「ごめんなさい」の後の「ありがとう」
ごめんなさい、の後に
「ごめんなさい」
ぼくは、やっとその言葉を口にした
職場の先輩(パイセン)・・
一度だけ、誘われて飲みに行った人。
その後、とても仲良くなって、優しくて、
話しやすくて、がっしりしてて、
頼りになって・・
・・でも、
今のぼくには、何も返せるものがない。
3日前、告白されたのは、仕事終わり。
駐輪場で、自転車の鍵をあけようとしてた
時だった。
「好きなんやけど・・付き合おうてくれへん?」
隣りで、自分のバイク越しに、いつも
「お疲れ!また明日な。」って言うパイセンが、
今日は急に、真っ直ぐな目をして、そう
言ってきた。
ぼくは、「少し考えてええかな。」って
答えた。
・・
そして、昨日。
「ごめんなさい。今は、無理やねん。」
ぼくは、そう返事をした。
理由なんて、言えなかった。
家賃の支払い。明日の食費。週末の別の仕事の
シフト。深夜の仕事。
頭の中は、いつもそれでいっぱいだ。
誰かを好きになる余裕も、誰かに好きに
なってもらう自信も、今のぼくにはなかった。
去年の暮れ、数年ぶりに連絡があった
元彼と、今年「友達」として会う約束も、
結局は、多忙のため先延ばしした。
「・・そうか。」
パイセンは少しだけ俯いて、それから顔を
上げた。
「でも、断られて、良かったわ。ありがとう。」
「・・え?」
予想外の言葉に、ぼくは思わず聞き返した。
「お前が無理してOKしなくて、良かった」
パイセンは、少し笑って続けた。
「ちゃんと、自分のこと大事にしてるんだ
なって。だから、安心した。」
ぼくは、何も言えなくなった・・
「お疲れ。また明日な。気をつけて帰りや。」
そう言って、パイセンは手を振って去って
いった。
自転車に跨って、ペダルを漕いだ。
いつもの帰り道。
歩道橋の下を通り過ぎる。
風が一瞬だけ強く、冷たく吹く。
気づいたら、涙が溢れていた。
「自分のこと、大事にしてる」
そんな風に考えたこと、最近なかった。
ただ、生きるので精一杯で。
毎日、何かに追われていて。
でも、先輩には、それが「自分を大事にして
いる」ように見えたんだ。
スーパーの駐輪場で、自転車を止めた。
涙を拭いて、いつものように店内へ入る。
見切り品のコーナーで、半額のお惣菜を手に
取る。
レジで小銭を数える。
帰り道、夜風がまた頬に当たる。
少しだけ、軽くなった気がした。

「ごめんなさい」の後に、
「ありがとう」が続くなんて思わなかった。
断ることも、一人でいることも、苦しい中で
踏ん張ることも、ちょっと寂しいことも、
全部、ぼくが選んだことだ。
そして、それを優しいパイセンは認めてくれた。
明日も、また同じ毎日が続く。
でも今は、少しだけ、自分を褒めても
いい時間のような気がした。
こんなぼくにも、まだ夢はある。
ー
初出版作品です。
2冊目、出版しました。
それでも、やっぱり1人は寂しい。
ここ数日、気持ちがゆらゆらして、
あまり記事も書けませんでした。
でも、こうして、なんでも書ける
noteが、やっぱり好きてす。
おわり。

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