | 切削加工 | ○ | 120 | — | 機械サイクル |
| 4 | 加工完了品を置く | ▽ | 180 | — | 次工程待ち |
| 5 | 検査担当へ持運び | ⇒ | 30 | 8 | |
| 6 | 寸法検査 | □ | 90 | — | |
| 7 | 合格品を棚へ | ⇒ | 25 | 6 | |
| 8 | 次工程待ち | ▽ | 300 | — | ロット待ち |
| 9 | 組付け作業 | ○ | 240 | — | |
| 10 | 完成品棚へ搬送 | ⇒+▽ | 40 | 10 | |

【ステップ5:集計・分析する】

記号別に時間・距離・工程数を集計します。

| 記号 | 工程数 | 合計時間(秒) | 合計距離(m) |
|---|---|---|---|
| ○ 加工 | 2 | 360 | — |
| □ 検査 | 1 | 90 | — |
| ⇒ 運搬 | 5 | 200 | 59 |
| ▽ 停滞 | 3 | 480 | — |
| 合計 | 11 | 1,130 | 59 |

この例では:
・加工時間 360秒 ÷ 全体時間 1,130秒 = 加工比率 31.9%
・停滞時間が最も長い(480秒 / 42.5%)

加工比率31.9%——つまり全体の68%以上が非価値工程です。

【ステップ6:改善案を立案・効果試算する】

数値が出たことで、改善効果を定量的に試算できます。

改善案の例:
・停滞を200秒削減 → リードタイム17.7%短縮
・運搬距離を半分に(59m→30m)→ 運搬時間を約半分に

改善前後を同じ詳細工程分析表で比較することで、効果が数字で証明できます。

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■ 工程分析を現場で定着させるコツ

【コツ①:最初は1工程だけに絞る】
全工程を一度に分析しようとすると挫折します。最初は「この工程だけ」と絞って実施してみてください。

【コツ②:現場を歩きながら書く】
机上で想像して書いた工程分析は実態と大きくずれます。必ず現場で実際の流れを見ながら書きましょう。

【コツ③:作業者を巻き込む】
「分析されている」という感覚を作業者に持たせないよう、「一緒に現状を確認しましょう」というスタンスで進めると協力を得やすくなります。

【コツ④:改善案も一緒に考える】
分析結果を発表するだけでなく、「この停滞をなくすにはどうすれば?」と現場担当者に問いかけることで、実行可能な改善案が出てきます。

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■ まとめ:工程分析は「見える化」の最初の一手

工程分析は難しい手法ではありません。現場を歩いて、工程を書き出して、記号を割り当てて、集計する——それだけです。

単純工程分析で「どこが問題か」を把握し、詳細工程分析で「どれくらい問題か」を数値化する。この2ステップを現場に根付かせることで、改善活動が「感覚」から「データ」に変わります。

まずは自分の担当工程を1つ選んで、単純工程分析を試してみてください。10工程を書き出して記号を割り当てるだけで、現場の見え方が変わります。

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