【ヘタリア同人小説】夫婦喧嘩は花たまごも食わぬ(スーフィン)
■ 全年齢スーフィン小説ですが、キスシーン有り〼
■ ストーリー:ある日、ドライブを巡ってスーフィン・バカップルがプチ喧嘩をし、ケンカップルになってしまいます。ですがその後、車の中で仲直りします。フィンがちょっと我が儘なキャラになっちゃってます💦
フィン目線のお話です。お楽しみいただければ幸いです。
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僕は今、一人で車を運転中。そして少し、ご機嫌斜め。僕は運転中は大抵は機嫌がいいと思う。スーさんちの、ちょっと懐かしいABBAの音楽なんかを聞きながら運転するのも楽しい。そう、いつもならね……。でも今はそのBGMも耳に障るからボリュームをゼロにしてる。無音、無言の中、ひたすら僕は森の一本道を運転中なのだ。
「ヘルヴェッティ!!」
おっと! 突然の激しい上下の揺れに、うっかりスラングが口をついて出てしまった! どうやら、道に倒れていた木の上を知らずに通過してしまったみたい。僕、滅多に悪い言葉は使わないんだけど、一人で運転してると、たま~に出ちゃうときがある。そう、今みたくちょっとムシャクシャしていると。
* * * * *
「出かけるベ」
そう言って運転席に座ったのはスーさん。そう、今日は久々にスーさんとドライブ。いつもは僕が運転をするんだ。だって僕は車の運転が好きだから。昨晩だって、森の中をスーさんを連れて湖畔まで行くのを想像したら、ワクワクしてなかなか寝付けなかった。助手席のスーさんに、時々僕の口の中にお菓子を入れてもらったり、口の周りを拭いてもらったりしながらドライブするんだ。あ~楽しみ! 花たまごも連れてさ、ちょっと遠いところまでドライブするんだ。ドライブルートだって頭の中にちゃんともう入ってる。あとはスーさんに助手席に座ってもらうだけ! 何週間も前からそう意気込んで楽しみにしていたのに。
「乗らねぇのが? 花たまごもちゃんと座って待ってるぞ」
後部座席にちょこんと座る花たまごをちらりと見てから、スーさんが僕に目を移した。
「あれ? 僕が助手席なんですか?」
「ん。たまには」
「僕が運転するつもりだったんですけど……」
「今日はダメだ」
「えー! 楽しみにしてたんですけど。最初は僕ってことじゃダメですか?」
「ん……助手席に座ってくんちぇ」
スーさんがここまで意地を張るのは珍しい。いや、最近は、の話だけど。昔、スーさんと家出した頃なんかは、僕はスーさんに振り回されてばかりだった。でも、ここ最近はスーさんは僕に甘くて、僕の願いは大体聞いてくれていた。だから、今日も僕が運転したいと言えば、すぐに運転席を譲ってくれると何故か勝手に思い込んでいた。状況が変わらなさそうなので、仕方なく僕は助手席に腰を下ろした。しばらく僕は、スーさんの隣で大人しく揺られることにした。
車を小一時間走らせたところに湖がある。そこでスーさんは車を停め、ドアを開けた。
「ここらで、ちっと休憩するべ。……なした? フィン」
「運転お疲れ様です。でもこの間から僕、運転が楽しみって言ってましたよね。今日はどうして僕のお願いを聞いてくれないんですか」
「あ?」
開いたドアから花たまごが勢いよく飛び出し、嬉しそうに湖畔を駆けだした。僕はスーさんが車から降りるのを確認すると同時に、運転席にさっと移った。
「ちょっとそこまで走ってきます。ではまた!」
「?!?!」
呆気に取られるスーさんを後にして、僕はすごい勢いで運転してその場を走り去った。ちょっと頭を冷やしたかったんだ。
* * * * *
――それで今、森の中を一人で運転中、というわけ。うん、分かってる。これは僕の我が儘だよね。スーさんだって、びっくりしてたじゃないか。スーさんの押しの強さなんて、よく考えれば、昔から、あの人はそうだったじゃないか。何で今更、僕は腹を立てているんだろう。僕って、こんなに堪え性が無かったっけ……?
僕は一旦、車を道の脇に停めると、運転席のドリンクホルダーに用意した、ボトルコーヒーを一口飲んだ。あれ? お気に入りのコーヒーをボトルに詰めたはずなのに、何故か全然美味しくない。口の中に苦さが広がるのと同時に、胸がチクチクとしてきた。
「おめぇがそうしてぇんなら」
スーさんの口癖。今日もそう言ってくれるかと、どこかで期待してしまっていた僕。……やっぱり、スーさんに謝ろう。悪いのは僕だ。僕はボトルを助手席のホルダーに置き直すと、来た道を引き返すことにした。
湖畔に戻ってくると、ぽつんと立っているスーさんの背中が見えた。さらに向こうには元気な花たまごの姿。花たまごを見ているスーさんに、僕は車をゆっくり走らせて近づき、声をかけた。
「スーさん。あの、急に居なくなったりして、ごめんなさい! びっくりしましたよね」
「ん。」
ばつが悪そうに話す僕を責めるでもなく、スーさんは穏やかに僕を見つめて頷いた。僕はすぐに助手席に移動した。
「どうぞ」
「ん?」
「運転席、座っていいですよ。どうぞ」
スーさんは「ん。」と言うと、無言で運転席に座った。僕たちは、しばらく座ったまま、無言で過ごした。
「あの。何であんなことしたのか、聞かないんですか」
「俺は、おめが戻ってきてぐれただけで、嬉しい」
スーさん! そうやって、また僕を甘やかそうとする!!
「あ、ありがとうございます。じゃあ、僕から聞きますね。どうして今日スーさんは、運転したい側なんですか? いつもだったら、僕が運転していいって言ってくれるじゃないですか」
「……あぁ。俺は、フィンが運転するの、見るのが好ぎなんだ。それで、フィンを見てっど、幸せな気分になる。だから、その……俺が運転するのをフィンが見て、フィンにも幸せな気分になって欲しかったんだけっぢょも。大失敗だなぃ。みったぐねぇ」
えっ!! そんなこと、考えてたの? スーさん。僕に、幸せを感じて欲しいから? 全然違う理由が来ることを考えて構えていた僕は、穴があったら入りたくなった。何という、スーさんの愛。でもそれが僕に伝わらなかった。僕が、スーさんを理解しようとしていなかったからだ。
「もう! そうだったんですか? 全然、みったぐなくないですって! 口数が少ないスーさんには慣れてますけど、今日は分からなかったです!」
「すまね」
「いえ! 僕こそ、ごめんなさい。子供っぽいこと、しちゃいました。せっかくのドライブなのに」
「ん。」
今朝のスーさんの行動が全て自分のためだと知った瞬間から、僕の胸は痛いほどに締め付けられ、そして思わずスーさんの腕に抱きついてしまった。どうして僕、最初から、スーさんに運転席を譲らなかったんだろう。
「スーさん、僕のこと、嫌になりました? こんな我が儘なことしちゃって」
僕は恐る恐る、上目遣いでスーさんを見上げた。あれ? スーさんてば、僕のことを全然見つめ返してくれない。それどころか、元気に走り回る花たまごの事ばかり、フロントガラス越しに見ている。僕は少し悲しくなって、スーさんの横顔をじっと見つめた。
端正な横顔。ブロンド色の長い睫毛。そういえば、スーさんの顔を正面から見ることの方が多いから、横顔をこんなにまじまじと見ることって、あまり無いかも。よく見ると、ほっぺたの産毛までブロンド色で柔らかそうでとっても綺麗で……こんなにかっこよかったんだ……。 分かっていたことでも改めて考えると、つい、じっと見てしまう。僕がスーさんの横顔に見入っていると、スーさんがぽつりと呟いた。
「そんな見つめねぇで。照れちまうがら」
え? 何で僕がスーさんに見とれていることが分かるの? そう思って、前を見ているスーさんの視線の先を追って、僕は心臓が止まりそうになった。
「おっひゃあああ!!!」
バックミラー越しに、スーさんと目がバッチリ合ったのだ。スーさんの、碧くて力強い瞳がしっかりと僕を捉えていた。えっ?! もしかして、スーさんの横顔に見とれてデレッとなっちゃった僕のしまりのない横顔を、スーさんてばミラー越しにずっと見ていたの??? 外で遊んでいる花たまごを見ていたんじゃないのぉ~~?! その事実に気付いた瞬間、僕は顔から火が出た。
「フィンの横顔も、めんげぇな」
スーさんは、いたずらっぽい顔で僅かに口角を上げた。
「もうっ! スーさ、んっ……!」
次の瞬間、僕はスーさんの長い指に素早く顎をつかまれ、瞬く間に唇を塞がれた。驚いて目を見開く僕。逃すまいとグッと力を入れて僕の肩を引き寄せるスーさん。頭がふわふわしてきた。心が一気に温かいもので満たされ、みるみるうちに僕は蕩けていく。
この人はずっと昔から、ずっと変わらず、僕だけを愛してくれている。こんな僕を、どんな時でも、ずっと。その事実を突きつけられて、僕の心は痛いほど揺さぶられた。涙が急に溢れ出る。僕が突然涙をこぼしたからか、スーさんの唇がそっと僕から離れた。僕はたまらず、必死になって気持ちを伝える。
「スーさん、ごめんなさい。スーさん、大好き!」
「ん。」
スーさんは、(全部分かってるよ)と伝えるかのように僕の頭を優しく撫でながら、頬に、首筋に、繰り返しキスをしてくれた。僕もスーさんの肩に腕を回す。だんだんとお互いの呼吸が荒くなる。体が熱い。スーさんにもっと触ってほしい……! でも、ここ、車の中だけど、外だし。ちょっと恥ずかしい……。
ワンッ!
耳元で突然、花たまごの声。キスに夢中になっていた僕たちは、驚いて花たまごを見た。
「あっ……花たまご! ごめんね、お腹すいたよね」
「さっきまで、俺らのことなんが構わず、遊んでたけっぢょも……」
「あー、きっと、僕たちが喧嘩して仲直りするまで、待っててくれてたりしたのかな?」
ワン、ワンッ!
楽しそうに尻尾を振りながら、花たまごが僕たちをじっと見ている。僕たちは何だか可笑しくなってきて、お互い顔を見合わせ、くすっと笑ってしまった。
北欧の夏は、日が長い。ドライブを楽しむ時間はまだまだ、たっぷりありそうだ。僕たちは車の外に出て、持ってきたランチを広げた。
「花たまご、おまたせ」
「待たせて悪がったなぃ」
気にしないで、とでも言うかのように花たまごは、大好きなビスケットに勢いよくかじりついた。
「花たまごは俺らにとって最初の家族だなぃ」
そう言うと、スーさんは僕の口にも美味しいお菓子を運んでくれた。
「スーさん。僕、とっても幸せですよ!!」
「お、おぅ」
夏の暖かい日差しが、僕たちを優しく包んでくれていた。
おしまい
