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抗血小板薬なのに、処方意図はそこじゃない?


目次

1. ある処方で引っかかったこと
2. シロスタゾールは“抗血小板薬”だけでは見えにくい
3. PDE3を阻害すると何が起こるのか
4. 徐脈傾向の人に出た理由
5. ただし、心不全では禁忌
6. まとめ
7. 参考文献

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1. ある処方で引っかかったこと

あるとき、徐脈傾向のある患者さんにシロスタゾールが処方されていたことがありました。

シロスタゾールといえば、まず思い浮かぶのは抗血小板薬です。

いわゆる「血をサラサラにする薬」。

だから最初は、

「脳梗塞の再発予防かな?」
「慢性動脈閉塞症かな?」

くらいに見ていました。

でも、その患者さんは徐脈傾向。

そこで、ふと引っかかりました。

「このシロスタゾール、本当に抗血小板作用だけを狙っているのか?」

ここから見え方が変わりました。

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2. シロスタゾールは“抗血小板薬”だけでは見えにくい

シロスタゾールは抗血小板薬です。

ただし、クロピドグレルとは作用の見方がかなり違います。

クロピドグレルは、血小板のP2Y12受容体を阻害して、ADPによる血小板活性化を抑えます。

つまり、血小板のADPスイッチを切る薬です。

一方、シロスタゾールはPDE3阻害薬です。

ここがポイントです。

シロスタゾールは、血小板だけをピンポイントで見る薬ではありません。

PDE3阻害を介して、

血小板
血管
心拍

まで話が広がります。

だから、同じ「抗血小板薬」でも、クロピドグレルとは副作用の出方や処方意図の読み方が変わります。

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3. PDE3を阻害すると何が起こるのか

PDE3は、細胞内のcAMPを分解する酵素です。

つまり、PDE3を阻害すると、

cAMPが分解されにくくなる

細胞内のcAMPが増える

という流れになります。

ここで大事なのは、cAMPが増えたときの反応は、場所によって変わることです。

血小板でcAMPが増えると、血小板は活性化しにくくなります。

その結果、血小板凝集が抑えられます。

これがシロスタゾールの抗血小板作用です。

一方で、血管平滑筋でcAMPが増えると、血管はゆるみます。

つまり、血管拡張作用が出ます。

だからシロスタゾールでは、頭痛、ほてり、拍動感のような副作用が出ることがあります。

そして、もうひとつ大事なのが心臓です。

心臓まわりでcAMPが増えると、心拍数を上げる方向に働くことがあります。

添付文書でも、シロスタゾールでは動悸、頻脈、ほてり、不整脈などの循環器系副作用が記載されています。

さらに、投与により脈拍数が増加し、狭心症が発現することがあるため、胸痛などの問診を注意深く行うよう警告されています。

つまりシロスタゾールは、

血小板では「固まりにくくする」
血管では「広げる」
心臓では「脈を上げる方向に働くことがある」

という薬です。

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4. 徐脈傾向の人に出た理由

ここまで見ると、徐脈傾向の患者さんにシロスタゾールが出た理由が少し見えてきます。

普通の人では、

動悸
頻脈
拍動感

として問題になる作用が、徐脈傾向の人では、あえて期待される作用になることがあります。

つまり、

「副作用としての心拍数増加」

が、患者背景によっては、

「狙った作用」

になることがあるわけです。

実際、洞不全症候群などの徐脈性不整脈に対して、シロスタゾールにより心拍数が増加し、症状が改善したという報告があります。

ペースメーカー植込みを避ける目的で、シロスタゾールの有効性を検討した報告もあります。

ここが面白いところです。

シロスタゾールを「抗血小板薬」としてだけ見ると、

「なぜ徐脈の人に?」

で止まります。

でも、PDE3阻害薬として見ると、

「心拍数を上げる作用も見込んでいるのかもしれない」

という読み方ができます。

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5. ただし、心不全では禁忌

ただし、ここはかなり大事です。

シロスタゾールは心拍数を上げる方向に働きうる薬です。

だから、動悸、頻脈、狭心症には注意が必要です。

そして、心不全または心不全の既往がある患者には禁忌です。

これは、シロスタゾールがPDE3阻害作用を持つ薬だからです。

PDE3阻害によって心臓に負荷がかかる方向に働きうるため、徐脈で「使えるかもしれない作用」が、心不全では「使ってはいけない理由」になります。

ここが、シロスタゾールの難しくて面白いところです。

同じ作用でも、患者背景によって意味が変わります。

徐脈傾向では、心拍数を上げる作用が処方意図になることがある。

一方で、心不全では、その作用が禁忌につながる。

薬効と副作用は、表と裏です。

シロスタゾールは、それがすごくわかりやすい薬だと思います。

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6. まとめ

シロスタゾールは、単なる「血をサラサラにする薬」ではありません。

抗血小板薬でありながら、PDE3阻害薬でもあります。

PDE3阻害によってcAMPが増えると、

血小板では、凝集しにくくなる
血管では、拡張する
心臓では、心拍数を上げる方向に働くことがある

この性質があるから、動悸や頻脈が出ることがあります。

そして、この作用があるからこそ、徐脈傾向の患者さんで処方意図として見込まれることもあります。

ただし、心不全では禁忌。

つまりシロスタゾールは、

「血をサラサラにする薬」

で終わらせるには、少しもったいない薬です。

処方の背景を見ると、かなり表情が変わる薬だと思います。

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7. 参考文献

シロスタゾール錠 添付文書情報
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061526

Efficacy of cilostazol for sick sinus syndrome to avoid permanent pacemaker implantation
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30982679/

Journal of Cardiology: Efficacy of cilostazol for sick sinus syndrome to avoid permanent pacemaker implantation
https://www.journal-of-cardiology.com/article/S0914-5087%2819%2930078-4/fulltext

DailyMed Cilostazol Prescribing Information
https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/

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