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色んな話 第9話 ガマット(ACEScg)

ACEのxy色度図

 ACESのxy色度図を見た方は、既に気づいている筈です。ACESのガマットには、2種類の定義があります。
ACES2065-1 (AP0)とACEScg (AP1)です。

ACES2065-1 (AP0) の正式名称に年号が付いている通り、これがACES規格の「本丸」です。
 人が見ることができるすべての色(可視域)を包含する「天下人」の色域は、データの長期保存スタジオ間での受け渡しに利用され、あまりに巨大すぎる色域故に、編集作業で直接扱うには、計算エラーやアーティファクトを招くリスクが伴います。

 そこで、VFXやCG制作のために、色域を狭めたACEScgという規格が策定されます。ACEScgは、映像編集アプリのNUKEでの合成、CGレンダリング専用の色域を持つワークスペースです。

 しかしACEScgをそのまま映像編集のワークスペースに利用するには、不都合な真実があります。
 ACEScgは、ACES2065-1 と同様に、線形(リニア)空間で定義され、光の四則演算が可能なため、VFX合成やブラーなどのエフェクト処理に向いている一方、人が直観的に映像編集を行うには、不向きな規格です。

 人は、目も耳も、自然を対数として捉え、暗がりの中の僅かな輝度の違いは認識できても、白トビするような環境では、明度の違いを認識できないという特徴があります。

ACEScct、光の強さ(エネルギー)である輝度情報それぞれが、人間の目の特性に合わせ、対数(Log)変換され、DaVinci Resolveなどの映像編集アプリのワークスペースとして、直観的なグレーディングなどの編集作業を行うことができます。

 ここで、具体例として、DaVinci Resolveの編集環境について深入りしておきます。
 アプリ固有の説明に踏み込むのは、内容の薄い長いだけのテキストを生みかねない危惧がありますが、例外的に、踏み込むことで、ACEScctとACEScgの関係を明確化できるとを期待しています。

 ほとんどのユーザは、映像編集のツールとして、DaVinci Resolveを使い実写とCGの合成に、「DaVinci Resolve使ってま~す」というユーザは、かなりの危惧種です。私の周辺には、そのような危惧種は、見あたりません。

 DaVinci Resolveでのグレーディング作業は、カラーページを選択することで行われます。ACES AP1色域が、Log変換されたACEScctのデータが編集対象です。
 それでも危惧種が、VFX,CG作業に足を踏み入った時、DaVinci ResolveのFusionページを開かなければなりません。
 何故なら、Fusionページで扱われるデータは、ACES AP1色域が、リニア変換されたACEScgに他ならないからです。
 困ったことに、DaVinci Resolveは、Log⇔リニア変換をユーザへの断りなく、裏でこっそり実行するため、ユーザーは、カラーページとfusionページの本質的違いを知ることなく、作業に従事する可能性が高いです。

 一方、NUKEでは、作業の全てが、ACEScgに統合され、ACEScctの出番はありません。
 この違いは、最終アウトプットにクオリティとして如実に現れ、Log操作を許すDaVinci Resolveのような、編集操作による映像の破綻が起こらない設計になっています。
 故に、ハリウッドの映像制作現場では、DaVinci Resolveではなく、NUKEが選択されています。

 今回の話は、ここまでです。