公的補助金の選び方
公的補助金の選び方
副題:自治体を破綻させない「毒饅頭」の回避術
はじめに
国からの補助金や融資を活用して豪華な施設を建設したものの、それが仇となり、その後の返済や維持管理費の重荷に苦しむ市町村が後を絶ちません。結果として、見込んでいた成果を出せない事例が実に多いのが現実です。
地方財政法第1条には、その目的として「国の財政と地方財政との関係の基本原則を定め、もつて地方財政の健全性を確保し、地方自治の発達に資する」と定められています。
また同法第2条では、地方公共団体は健全な財政運営に努めるべきであり、国もまた「地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長しなければならず、地方の自律性を損なったり負担を転嫁したりする施策を行ってはならない」と規定されています。
しかし現実には、「減税補てん債」に代表されるような特例的な起債(借金)が認められるなど、制度の骨抜きや依存構造が常態化しています。
(参考note投稿:「市庁舎改築は毒饅頭」参照)
地方自治体が自前の財源で整備を行う際、申請して許可が得られれば国庫補助金などを活用できます(※ただし、独自の財源が豊富な地方交付税の「不交付団体」には適用されない場合もあります)。
しかし、これらの「手厚く見える支援策」には慎重な見極めが必要です。
1. 地方債(借金)の構造的リスク
・臨時財政対策債(臨財債)
国の財源不足を補うため、一時的に地方に借金をさせ、将来の返済分を国が地方交付税で全額補填するという変則的な制度です。実質的には「国の借金の地方へのツケ替え」に過ぎません。
2.地方債の発行と財政破綻
自治体は自らの判断で地方債を発行できますが、財政破綻(財政再生団体の指定)に至れば国の強い管理下に置かれます。形の上で自治体は存続しても、住民サービスの削減や増税など、市民生活には苛烈な制限が課されます(夕張市の例を参照)。
3.「補助率8割」のからくり
災害復旧や過疎対策などを除く一般的な事業で、国の負担が100%になることはありません。自治体は「起債充当率(事業費のうち借金で賄える割合)」と「交付税措置率(借金の返済分のうち国が後から補填してくれる割合)」を組み合わせ、実質的な自己負担を減らそうとします。
一般的な公共工事の場合、「起債充当率80〜90%」「交付税措置率30%程度」が標準的です。しかし、どれほど有利に見えても残りの自己負担分は発生します。目先の高い補助率に釣られ、苦し紛れに地方債を発行し続ければ、将来の財政破綻を引き起こしかねません。
4.複雑な審査とコンサル頼み
省庁ごとに審査基準や甘さが異なり複雑であることも問題です。自治体自身が消化しきれず、無責任な外部コンサルタントに申請書作成を丸投げしてしまう大きな要因となっています。
5. 主な各種補助金・起債制度
・公共施設等適正管理推進事業債(集約化・複合化事業)
老朽化した複数の施設(例:古い庁舎、公民館、図書館など)を1つに統合し、全体の面積を減らすことを推奨する制度です。事業費の最大90%までを起債でき、返済金の一部も地方交付税で補填されます。
・都市再生整備計画交付金(社会資本整備総合交付金)
庁舎を街の中心部に建て、そこに図書館や市民交流スペース、広場などを併設する場合、国が建設費の1/3〜1/2程度を直接補助(交付)します。
・スポーツ振興くじ(toto)助成金・国庫補助
庁舎の一部に本格的なアリーナやボルダリング施設などを組み込む場合に申請できる補助金です(上限は数千万円〜数億円程度)。
一見すると「国費で8割も補助されるなら得だ」と思いがちです。しかし、事業後の維持管理費や、将来的に配分される地方交付税の変動などを考慮しなければ、後になって「毒饅頭だった」と後悔することになります。
会計検査院も補助金の有効性について定期的に検査・公表を行っていますが、全体として見れば「地方創生」の目立った成果が表れているとは言い難いのが実情です。
おわりに
自治体は、国の支援策に飛びつく前に、確実に到来する人口減少や自治体職員の採用難を見据えるべきです。そして、その事業によって本当にどれだけの成果(税収増や地域活性化)が生まれるのか、監査役などの第三者の意見も交えつつ、少なくとも今後10年間の財政への影響を見通すことが不可欠です。
そのためには、行政に対する地方議員の監視能力・チェック機能が欠かせません。
近年はクラウドファンディングなどで資金を調達するケースも増えていますが、単に「スポーツ振興になる」「安心感が高まる」といった曖昧な成果で濁してはなりません。財政への具体的な貢献度を示し、その結果をいかに検証するのかについて、事前に丁寧な住民説明を行うことが強く求められています。
