なぜ小児頭痛でペリアクチン?〜小児片頭痛予防と、古い抗ヒスタミン薬の不思議な立ち位置〜
目次
1. 鼻水の薬が、なぜ頭痛に?
2. ガイドライン上の主役は別にいる
3. それでもペリアクチンは候補薬として残っている
4. セロトニン作用を簡単に整理する
5. 食欲増加と眠気は、欠点でもあり特徴でもある
6. 薬剤師として見るポイント
7. まとめ
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1. 鼻水の薬が、なぜ頭痛に?
小児の頭痛予防で、ペリアクチンが処方されることがあります。
ペリアクチンの一般名はシプロヘプタジン。
分類としては、第1世代抗ヒスタミン薬です。
普通に考えれば、鼻水、くしゃみ、かゆみに使う薬です。
それなのに、小児の片頭痛予防で名前が出てくる。
ここがこの薬の面白いところです。
理由は、ペリアクチンが単なる抗ヒスタミン薬ではないからです。
ペリアクチンには抗ヒスタミン作用だけでなく、抗セロトニン作用があります。
片頭痛は、今ではCGRP、三叉神経血管系、神経の過敏性などが関わる病態として考えられています。
ただ、片頭痛とセロトニンの関係は昔から注目されてきました。
その流れの中で、抗セロトニン作用を持つペリアクチンは、小児片頭痛予防の候補薬として使われてきました。
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2. ガイドライン上の主役は別にいる
では、小児・思春期の片頭痛予防で、ガイドライン上の中心薬は何でしょうか。
近年の日本頭痛学会誌の解説では、『頭痛の診療ガイドライン2021』において、小児・思春期の片頭痛予防薬として推奨される薬剤は、
アミトリプチリン
トピラマート
プロプラノロール
ロメリジン
の4剤と整理されています。
ここで大事なのは、ペリアクチンはこの推奨4剤の中には入っていないことです。
つまりペリアクチンは、ガイドライン上で小児片頭痛予防の主役として前面に置かれている薬ではありません。
ただし、ここで話は終わりません。
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3. それでもペリアクチンは候補薬として残っている
ペリアクチンは、ガイドライン推奨4剤の中心にはいません。
でも、小児片頭痛予防の候補薬として名前が消えたわけでもありません。
同じ日本頭痛学会誌の解説では、近年、シプロヘプタジンやリボフラビンの有効性を示す報告があるとされています。
さらにシプロヘプタジンについては、発作頻度の低下に寄与し、特に併存疾患のない患者で高い有効率が得られている、と整理されています。
つまりペリアクチンの立ち位置はこうです。
ガイドラインの主役ではない。
でも、小児片頭痛予防の候補薬としてはちゃんと残っている。
この「主役ではないけど、現場にはいる」感じが、ペリアクチンらしいところです。
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4. セロトニン作用を簡単に整理する
ここで少しだけ、セロトニン受容体の話をします。
片頭痛薬では、同じセロトニンでも受容体によって働きが変わります。
発作時に使うトリプタン系は、主に5-HT1B/1D受容体を刺激します。
5-HT1系はGiタンパク共役です。
Gi系は、ざっくり言えば神経伝達物質の放出を抑える方向に働きます。
そのためトリプタンは、血管収縮だけでなく、三叉神経からのCGRP放出を抑える方向に働き、発作時の頭痛を止めます。
一方、ペリアクチンで話題になるのは5-HT2遮断です。
5-HT2系はGqタンパク共役です。
Gq系はPLCを活性化し、IP3やDAGを介して細胞内Ca²⁺を増やす方向に働きます。
ざっくり言えば、神経や血管、血小板などを興奮寄りに動かす受容体です。
そのため、5-HT2を遮断する薬は、セロトニンによる過敏な反応を抑え、片頭痛のスイッチが入りにくい状態を作ると考えられてきました。
ここで大事なのは、ペリアクチンは血管を広げて頭痛を予防する薬ではない、ということです。
「5-HT1を刺激して発作を止める薬」がトリプタン。
「5-HT2を邪魔して発作を起こりにくくする薬」が、古典的な抗セロトニン系の予防薬。
こう分けると、少し見えやすくなります。
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5. 食欲増加と眠気は、欠点でもあり特徴でもある
ペリアクチンといえば、食欲増加のイメージを持っている人も多いと思います。
実際、食欲亢進や体重増加はよく知られた特徴です。
小児片頭痛予防として使う場合、これは単純に良い副作用とも悪い副作用とも言い切れません。
食が細い子、やせ気味の子では、許容しやすいことがあります。
一方で、太り気味の子や間食が増えやすい子では問題になります。
眠気も同じです。
第1世代抗ヒスタミン薬なので、眠気は出やすい薬です。
就寝前に飲んで睡眠リズムが整うなら、薬の特徴として使いやすいことがあります。
しかし、朝起きにくい、学校でぼーっとする、集中力が落ちるようなら、続けにくくなります。
ペリアクチンは、副作用が少ないから使いやすい薬というより、副作用の出方まで含めて子どもの背景に合うかを見る薬です。
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6. 薬剤師として見るポイント
小児にペリアクチンが出ていたら、まず処方目的を決めつけないことが大切です。
鼻炎、かゆみ、感冒症状でも使われます。
一方で、頭痛予防として使われることもあります。
特に就寝前投与で、頭痛の訴えが背景にある場合は、小児片頭痛予防を意識している可能性があります。
頭痛予防目的なら、見るべきポイントは効果と副作用の両方です。
頭痛の頻度が減っているか、学校生活への支障が減っているかを確認します。
同時に、眠気、朝の起きにくさ、食欲増加、体重増加、便秘、口渇も見ていきます。
予防薬は、飲んですぐに痛みを止める薬ではありません。
だからこそ、頭痛の回数や生活への影響がどう変わったかを、家族と一緒に見ていくことが大切です。
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7. まとめ
ペリアクチンは、小児片頭痛予防のガイドライン推奨4剤の中心には入っていません。
中心に挙げられるのは、アミトリプチリン、トピラマート、プロプラノロール、ロメリジンです。
しかしペリアクチンは、小児片頭痛予防の世界から消えた薬ではありません。
近年の解説でも、シプロヘプタジンは発作頻度の低下に寄与する可能性があり、特に併存疾患のない患者で有効率が高いとされています。
ペリアクチンは、鼻水の薬の顔をした、少し変わった抗ヒスタミン薬です。
抗セロトニン作用を持ち、5-HT2遮断という古典的な片頭痛予防の文脈にいます。
さらに、眠気や食欲増加というクセも、小児では治療上の判断材料になります。
ガイドラインの主役ではない。
でも、小児頭痛の候補薬としてちゃんといる。
それがペリアクチンの面白い立ち位置です。
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参考文献
1. 日本頭痛学会誌「小児・思春期の片頭痛診療-予防療法の実際-」
国内ガイドラインにおける推奨4剤として、アミトリプチリン、トピラマート、プロプラノロール、ロメリジンが整理されている。また、近年のシプロヘプタジンの有効性報告にも触れられている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjho/52/3/52_506/_article/-char/ja
2. Shimomura H, et al. Cyproheptadine Treatment in Children and Adolescents with Migraine: A Retrospective Study in Japan.
小児・思春期片頭痛に対するシプロヘプタジン治療を検討した国内後ろ向き研究。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11587002/
3. 日本頭痛学会・慢性頭痛の診療ガイドライン2013「小児の頭痛」
10歳以下で肥満が問題でない小児に対するシプロヘプタジン就寝前投与について記載がある。
https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/271-289_7.pdf
4. Mylecharane EJ. 5-HT2 receptor antagonists and migraine therapy.
ピゾチフェン、シプロヘプタジン、メチセルジドなど、5-HT2受容体拮抗薬と片頭痛予防の古典的整理。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2045831/
