梨が市場に並び始めると、夏が少しだけ涼しくなる
最近、スーパーの果物売り場に梨が並び始めました。
メロンもおいしいのですが、甘さと香りが濃いため、毎日食べていると少し飽きてしまいます。
その点、梨は水分が多く、甘さも比較的さっぱりしています。冷蔵庫で冷やした梨を切ると、シャリッとした食感とともに果汁が広がり、暑い時期でも重さを感じません。
特別な日に食べたい果物というより、毎日食べても飽きにくい果物。
私にとって梨は、そんな存在です。
梨なら何でも好きというわけではない
ただし、梨ならどの品種でも好きというわけではありません。
まだ熟し方が足りないのか、品種の特徴なのか、時々かなり硬く、ゴリゴリした食感の梨があります。
梨に求めているのは、硬いものを噛み砕く感覚ではなく、ほどよい歯応えと、口の中に広がる果汁です。
「シャリッ」ならうれしいのですが、「ゴリッ」になると少し違います。
同じ理由で、洋梨もあまり得意ではありません。
洋梨は完熟すると柔らかく、ねっとりとした食感になります。香りも和梨とはかなり違います。
洋梨には洋梨の魅力があるのでしょうが、私が梨に求めている爽快感とは、かなり方向性が異なります。
和梨と洋梨は、同じ梨という名前でも、ほとんど別の果物として考えたほうがよいのかもしれません。
最近、二十世紀梨を見なくなった
昔は梨といえば、二十世紀梨を思い浮かべる人も多かったのではないでしょうか。
淡い黄緑色の果皮と、みずみずしく、少し酸味のある味わい。
ところが最近、近所のスーパーでは二十世紀梨をあまり見かけなくなりました。
代わりによく並んでいるのが、幸水や豊水です。
幸水や豊水は甘さが分かりやすく、酸味も比較的穏やかです。果物に強い甘さを求める人が増えたことで、二十世紀梨は売り場で押されているのかもしれません。
二十世紀梨の酸味は、暑い時期には爽やかでおいしいのですが、売り場で食べ比べずに一つだけ選ぶとなれば、甘さの強い梨のほうが手に取られやすいのでしょう。
果物売り場にも、時代ごとの人気があります。
以前は定番だった品種が少しずつ姿を消し、別の品種が主役になっていく。
二十世紀梨を見かけなくなったことからも、梨の世界の世代交代を感じます。
「にっこり」が並ぶと、梨の季節の終わりを感じる
梨の季節が進み、終盤になると「にっこり」が店頭に並び始めます。
にっこりは非常に大きな梨です。
一個あたりの値段だけを見ると高く感じますが、実際に切ってみると可食部も多く、何回かに分けて食べられるほどの大きさがあります。
小さな梨を何個か買うことを考えれば、量としては値段相応に感じます。
味も甘く、果汁も多く、梨の季節を締めくくるには申し分ありません。
ただ、にっこりを売り場で見かけると、少し寂しい気持ちにもなります。
「今年もにっこりが出てきたか」
そう思うと同時に、
「もうすぐ梨の季節が終わるのか」
という秋の終わりに近い感覚が漂ってきます。
名前はにっこりなのに、見かけると少ししんみりする。
食べている間はにっこり、売り場から消えるころにはしんみり。
何とも不思議な梨です。
果物売り場は、小さな季節暦でもある
今は多くの野菜や果物が一年中手に入る時代です。
それでも梨は、比較的季節を感じやすい果物です。
梨が並び始めると、夏の暑さの中に少しだけ秋の気配が混じり始めます。
幸水や豊水を食べながら季節が進み、やがて大玉のにっこりが並ぶ。
そして、にっこりが売り場から消えるころには、今年の梨も終わりです。
最近あまり見かけなくなった二十世紀梨には、昔の果物売り場の記憶があります。
にっこりには、梨の季節が終わる寂しさがあります。
梨を食べる楽しみは、味だけではありません。
どの品種が並んでいるかによって、今が季節のどのあたりなのかを感じられることも、梨の魅力なのでしょう。
今年も、梨が市場に出てきました。
まずは冷蔵庫でよく冷やして、暑い日にシャリッと食べたいと思います。
