short stories-2,感覚フレンド
朝から星がはじけた。これは朝野翔吾にとって喜ばしいことだった。目の前には看板型のチョークボード。その奥にはすりガラスのはめ込まれた木製の扉があり、ドアノブには入道雲のような形をした「OPEN」の札がかかっている。
通行人が、チョークボードに括りつけられたプラスティック製の箱からフライヤーと思しき紙を抜きとっていった。朝野も一枚とってみると、手書きのイラストと女性的な文字で商品の説明がされていた。センスのよさに感心する。改めてチョークボードに視線を移し、フライヤーに負けず劣らず見事な出来栄えのチョークアートを眺めた。
「ピコズベーカリー 本日OPEN」
窓から見るに客入りは上々のようだ。買い物を終えたスーツ姿の女性が、店のロゴが入った薄茶色の袋を持って朝野の横を通りすぎた。途端に、先ほどから周囲に漂っていた焼き立てのパンの香りがいっそう強くなる。鼻腔を抜ける、香ばしくもマイルドでしっとりとした刺激。朝野の並外れた嗅覚は、この香りがいかに素晴らしいかを余すことなく脳に伝達した。情報が飽和し、細胞が溶けるような感覚に襲われる。一方で心は感動に打ち震え、自分だけの世界に沈んだ朝野は、チョークボードの横に突っ立ったまま恍惚とした。脳天からなにかがポンッと噴出する。受け止めきれないほどの幸福感が津波のごとく押し寄せる。
「星がはじけた」
真横で声がして、唐突に現実へと引き戻された。朝野はこの聞き覚えのある声の主を恨みがましく睨んだが、当の本人は朝野の機嫌になどまるで関心がない様子で、期待に輝く目を店の窓にまっすぐと向けている。視線を追うと、窓越しに陳列されたパンが見えた。
「邪魔するなよ」
朝野が文句を言った。横に並ぶ中村はすまなそうにするでもなく、目をきらきらさせたまま顔だけを朝野に向けた。大した変化ではないはずなのに、今にもシャツのボタンを吹き飛ばしそうな腹がより強調されたように見えた。
「食べた?」
「まだ」口走った言葉で自分が既にパンを買う気でいることに朝野が気付く。
「そんなによかった?」
「ああ」
他人が聞いたら会話が噛み合っていないように聞こえるかもしれない。だがこれで合っている。中村は味の良し悪しを尋ねたわけではないのだから。
「お前が気に入ったんならきっと美味しいんだろうな」
中村が顔の向きを店へと戻した。朝野はオウムのようだと思った。
「野暮なやつ」
どうにも気が収まらず、そうぼやいた。中村にはなんの効果もなかった。
「早く入ろう」
パンを買うまでに大変な苦労を強いられた。もちろん混雑はしていたが、それよりも商品を選んで支払いが済むまでの間、あの魅惑の香りが充満する店内で、朝野は恍惚感の誘惑と戦い続けなければならなかった。危うくなる度、中村が肩をつついて現実に引き戻してくれた。もし一人だったら、入店を断念せざるを得なかったかもしれない。
外からはわからなかったが、奥には買った商品を食べることができるカフェスペースが設けられていて、コーヒーや紅茶などの飲料も少数だが扱っていた。朝野は感激し、この素晴らしい空間を堪能すべく、帰宅時にまた立ち寄ることを決めた。
どうにかこうにかパンを購入し、二人揃って外に出た。開店時間からそうたっていないため、どのパンもまだ温かかった。中村はずいぶん買い込んでいたが、きっと一時限目の講義が始まるまでには平らげてしまうだろうと朝野は思った。
ピコズベーカリーは駅から大学まで続く大通りの、ポストが設置された交差点を脇に入ったところにあった。予定外の寄り道をした朝野と中村は、急ぎ足で大学に向かいながら、袋の中からそれぞれ最初のパンを取り出した。期待に胸を膨らませ、乾杯のようにパンを掲げると、大きな口を開けてかぶりついた。二人の足がゆっくりと止まる。穏やかかつ強烈な恍惚感。ポンッと音がして、朝野と中村はしばし自分の世界に浸ってから顔を見合わせた。互いの頭上に視線を置きながら呟いた言葉が、綺麗に重なった。
「星がはじけた」
心満意足。朝野と中村は、もはや人の目など気にする余裕もなく、人通りの多い道に突っ立ったまま、間抜けなにんまり顔を浮かべた。
大学に到着し、朝野と中村はごみを捨てる暇もなく講義室に駆け込んだ。
いつも一緒に授業を受ける二人の友人が、後ろの方の席で手を振った。山本遥日と佐々木祐介。朝野たちがくると、山本と佐々木は奥に詰めてスペースを空けてくれた。
「パン屋?」
二人の持つ袋に目を止めた佐々木が尋ねた。
「うん。やばかったよ」と中村。「たまたま見つけて行ってみたら、朝野が店の前にいて星がはじけててさ。これは間違いないと思って」
「へえ」
ほどなく教授がやってきた。
講義が始まるや、佐々木はいつも持ち歩いているクッションを枕にして机に突っ伏した。確かにこの教授は講義中、生徒に一切目を向けないが、だからといってここまで堂々とくつろぐのは佐々木くらいだ。十五分もたつころには完全に寝入ったようだった。
教授の書いた、コピーペーストした画像のようにおそろしく整ったグラフをノートに書き写していた朝野が、いびきの一歩手前の息遣いに気を取られて佐々木を見やった。
「相変わらずふてぶてしいよな」
朝野のぼやきを聞いて、中村がくすりと笑った。「寝不足なんだよ。昨日の夜サークルの奴らと飲んだって言ってた」
「また?」
「盛り上がって朝までやったんだって」グラフを写し終えたらしい山本が反対隣りで言った。
三人揃って、なんとも心地よさそうな友人に顔を向けた。頭から例の光が、繰り返し噴出してははじけた。
昼になり、朝野たち四人は生徒でごった返す食堂に入った。
集団生活では、より深い付き合いを築き、行動を共にするメンバーが厳選されていくものだ。注文したカレーライスの支払いを済ませた朝野は、窓際の端の席に、残り二人の友人を見つけた。シルバーの髪に革ジャンとなかなかパンチのある出で立ちの綾小路滉太と、打って変わって清楚で親しみやすい雰囲気の葵拓人だ。どちらも学科が違うため、朝野たち四人と講義で顔を合わせることはほとんどない。
二人は並んで座っているが、イヤホンをした綾小路は曲を聞くのに夢中な様子で、彼らの印象が対照的なこともあり、一見すると知らない者同士の相席のようだ。しかし朝野には、綾小路と葵が一つの楽しみを共有しているのがわかる。二人の頭上にあの光がはじけていた。
六人の仲間がテーブルに集まり、各々が自分の昼食に手を付け始めた。
中村のトレイには生姜焼き定食とラーメン、カツサンドがひしめき合っている。朝野をはじめとする五人の仲間たちは、毎度のごとく食事量の多さに圧倒された。中村はとにかく食べるのが好きで、組み合わせはいつもヘビー級だ。今朝食べたピコズベーカリーの大量のパンもとっくに消化されてしまったことだろう。
しかし彼の大食について、とやかく言う者は仲間内に一人もいなかった。むしろ彼らには中村の気持ちがよく理解できたので、彼がなんとも嬉しそうな顔で食べ物を頬張り、時に頭上で星がはじける様を和やかな気持ちで見ていた。優れた味覚を持つ中村にとって、食とは探求であり、感動を味わう手段だった。
―星がはじけた。
最初にこの言葉を使ったのは山本だった。朝野をはじめとする六人の仲間たちは、それぞれ別の過敏な感覚器官を持っており、それらが刺激を受けることによってもたらされる感動は恍惚を招く。この恍惚がやってくる時、頭からきらきらとした無数の光が、まるで打ち上げ花火のように噴出してはじける。不思議なことに、星がはじけるというこの現象は、彼ら以外には見えていないようだった。六人はこの光をきっかけに友人になった。
スープに浸したチャーシューを堪能し、中村はにんまりとした。
五つの声が重なる。
「星がはじけた」
しばらくして中村が現実に戻ってきた。彼はゆっくり目を開け、しみじみと言った。
「今日はいい日だな。新しいパン屋も見つけられたし」
「そうだな」と朝野。
未だイヤホンをつけたままの綾小路が箸を止める。
「パン屋って?」
「駅の近くに新しくできたんだよ。試しに行ってみたらめちゃくちゃいい香りで」言いながら香りを思い出した朝野は、頬の緩みを抑えられなかった。
「ふうん。中村も行ったの?」
「うん。あれはうまかったなあ」両手にカツサンドを持つ中村がほくほく顔になる。
佐々木が不思議そうに言った。「考えてみると二人同時にはまるって初めてだよな。充分あり得ることなのに」
すると紙パックジュースのストローをくわえたまま葵が手を挙げた。
「いや、お前は違うじゃん」
「そんなあ!」
葵はわざとらしく眉尻を下げた。
皆が笑い、佐々木が葵を肘で小突いた。
葵の恍惚体験のトリガーは少々特殊である。他五名のそれが身体に備わった、他者に比べて過敏な感覚器官なのに対し、葵は共感覚によって恍惚感のみを得ている。例えば先ほど席で朝野たちを待つ間、葵は曲を聴く綾小路の隣で恍惚感を味わっていたが、あの時葵は、過敏な聴覚によって自分の世界に入った綾小路の恍惚感を、実際に自分自身の身に起きていることとして体験していた。そして綾小路が、曲、あるいは曲中の特に印象的な一音、はたまたボーカルの発する子音や吐息について、どこに感動し、心を震わせているかはわからないでいる。
感覚器官への刺激から恍惚を得る朝野たちにとって、刺激というきっかけなくして恍惚を得るという葵の話は咀嚼しきれない部分が多かった。それでも五人の中に彼の話を疑う者は一人もいない。恍惚となった葵の頭上では確かに星がはじけている。
そもそもこの星がはじける現象が起こることに、過敏な感覚器官や共感覚が必要なのか。朝野たちも明確な答えを持っているわけではない。現在の認識はみなで意見を述べ合い、おそらくこうであろうと導き出した結論に過ぎない。はっきりしていることといえば、恍惚は感動とともにやってきて、はじける星を見たり噴出したりするのは、これまでの人生の中で、自分自身と大学で出会った五人の友人だけということだった。
「タイミングが被らないのは好みの問題だろう。物を味わう時には味覚も嗅覚も必要だし、それで言えば綾小路や佐々木も相性がいいんだろうけど、そもそも食べることにどれだけ関心があるかって問題があるわけで」オムライスを平らげた山本が自論を展開した。
ほぼ全員が納得したが、名前の挙がった佐々木だけはいまいちピンとこない様子だ。
「綾小路はわかるけど、なんで俺?」「だって、芸能リポーターが言ってる舌触りとか、あれだって触覚じゃない」中村が例のオウムのような動きで佐々木に顔を向けた。天晴れ、あれだけあった料理は米粒一つ残っていない。
「ああ、なるほど」
綾小路が加わる。「確かに、中村ほど食べることが好きってわけじゃないからな。もちろん好物はあるけど、それを食べたからって星がはじけたことはないし」
「そうだな。お前は専ら音楽で、俺は肌触りだから、食で得られる感覚とは別物だよ」
全員がもっともだと納得した。
大学への道中のあの時間を思い返しながら朝野がしみじみと言った。
「じゃあ今朝のあれはレアケースだったんだな」
「みたいだね」と中村。「もし全員の星がはじける場所があったら面白いんだけどな」
この日は珍しく六人が帰路につく時間が重なった。学科が同じ朝野、中村、山本、佐々木は三限目の必修科目が最後の講義で、綾小路と葵は四限目もとっていたが、担当する教授の都合で休講になった。
正門のあたりで出くわした六人は、一緒に駅へと向かった。
やがてあのポストが見えてくると、朝野は胸が高鳴るのを感じた。恍惚への誘惑におかされながら仲間を振り向く。「じゃあ、俺こっちだから」
「もしかしてピコズベーカリー?」中村が大好きなお菓子を前にした子供のような顔で尋ねた。目印を見てすぐに察したらしい。「俺も行こうかな。お腹ぺこぺこ」
佐々木が目を丸くした。「よっぽど気に入ったんだな。朝も食ったんだろう?」
「そうなんだけど」朝野は恥ずかしくなって頬を掻いた。「カフェスペースがあるから、のんびりしていこうと思って」
朝野、中村以外の四人が、合点がいったとばかり相槌を打った。店内で香りを堪能する時間が朝野にとっていかに至福か、彼らにはわかっているのだ。
「俺も行っていい?」ふいに葵が尋ねた。
するとそれにつられるように残りの三人が口々に言った。
「じゃあ、俺も」
「俺も」
「このあと暇だし」
かくして六人はピコズベーカリーに赴いた。
入り組んだ道を進んでいくと、それは見えてきた。古い造りの民家が立ち並ぶ中に、ぽつんと建った一軒の店。外装は決して派手ではなく、むしろ景観に馴染んでいるのに、なぜか目を引く店構え。
みなが店先に置かれたチョークボードの看板やフライヤーをしげしげと見る中、山本は輪を外れて店の正面に立った。そしてなんとも魅力的な、こじんまりとした建物を見上げて茫然とした。
五人は友人の異変に気付いて様子を眺めた。ほどなく山本の頭上にあの光が噴出して口を揃えた。
「星がはじけた」
視覚情報から恍惚を得る山本は、とりわけ建造物や建築物の造形に深い関心があった。幼いころには職人を夢見たこともあったが、有名な進学校で自由に進路を選べるだけの優秀な成績を収めながらあえてその道に進まなかったのは、恍惚のせいで仕事にならなくなることを懸念した結果らしい。
恍惚を共有する葵もまた、佐々木と中村の間で光を噴出していたが、持続時間は山本ほど長くはなかった。一足先に現実に戻り、友人の楽しみを邪魔しないよう他の四人に続いて店に入った。
今朝、朝野と中村がきた時はあれだけごった返していた店内には、今は二人の客がいるのみだった。どちらもすでに商品を選び終えていて、一人は会計中、もう一人はその後ろに並んで順番待ちをしている。品揃えもずいぶん寂しくなっていて、売れ行きのよさが窺えた。朝野はちょうどすいたタイミングで来店できたのだろうと思った。
敷居を跨ぐや、朝野は待ちに待ったあの恍惚を全身全霊で受け止めた。鼻腔を抜ける香りと、脳細胞が溶けるようなじんわりとした心地よさ。友人が一緒なこともあり、気が大きくなった朝野は遠慮なく感動体験に没頭した。
友人たちは朝野がこのために店を訪れたことを知っていたし、葵がその恍惚を共有することも承知していた。だがよほどのことがない限りイヤホンを外さない綾小路が、店内に流れるBGMに一心に耳を傾け、恍惚に陥る状況は予期していなかった。中村と佐々木は面食らって、天国を見つけたような顔で佇む綾小路を凝視した。
突然、葵の体がふらりと傾き、佐々木が慌てて支えにいった。
「大丈夫?」
中村が尋ねると、葵は両手で顔を覆った。
「いつもより強烈だ。二人同時だからかな」
佐々木と中村は顔を見合わせた。
「それってつまり、普段俺たちが体験してる倍の恍惚ってこと?」
「やばいな」
楽しみは人それぞれだが、いつまでも入口に突っ立っているわけにはいかない。会計を終えた客が帰るタイミングで、朝野と綾小路は自分の世界を脱し、五人は一人一つずつトレーとトングをとって商品の陳列スペースへ移動した。
狙っていた商品が品切れになっていたのか、中村はパンを選びながら時々残念そうな顔をした。
最初にレジに向かったのは朝野だった。
カウンターに立つ店主と思しき女性は、本日二度目の来店となる朝野の顔を覚えていた。
「今朝もお友達といらっしゃってくれましたよね」
そう言って彼女は、朝野の後ろに並ぶ中村に視線を流した。
あまり社交的でない朝野はぎこちなく答えた。
「香りがよくて」
言ってすぐ、味を褒めるべきだったと後悔したが、店主が嬉しそうに笑ってくれたので、商品を気に入ったことは伝わったと思うことにした。
レジの入力が終わるころ、外にいた山本がようやく店に入ってきた。
朝野は六人でカフェスペースを使いたい旨を伝え、ホットコーヒーを注文した。
席は二種類、脚の長い二脚の椅子が向かい合わせになったタイプと、三人でも充分座れる大きさのソファが向かい合ったタイプがあった。椅子もテーブルもアンティーク調に統一されていて、革張りのソファにはそれぞれ一つずつシックな色合いのクッションが置かれている。
朝野は手前側のソファの端に腰を落ち着けた。固すぎず、柔らかすぎない、絶妙な座り心地だった。
五分もたつころには全員が席に揃っていた。
綾小路は再びBGMに耳を傾け、恍惚となった。彼が会計をするタイミングで、入店した時の曲から次の曲へと変わったのだが、綾小路はこちらも気に入ったらしく、店主にアーティストの名前を尋ねていた。仲間たちは、選曲が店主の好みだとしたら、二人は相当話が合うのではないかと思った。
いざパンを食べ始める。朝野、中村、葵の頭上で星がはじけた。残りの三人も、恍惚に陥りこそしなかったが、美味しいパンであることに変わりはなく、会話もそこそこに一口食べては顔をほころばせた。
店を出た時、各々が満足していた。六人は駅に向かって始める。幸せそうな顔で息をつき、中村が言った。
「あったね。全員の星がはじける場所」
以来、六人はピコズベーカリーの常連となった。
全員の星がはじける場所を見つけられたことは、六人の関係性によい変化をもたらした。トリガーとなる感覚は違うものの、各々が同時に恍惚感を得ることで、まるで一つの感動を共有しているような一体感を味わうことができた。それにより、この不思議な現象を分かち合ってきた六人の絆は一層深くなったように思えた。彼らはピコズベーカリーとの出会いに感謝した。
ある日の夕方、六人は例によってピコズベーカリーを訪ねた。店の前に着くと、朝野たちと同い年くらいの女の子が店に入っていくところだった。彼女はドアを開けたところで、店を出ようとしたOL風の女性客と鉢合わせた。
「あ、すみません」
店に一歩入った女の子が後退して道を譲った。
六人は二人の様子をなんの気なしに見ていた。
OL風の女性が会釈をして店を出ていく。春風に乗って、おそらくその女性のものであろう、花のような香水のかおりがかすかに漂った。
女の子はその場に突っ立ったまま去っていく女性の背を見つめ、なにかを呟いた。朝野には「花吹雪」と聞こえた。
次の瞬間、朝野たちは女の子の頭上に釘付けになった。ポンッという音とともに噴出する光を、ある者は呆然と見つめ、ある者は指をさして口々に言った。「星がはじけた」
え、と声をもらして、女の子の顔が朝野たちの方を向いた。彼女は呆気にとられたあと、自分の頭の上に手を置いて驚きと感激が入り混じったような顔で言った。
「もしかして見えるの?」
六人は驚愕しつつ、こくりと頷いた。「うそ……」
七人はしばらく見つめ合った。
ふと我に返った浅野が躊躇いがちに口を開いた。
「とりあえず入らない?」
「ええ」女の子が頷いた。
七人はぎこちない足取りで順番に店に入っていった。
この新たな友人の話はまた別の機会に。
いいなと思ったら応援しよう!
いただきましたサポートは創作活動のため活用させていただきます。