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大宮公園が変わる――「約400億円」のスーパー・ボールパーク構想、ついに実行フェーズへ 最初に動くのは第二公園の「多目的競技場」


140年の歴史を持つスポーツの聖地で始まる大改造 「試合がない日も楽しめる公園」は実現するのか

大宮のスポーツシーンが、大きく変わろうとしている。
舞台は、埼玉県を代表するスポーツ拠点の一つ、大宮公園

1885年の開園から140年。野球、サッカー、競輪など、数え切れないほどのスポーツの記憶を刻んできたこの場所で、県が進める「大宮スーパー・ボールパーク構想」が、いよいよ具体的な事業化の段階に入ってきた。

2025年9月には「大宮スーパー・ボールパーク基本計画」が策定された。 そして2026年。 全体事業計画の検討が進み、第二公園に整備される「多目的競技場」の基本計画策定も具体化。

さらに、周辺道路の交通問題を検討する委員会も設置され、行政側の推進体制も強化された。

構想は、もう「未来の絵」だけではない。 次に何を造り、どう運営し、誰がそこに人を呼ぶのか――。 その設計図を描く段階に入った。

■ まず動くのは「新しい双輪場」――競輪場は「廃止」ではなく「第二公園へ移転」

大宮スーパー・ボールパークの中で、現在最も注目すべき施設がある。大宮第二公園の西側エリアに整備される「多目的競技場」だ。

「競輪場がなくなるのではないか」という声を聞くこともあるが、それは誤解である。現在第一公園にある大宮競輪場(大宮双輪場)は解体されるものの、廃止ではなく第二公園への移転・新築が進められる。

新施設は、従来の競輪開催機能をしっかりと維持・継承しながら、自転車競技のみならず多様なスポーツやイベントにも活用できる「多目的競技場」として生まれ変わる。

ここが、単なる「競輪場の建て替え」との大きな違いだ。

県が目指しているのは、いわば「スポーツ施設の多目的化」だ。自転車競技を核としつつ、他競技や大型イベントにも対応できる空間を作ることで、年間を通じて大宮公園全体に新たな賑わいを生み出そうとしている。

2025年12月には多目的競技場の基本計画策定業務に関する企画提案募集が行われ、2026年1月には契約先候補者が選定された。つまり、プロジェクト全体の中でも、この施設はすでに「構想」から「具体的な計画づくり」へ進んでいる。

大宮スーパー・ボールパークの未来を占う、最初の重要な一手になりそうだ。

■ 約400億円――ただし「400億円のスタジアム」ではない

この構想を語るとき、必ず注目される数字がある。

約400億円。

基本計画では、サッカー場を除く再整備の概算工事費として、約400億円(税込)が示されている。

ただし、これは確定した最終事業費ではない。今後、個別施設の基本計画を進める中で整備内容や費用を精査し、建設資材価格や労務単価の変動なども踏まえて見直される。

そして重要なのは、この約400億円が「巨大スタジアム1個」に投じられるわけではないことだ。多目的競技場、野球場、周辺の公園・にぎわい機能など、大宮公園を広域的に再構築するための投資として考えられている。

だから、このプロジェクトを「新スタジアム計画」とだけ捉えるのは少し違う。目指しているのは、スポーツ施設を核にした公園そのものの再生だ。

■ 競輪場移転後の「第一公園」と「サッカー場」はどうなる?

では、競輪場が第二公園へ移転した後の第一公園や、既存のサッカー場はどう変わるのだろうか。ここにも一体再開発の大きなグランドデザインが隠されている。

1. 第一公園の再配置と「賑わいエリア」の創出
第一公園から競輪場が移転することで、公園内に非常に大きな広大スペースが生まれる。この跡地を活用し、野球場やサッカー場など既存施設の再配置・再整備を行うとともに、広場や飲食・物販施設が入る「賑わいエリア」を整備する。

これにより、周辺の豊かな自然や氷川の杜の景観と調和した、広大な「回遊型パーク」へと一体的に生まれ変わる構想だ。



2. サッカー場(NACK5スタジアム大宮)の建て替え・再整備検討
大宮アルディージャの本拠地として親しまれてきたサッカー専用スタジアム「NACK5スタジアム大宮」。実は、同スタジアムの管理主体は埼玉県ではなくさいたま市である。

現在のNACK5スタジアムには、「観客席の屋根設置率」や「南北長手方向の配置」「ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)開催基準」などを満たしていないといった現代的・国際的スタジアム基準上の課題が存在する。

そのため、さいたま市がRB大宮アルディージャなどの関係主体と深く連携しながら、建て替えや再整備に向けた具体的な方向性の協議・検討を進めている。第一公園の再配置とあわせ、サッカー場がどのような形で未来へ引き継がれるかも、大きな見どころの一つだ。

※イメージです

■ キーワードは「試合がない日」

スポーツファンにとって、この計画で最も面白いポイントはここだ。

「試合がない日に、何が起きるのか?」

県の基本計画では、スポーツ観戦だけでなく、飲食、交流、レクリエーションなどを楽しめる空間が検討されている。

  • 芝生広場

  • 飲食・商業施設

  • アーバンスポーツエリア

  • フィットネス・ランニングコース

  • ドッグランやBBQエリア

つまり、スタジアムや競技場に「用事がある人(観客)」だけをターゲットにするのではない。家族が遊びに来る。ランナーが走りに来る。友人同士が食事に来る。そして、何も予定がなくても公園を歩く。そんな場所を目指している。

これは海外のスポーツ複合施設などで見られる「ボールパーク」の考え方に近い。スポーツを目的にする人だけでなく、スポーツをきっかけに人が集まる街を作る。そこに大宮スーパー・ボールパークの最大の可能性がある。

■ 140年の歴史を「壊す」のではなく「つなぐ」

ただし、大宮公園の再整備には難しいテーマがある。それが、歴史と自然との共存だ。

大宮公園は1885年に開園。1934年には大宮公園野球場で日米親善野球が行われ、ベーブ・ルースもプレーした。

その後、競輪やサッカーなどの施設が整備され、1964年の東京オリンピックでは県営サッカー場がサッカー競技の舞台となった。

つまり大宮公園は、単なる「古い公園」ではなく、埼玉のスポーツ史そのものと言ってもいい場所だ。

だからこそ、再整備で求められるのは「新しくすること」だけではない。県の基本計画では、既存樹木の保全・再生、氷川の杜との調和、緑地の創出、グリーンインフラの活用などが掲げられている。

140年間育まれてきた大宮公園の風景を残しながら、次の140年に対応する。 「新しくする」と「残す」。この二つをどう両立させるかが、プロジェクト最大の腕の見せどころになる。


■ 民間企業はどう関わる? 39社が市場調査に回答

もう一つ、今後の行方を左右するのが民間企業の存在だ。

埼玉県は基本計画策定に先立ち、民間事業者を対象としたサウンディング型市場調査を実施。39社から回答があり、そのうち31社が事業への参入意欲を「高い」と回答した。企画を含めた事業主体としての参入を想定する企業や、デジタル関連インフラ、イベント、データ分析などを想定する提案もあった。

行政が施設を造って終わるのではなく、「民間の力で、完成後にどう人を呼び続けるか」が重要になる。

  • 年間を通じてイベントを開催できるか

  • 飲食・商業機能を成立させられるか

  • スポーツチームや競技団体と連携できるか

  • 地域住民が普段使いできるか

  • 観客が「また来たい」と思う場所にできるか

スーパー・ボールパークの成否は、そこにかかっている。

■ 「デジタル化」はどうなる?

基本計画では、デジタル技術を活用したサービスやデータ分析、デジタル関連インフラなども民間提案の対象として検討されている。

ただし、2026年8月時点で具体的なデジタル案内システムなどがすべて確定したわけではない。

現在は、民間から出されたアイデアを今後の事業計画や個別施設の要求水準にどう反映させるかを詰めていく段階だ。
例えば、

  • 「今日はどこで何が開催されているのか」

  • 「競技場までどう移動すればいいのか」

  • 「園内の混雑状況はどうなっているのか」

  • 「イベント終了後、どのルートで帰ればいいのか」

――そんな情報をリアルタイムで提供できれば、公園の使い方そのものが変わる可能性がある。

スポーツ施設のデジタル化は、巨大スクリーンや映像演出だけでなく、「人をどう動かすか」という視点で考えることが重要になる。

■ 最大の課題は「人をどう運ぶか」

どれだけ魅力的な施設を造っても避けられない問題がある。交通だ。

イベント開催時、大宮公園周辺では交通混雑が課題となる。そこで埼玉県は2025年12月、「大宮公園周辺道路問題検討委員会」を設置した。

施設を造るだけでなく、観客や来園者がどうやって公園へ来て、どう帰るのかまで考える。これはスーパー・ボールパークを成功させるうえで、極めて重要なテーマだ。

試合終了後に数千、数万人が一斉に動く。通常の公園利用者もいる。近隣住民の生活もある。イベントが重なれば、さらに人流は複雑になる。だからこそ、交通と人流の設計は今の段階から決めていかなければならない。

■ 県も推進体制を強化

プロジェクトの進展を象徴する動きが、県庁内にもある。
埼玉県は2026年度、大宮スーパー・ボールパーク構想を推進するため、都市整備部に「大宮スーパー・ボールパーク整備推進幹」を新設。担当職員も4人増員した。

大型スポーツ施設の再整備には、施設設計だけでなく、財政、交通、環境、民間事業者、競技団体、地域住民など、さまざまな分野の調整が必要になる。行政組織そのものが強化されたことは、構想を実行段階へ進めるうえで大きな意味を持つ。

■ 大宮のスポーツは、次の時代へ

構想が発表されたのは2022年。基本計画が策定されたのが2025年。そして2026年、全体事業計画や多目的競技場の具体化が始まった。

時間を追って見ると、プロジェクトは確実に一段ずつ進んでいる。ただし、まだ完成形が決まったわけではない。これから事業手法が具体化され、個別施設の設計条件が詰まり、民間事業者の公募・選定などへ進んでいく。

だからこそ、今は面白い。まだ誰も完成形を見ていないからだ。
大宮公園には、140年分の歴史がある。そこに、これからの100年を見据えた新しいスポーツ文化をどう重ねるのか。

  • 競輪(多目的競技場)はどう進化するのか

  • 移転後の跡地と野球場はどんな姿になるのか

  • さいたま市が進めるサッカー場(NACK5)の再整備と連携はどうなるのか

  • 新しいスポーツやイベントは生まれるのか

  • そして、試合がない日にも大宮公園へ人が集まるのか

約400億円という数字だけでは、このプロジェクトの価値は測れない。問われているのは、大宮公園を「競技を見る場所」から「スポーツと暮らしが交差する場所」へ変えられるかどうかだ。

2026年
大宮スーパー・ボールパークは、いよいよ「夢」を「設計図」に変える段階へ入った。次に見るべきは、どんな施設が建つのかだけではない。その場所で、どんなスポーツの未来が始まるのか。

大宮の次の100年を決める戦いは、もう始まっている。

・『大宮スーパー・ボールパーク基本計画』(2025年9月策定/埼玉県 都市整備部 公園スタジアム課)

 : 競輪場(双輪場)の第二公園移転方針、概算事業費約400億円(サッカー場除く)、第一公園跡地での賑わいエリア創出や全体ゾーニング

「大宮第二公園多目的競技場基本計画策定等業務委託 企画提案競技(プロポーザル)」(2025年12月募集・2026年1月選定/埼玉県)

 : 第二公園に新設する多目的競技場の計画策定業務の公募および事業者選定プロセス

『大宮スーパー・ボールパーク構想に関するサウンディング型市場調査 結果報告』(埼玉県 都市整備部)

 : 民間事業者39社との対話実績および31社の参入意欲「高い」回答データの記載

「大宮公園周辺道路問題検討委員会(第1回)」設置・開催発表(2025年12月実施/埼玉県)

 : イベント開催時の周辺道路混雑緩和・交通アクセス対策を協議する検討組織の立ち上げ

『令和8年4月1日付け 組織・定数改正について』(2026年2月公表/埼玉県 人事課)

 : 都市整備部内への「大宮スーパー・ボールパーク整備推進幹」の新設および担当職員の増員体制

さいたま市施設管理情報およびJリーグ/AFCライセンス基準資料(さいたま市 都市局/スポーツ振興課)

 : NACK5スタジアム大宮の所有主体(さいたま市)、屋根カバー率・ピッチ方角・ACL基準等の施設課題と再整備の検討経緯


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