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いつも相手の口から出る「新しいデザインをお願いします」で始まる。

[依頼先から必ず言われるのは]
企業の担当者からデザインの依頼がある場合、相手がどんな業種であれ、どんな肩書であれ挨拶がすんだ後、相手から必ず言われる言葉があります。
それは「新しいデザインをお願いします」。時には「新しくて売れるデザインをお願いします」というのも、たまにありますが。
そんな時に相手の方に、「新しいとは、どの様なものをイメージされますか?」と尋ねると、「それはデザイナーさんに任せます」、あるいは「それをやるのがデザイナーさんの仕事でしょ」と、キッパリ返ってきます。こういうケースがやりにくいですね。
「一緒に新しいのを考えましょう」と返ってくると、俄然やる気が湧いてきます。会社の売上を確保する大事な商品の新しいタイプを開発するのですから、担当者の熱意があってしかるべきです。

それから、新しい商品のターゲット設定や市場性、販売価格、流通状況、広報計画、年間の売上予測、競合他社の状況など、これから始まる新しいプロジェクトについて打ち合わせるのですが、その時に一番肝心な事があります。

[現状把握が新しいを見つける]
それは現在、扱っている今の商品の状況が、どうなってるのか、私たちは知りませんから、相手の企業から今の商品の現状について、色んな質問をします。
この現状やこれからの作業内容など、いろいろな話をしながら打合せをしている時に、キーワードが見つかったり、あるいはコンセプトに気づいたりと、クリエイティブに繋がり、「現状把握」が、新しさの元というか、スタートになります。
以前に目白のデザイン研究所に勤めて、デザイナーに成り立ての頃、大手の事務機企業から、新しいテープカッターのデザイン依頼がありました。

[新しいテープカッターのデザイン]
チーフデザイナーとチームを組んで、「テープカッターの新しさとは何か」を探るため、既存の商品や他社のを数点、目の前に置いて、それらのテープカッターを「自分の手に持ってテープを切る」、そして「切ったテープを貼る」という行為を、毎日のように繰り返したのです。
コーヒータイムの時もコーヒーカップを置いてテープを切ったり貼り付けたり、
何かを感じる迄、繰り返しの連続。こんな事をひと月ほど繰り返しました。
そうしていると、既存のテープカッターの、テープを切る行為はそれが当たり前過ぎてるので、欠点とは言い難いけど、これはひょっとして、新しさにつながる事柄が頭に浮かんで、次にその欠点を解決するためのアイデアが生まれ、そして新しいテープカッターのデザインへとプロセスが進みました。

新しい商品をデザインするのは、今あるモノやコトの現状を把握する行為が、デザインの始めの一歩になります。
企業から知りえる現状把握だけでなく、デザイナー自身が今の商品の現状把握をすることが大事です。その商品が売られている店舗の棚を見たり、類似する他社の商品を手にするなど、自分の眼で見て、手に持って、重さや手触りを確かめながら。
新しいアイデアが生まれないのは、現状把握がまだ未熟な段階と思い、さらに追求してこそ、新しいアイデア、デザインに出会えると思います。
新しいテープカッターは、テープを切った後に端からつかめるよう、テープを切ったら、その端が少し上がる機能を付けたのです。
そして企業の担当者から、この機能で特許が取れました、と大変喜んでくれ、その笑顔を今もよく覚えてます。
テープカッターの形状が数字の5に何だか似ているから「ファミリーファイブ」というネーミングになり、商品のデザインだけでなく、ネーミングやロゴ、パッケージなど、プロジェクトが始まる頃には予定していなかった範囲までデザインワークが広がり、デザインが新しくなると、環境も変わるのを実感した。
現状を把握する、それも自分で体験する事は、新しいデザインを考えて、生み出す為には、とても重要な仕事だと気づきました。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。その時の担当者は係長でしたが、翌年には課長に昇進したようです。

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