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「父に怒られた。」

子供の頃の記憶

父とぶつかって家を
飛び出したことがある。

行き先も決めず、
ただ近くの土手に身を隠して、
誰かが迎えに来るのを待っていた。

夕方になっても、誰も来なかった。

しぶしぶ帰ることにして、
勝手口からそっと家に入る。

すると母は、何も聞かずに「おかえり」
といつもの声で迎えてくれた。

あたたかい空気に包まれて、
外で張っていた意地がすっとほどけた。

あのときの静かな帰り道と、
母の一言は、今でも心のどこかに残っている。