母校でつないだ12年。最後の租税教室を終えて
母校である松山東高校で、今年も租税教室の講師を務めさせていただきました。
「初めて東高が租税教室受けてくれた。森先生やってくれない?」と税理士会からお話をいただいてから、今年で12年目になります。
そして今回が、私にとって最後の講師となりました。
来年からは、後輩の税理士にバトンを渡す予定です。
12年続けてきたものが一区切りになると思うと、少し寂しさもあります。
ただ、それ以上に、母校でこうした機会をいただけたことへの感謝の気持ちが大きいです。
まさか自分が母校で授業をするとは思っていなかった
正直に言うと、高校時代の私は、決して優秀な生徒ではありませんでした。
どちらかというと、学校には部活をしに行っていて、授業中は教室の後ろの方で寝ているようなタイプした。
先生方にも、きっといろいろと迷惑をかけたと思います。
そんな自分が、将来、税理士・公認会計士として母校の体育館に立ち、高校生に向けて税金の話をすることになるとは、高校時代にはまったく想像していませんでした。
だからこそ、この租税教室は、私にとって単なる仕事や会務ではありませんでした。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、母校への恩返しのつもりで続けてきました。
税金の話は、堅いだけでは伝わらない
租税教室というと、どうしても堅いイメージがあります。
所得税、消費税、法人税、住民税。
国の財政、社会保障、公平な税制。
もちろん、こうした基本的な内容は大切です。
ただ、高校生にいきなり制度の話ばかりをしても、なかなか自分ごとにはなりません。
そこで授業では、できるだけ身近な話題も入れるようにしてきました。
たとえば、脱税した芸能人やインフルエンサーがその後どうなったのか。
無申告や所得隠しが見つかると、税金だけでなく、加算税や延滞税、場合によっては刑事事件にもつながることがあります。
最近は、インフルエンサー、ライバー、アフィリエイター、暗号資産、副業収入など、若い世代にも関係しやすい収入が増えています。
授業資料でも、インフルエンサーの無申告事例や、ギャンブル・暗号資産・副業収入などの注意点を取り上げています。
また、高額年俸のプロ野球選手は、どれくらい税金を払うのかという話もしました。
高校生にとって、プロ野球選手や有名人の収入は関心を持ちやすいテーマです。
部活単位で当てていくと、空気が変わる
松山東高校は部活動もさかんなので、授業では、部活単位であてて質問に答えてもらうような形式をとっています。
また、生徒の皆さんに考えてもらうワークも入れています。
たとえば、架空の村を設定して、学校を造るために必要なお金を、村の住民からどのように集めるかを考えてもらいます。
全員の所得が同じなら、同じ金額を負担するのが公平に見えます。
でも、所得に差がある場合はどうでしょうか。
同じ金額を集めると、所得の少ない家は生活できなくなってしまう。
同じ税率で集めても、やはり生活に必要な金額が残らない人が出てくる。
では、所得の多い人に高い税率、所得の低い人に低い税率を適用する累進課税はどうなのか。
それは本当に公平なのか。
こうした問いを、部活単位で当てながら答えてもらっていました。
公平性は、時代や国によって変わる
私が租税教室で一番伝えたかったことは、
「公平な税制に、絶対的な一つの正解があるわけではない」
ということです。
もちろん、税金は法律に基づいて課されます。
納税は国民の義務です。
ただ、どのような税制を公平と考えるかは、時代によっても、国によっても、人々の価値観によっても変わります。
高い税負担でも、教育や医療、福祉が手厚い社会を選ぶ国もあります。
一方で、できるだけ税負担を抑え、個人の自由や自己責任を重視する考え方もあります。
授業では、フィンランドや台湾などの事例にも触れながら、税金や社会保障のあり方は国によって違うという話をしてきました。
高校生の皆さんは、これから選挙権を持ち、社会の意思決定に参加していきます。
だからこそ、税金を「取られるもの」としてだけではなく、社会をつくるための仕組みとして見てほしい。
主権者教育ホームルームの一環として毎年実施する授業なので、そのメッセージを、毎年伝えるようにしてきました。
「取られる」から「納める」へ
税金は、昔は権力者から一方的に「取られるもの」でした。
しかし、現在の日本では、国民が選挙で代表を選び、その代表者が国会で法律を作り、その法律に基づいて税金を納める仕組みになっています。
つまり、税金は単に取られるものではありません。
主権者である国民が、社会を維持するために納めるものです。
この違いは、とても大きいと思っています。
税金について考えることは、社会について考えることです。
社会について考えることは、自分たちの未来について考えることです。
高校生の皆さんには、難しい制度の名前を覚えることよりも、まずその感覚を持ってもらえたらと思ってきました。
12年間、母校で話せたことへの感謝
12年間、毎年のように母校の体育館に立ち、高校生の皆さんに税金の話をしてきました。
自分自身の高校時代を思うと、少し不思議な気持ちになります。
決して模範的な生徒ではなかった自分が、社会に出て、資格を取り、仕事をし、こうして母校に戻って話をする。
人生は、本当にどこでどうつながるか分かりません。
だからこそ、今の高校生にも伝えたいことがあります。
今の成績や、今の立ち位置だけで、将来が決まるわけではありません。
今はまだ何者でもなくても、社会に出てから自分の役割を見つけていくことはできます。
私にとって、この租税教室は、税金の授業であると同時に、母校への恩返しでもありました。
来年からは後輩へ
今年で、私が担当する松山東高校での租税教室は最後になります。
来年からは、後輩の税理士に引き継ぎます。
12年間、母校でこのような機会をいただけたことに、心から感謝しています。
松山東高校の生徒の皆さん、先生方、そしてこれまで関わってくださった皆さま、本当にありがとうございました。
そして、来年からこのバトンを受け取ってくれる後輩にも、心から感謝しています。
税金を通じて、社会を考える。
その小さなきっかけが、これからも母校で続いていくことを願っています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 