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年齢を聞いた、そのあとで

「何歳なんですか?」

たしか、そんな話になった。

仕事帰りに何人かで飲んでいて、料理もだいたい食べ終わった頃だった。

誰かが年齢を言うと、

「え、意外ですね」

という声が出た。

「じゃあ先輩じゃないですか」

さっきまで普通に話していた人が、急に少しだけ姿勢を正した。

なんだかおかしかった。

数字をひとつ聞いただけなのに。

そのあと、みんなで二軒目に行った。

年上の人が道を間違えた。

「こっちじゃないですか?」

と年下の人が言った。

「あれ、そうだっけ」

二人で笑った。

店に着くと、今度は年上の人がメニューを見ながら、

「これ何?」

と聞いていた。

年下の人が説明した。

「へえ。知らなかった」

「僕も最近知ったんですよ」

そんなやりとりをしているうちに、さっきまであった「先輩」という言葉は、いつの間にか消えていた。

帰り際、その人がスマートフォンを見ながら、

「終電、まだありますよね?」

と聞いた。

「ありますよ」

「よかった」

駅まで一緒に歩いた。

途中でコンビニに寄った。

その人はアイスを買った。

僕も買った。

駅で別れた。

「また今度」

「はい。また」

それから何度か会った。

仕事の話をしたり、

どうでもいい話をしたり、

たまに飲みに行ったりした。

ある日、

「そういえば、何歳でしたっけ?」

と聞いた。

「何歳に見えます?」

「いや、もう分からないです」

「じゃあ、いいじゃないですか」

そう言って笑った。

そのとき、最初の日のことを思い出した。

あの日は、年齢を聞いた途端に、

「先輩」

という言葉が出てきた。

今は、そんなことを考えもしない。

その人が何歳なのかも、正確には覚えていない。

ただ、道を間違えたことと、

アイスを食べながら歩いていたことと、

「じゃあ、いいじゃないですか」

と言って笑った顔は覚えている。

帰りの電車で、ふと思った。

そういえば、

あの人の年齢、

結局いくつだったんだっけ。

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