借りたものは返すから君の優しさ以外は『amazarashi ーリター 』
私の唯一愛してやまないアーティスト『amazarashi』
その数ある名曲のうちの1つ「リタ」をPodcast風に解説していきます。
amazarashiを知ってる人も知らない人も、一聴の価値ありです。
※Podcastの声はノートブックLMで作成されており、AIによる誤字脱字・イントネーションの違和感があります。ご了承ください
君が出てくならそれでいいよ
借りた物は返すから
時計もCDも電車賃も全部
君の優しさ以外は
線路沿い 一人歩いてる夜道の
街灯に影が二つ
君の亡霊だ きっとそうなら嬉しいな
明かり途切れてひとりぼっち
以下、文字起こしです。
【女性】 あの、借りたCDって普通に手渡して返せますよね。
【男性】 ええ、まあ物理的なものですからね。
【女性】 そうなんです。立て替えてもらった電車の運賃とか、部屋に置きっぱなしになっていた時計なんかも、箱に詰めて送り返すことができるじゃないですか。
【男性】 はい、簡単に清算できますよね。
【女性】 でもその人から与えられてしまった優しさだけは、どうやっても返すことができないんですよ。
【男性】 なるほど、目に見えないものですからね。
【女性】 もしその優しさが自分の生き方の根本すら書き換えてしまうような、すごく強力なものだったとしたら、なんていうか、考えちゃいますよね。
【男性】 ええ、非常に興味深いテーマだと思います。
【女性】 というわけで、今日の深掘りの旅へようこそ。情報が溢れる日常から一歩抜け出して、あなたと一緒に1つのテキストの奥底へ潜っていけることを嬉しく思います。
【男性】 今回もすごく深いテーマが待っていますね。ただの別れ話にとどまらずに、人間のエゴとか、無償の愛、そして自己変革のメカニズムにまで踏み込むような鋭いテキストですからね。
【女性】 そうなんですよ。今回私たちが深掘りする素材は、amazarashiの秋田ひろむさんが作詞された楽曲「リタ」のテキストです。
【男性】 はい、名曲ですよね。
【女性】 ええ。この作品を全く知らないあなたにも、まるで1本の映画を見ているかのように情景が浮かぶように、物語のあらすじを丁寧に紐解いていくのが最初のミッションになります。
【男性】 情景描写が本当に素晴らしいですからね、この曲は。
【女性】 ですよね。そしてもう1つ、タイトルにもなっている「リタ」という存在が、物語の中で単なる登場人物を超えてどのような役割を果たしているのか、その核心に迫っていきたいと思います。
【男性】 わかりました。では、早速物語の幕開けから状況を見ていきましょうか。
【女性】 はい、お願いします。テキストは、主人公である「僕」と「君」、つまり「リタ」が別れる場面から始まります。先ほどあなたが触れたように、主人公は時計やCDなど、物理的に借りたものはすべて返すよ、と告げているんです。
【男性】 なるほど、最初は別れのシーンなんですね。
【女性】 ええ、そうなんです。でもどうしても返せないものが1つだけあって、それが「君の優しさ」だというわけです。
【男性】 ああ、なるほど。この「優しさは返せない」っていう感覚、すごくリアルですよね。物やお金ならプラマイゼロに清算できますけど。
【女性】 はい、感情はそうはいきませんからね。
【男性】 なんか感情とかその人から受けた影響って、物理的な貸し借りとは全然次元が違うじゃないですか。例えるなら、あの、スマートフォンに全く新しいOSをインストールされちゃったみたいな感覚というか。
【女性】 ああ、ソフトウェアのアップデートですね。
【男性】 そうそう、もうシステムそのものに組み込まれちゃって、アンインストールして「はいお返しします」とはいかないですよね。
【女性】 その例え、非常に的確ですね。一度インストールされた優しさは主人公の内部構造を変えてしまうんですよ。ええ。だからこそテキストの序盤で主人公はかつて愛したはずの君のことを、まるで詐欺師か魔法使いみたい、と表現しているんです。ずっと変わらないと思っていた日常を、いとも簡単に別のものにすり替えてしまった、と。
【男性】 愛した人を詐欺師って呼ぶのって、言葉としてはかなり刺々しいですよね。
【女性】 確かにそう聞こえますね。なんか普通の感覚なら別れの場面でそんな風には言わないと思うんですが、なぜ彼はここまで強い、ある種ひねくれた表現を使ったんでしょうか。
【男性】 それはですね、彼が抱えている認知の不協和と、それを守るための防衛機制が働いているからなんですよ。
【女性】 防衛機制、ですか。
【男性】 はい。彼は「君が僕を騙していたんだ」と思い込まないと自分の心が保てない状態にあるんです。テキストを追うと、彼が必死に自分に言い聞かせている言葉が並んでいます。
【女性】 どんな言葉ですか?
【男性】 「離れない人に泣いたりしない、壊れないものに泣いたりしない、だから自分は1人で平気なのだ」と。
【女性】 なるほど。つまり最初から「どうせ壊れるし人は離れていくものだ」と世界を拒絶しておくことで、いざ失った時のダメージを和らげようとしているんですね。予防線を張っているというか。
【男性】 まさにその通りです。心理学でいうところの「予期悲嘆」を無理やり自分に適用して傷つくのを回避しようとしているんです。
【女性】 なんか、不器用ですね。
【男性】 ええ、でもその強がりの鎧が全く機能していないことが続く情景描写で残酷なほど鮮明に描かれるんです。線路沿いの夜道を1人で歩く主人公、街灯の下で自分の影の横にもう1つの影があるように錯覚してしまう。
【女性】 うわあ、それって。
【男性】 そして「君の亡霊だ、きっとそうなら嬉しいな」と願ってしまうんです。
【女性】 切ないですよね、本当に。強がっているのに無意識に彼女を探しているじゃないですか。
【男性】 さらに、彼が帰宅した部屋の描写も秀逸なんですよ。部屋の中、黙りこくった冷蔵庫と、笑い声がテレビの中だけ、という描写があります。
【女性】 うわあ、すごく静かで孤独な情景が浮かびます。
【男性】 この人工的なテレビの笑い声と圧倒的な静寂のコントラストが、彼が直面している孤独の深さを物理的な空間として表現しているんです。
【女性】 なるほど。彼はそこで「気持ちが見えたならいいのにな、いや、やっぱりいらないや、残酷だから」と目を背けます。つまり自分の本当の気持ち、猛烈に寂しくて悲しいっていう現実を見るのが怖くて、必死に嘘をついているわけですね。
【男性】 そういうことになりますね。
【女性】 でもそこまでダメージを受けるほど大切だった魔法みたいな関係なら、そもそもなぜ壊れてしまったんでしょうか。浮気とか、何か決定的な裏切りがあったとか?
【男性】 いえ、何か劇的な事件が起きたわけではないんです。
【女性】 あ、違うんですね。
【男性】 ええ。2人の関係を壊したのはもっと根本的で、だからこそどうしようもない、生き方の構造的な違いでした。テキストの中盤でこの物語の最大の葛藤が提示されます。
【女性】 最大の葛藤ですか。
【男性】 それは「人のために生きたい君」と「自分のために生きたい僕」という明確な対比なんです。
【女性】 人のためと自分のため。
【男性】 ええ。この正反対の生き方がまるで合わない歯車が回っては軋む音のような2人の笑い声を生み出していた、と描写されています。
【女性】 あの、ちょっと待ってください。ここで少し引っかかるんですけど。
【男性】 はい、なんでしょう。
【女性】 普通に考えたら人のために生きるって究極の愛情表現じゃないですか。
【男性】 ええ、一般的には素晴らしいこととされますよね。
【女性】 ですよね。もし彼女が完全に利他的で、見返りを求めずに尽くしてくれるなら、自分のために生きる利己的な主人公にとっては、ある意味で一番都合が良くて居心地のいい相手になるはずですよね。
【男性】 なるほど。需要と供給が一致しているように見えますよね。
【女性】 そうなんです。なぜそれが関係を破壊するような軋む歯車になってしまったんでしょうか。
【男性】 非常に鋭い視点です。一見そう見えるんですが、人間の心理はもっと複雑なんですよ。
【女性】 複雑、ですか?
【男性】 極端な利他主義、つまり見返りを求めない無償の愛を絶え間なく注がれ続けると、受け取る側である利己的な人間の中に何が生まれると思いますか?
【女性】 ええっと、なんだろう、感謝ですかね。
【男性】 実は、猛烈な罪悪感と自己嫌悪なんですよ。
【女性】 ああ、なるほど。相手が清らかで優しすぎるからこそ、一緒にいればいるほど「自分ってなんて自分勝手で嫌な奴なんだ」っていう事実を常に突きつけられることになるんですね。
【男性】 その通りです。彼女の純粋な利他性は彼の利己主義を容赦なく照らし出す強力なスポットライトとして機能してしまったんです。
【女性】 きついですね、それは。
【男性】 はい。そこで彼は「1つを選ぶということは1つを捨てるということだ」という結論に至ります。自分の利己的な生き方をすぐに変えることはできない。でも彼女の美しい生き方を汚すこともできない。だから別れを選んだんですね。
【女性】 ええ、結果として彼が選んだのは「僕は大人しくゴミ箱に入って君を見送るんだ」という極端な自己卑下と諦めの決断でした。
【男性】 ゴミ箱に入って見送る、ですか。愛する人を引き留める資格すら自分にはない、自分はゴミみたいな存在なだと、痛々しいほどの自己否定ですね。
【女性】 そうですね。あ、ここで気づいたんですけど、タイトルの「リタ」って単なる女性の名前じゃないですよね。
【男性】 おお、そこに気づきましたか。この深掘りの重要なミッションの1つですね。
【女性】 はい、カタカナで「リタ」と表記されていますけど、これって日本語の「利他的」の「利他」と完全に重なり合ってますよね。
【男性】 ええ、まさに。だから「人のために生きたい君」なんですよ。
【女性】 つまりリタという存在は単なる恋人じゃなくて、利他という概念そのものを体現したキャラクターとして描かれているんですね。そしてその役割の第1段階は主人公のエゴを浮き彫りにする残酷な鏡だったわけだ。
【男性】 まさにその通りです。そしてその鏡に映った自分の醜さに耐えきれなくなった主人公の前に決定的な出来事が起こるんです。
【女性】 何が起こるんですか?
【男性】 物語の感情的なピークとも言える、リタの涙です。
【女性】 ああ、そのシーン本当に胸が締め付けられますよね。だってリタは自分のために泣いたりしない、苦しい時も泣いたりしない人なんですよ。
【男性】 ええ、すごく強い人ですよね。
【女性】 なのに誰かのために生きる強さを持った人が、別れの場面でなぜか主人公である僕より先に泣いてしまう。これ、なぜ彼女は泣いたんでしょうか。彼女の涙の理由を理解するには主人公のそれまでの行動を振り返る必要があるんです。彼は防衛機制を張り巡らせて嘘をついて孤独な部屋でテレビの笑い声を聞きながら現実から目を背けていましたよね。
【男性】 はい、傷つかないように感情に蓋をしてましたね。
【女性】 彼女はそれを見抜いていたんですよ。
【男性】 見抜いていた。
【女性】 はい。リタは自分自身の悲しみのためにだけではなくて、素直に悲しむことすらできない主人公の不器用さや、彼が抱え込んでいる深い孤独に対して涙を流したんです。
【男性】 そういうことだったんですか。あるいは彼が本来流すべきだった喪失の涙を代わりに流してあげたのかもしれません。極限まで利他的な涙です。
【女性】 うわあ、自分が振られる場面で相手が自分のために泣いてくれている。
【男性】 そうなんですよ。なんかそんなの見せられたらもうごまかしが効かないですよね。自分がどれだけ自分のことしか考えていなかったか痛いほど思い知らされるというか。
【女性】 まさにその通りです。この先に流された涙をきっかけに主人公はついに強がりの鎧を脱ぎ捨てるんです。
【男性】 いよいよですね。
【女性】 そしてここからテキストは極めて論理的で冷酷なまでの自己批判のプロセスへと入っていきます。「あの部分の歌詞、すごく耳に残っています。自分とばかり向き合って人とは決して向き合わずに、言葉を選ばないのなら傷つけて当たり前だ」って。
【男性】 ええ、さらにこう続きます。「過去とばかり向き合って今とは決して向き合わずに、後ろ向きで歩いてりゃつまづいたって当たり前だ」。
【女性】 うわあ。どうですかこの徹底的な自己解剖。
【男性】 なんかもう物理法則みたいですよね。前を見ずに後ろ向きに歩いていたら石につまづいて転ぶのは当然だっていう。それを自分の人間関係と人生の歩み方に当てはめているんですね。
【女性】 ええ。相手が詐欺師だったわけでも魔法が解けたわけでもない。自分が今と相手に向き合わず自分のエゴという過去ばかりを見ていたから、この関係は転んで壊れてしまったんだと完全に原因を自分の中に見出しています。
【男性】 素晴らしい読み解きです。別れの責任を他者や環境のせいにしないで、自分のシステムのエラーとして論理的に見据えたんです。これが彼がゴミ箱のような自己卑下から抜け出すための最初のステップでした。
【女性】 なるほど。では自分の欠陥を完全に理解してすべてを失った主人公は物語の結末でどのような答えを出すと思いますか。
【男性】 もう後戻りはできないですよね。
【女性】 ええ、彼は静かに、しかし確固たる意志を持ってこう宣言するんです。「とどまる人に泣いたりしない、分かったつもり、だから僕はもう自分のために生きたりしない」と。
【男性】 えっと、「自分のために生きたりしない」ですか。
【女性】 はい。あの最初の方で「自分のために生きたい僕」だった彼が真逆にひっくり返りましたね。
【男性】 そうなんです。そして最後に彼のなかで新しく回り始めた歯車がこの言葉を紡ぎ出します。「誰かのために笑ってみたい君みたいに」と。
【女性】 うわあ、ちょっと鳥肌が立ちました。ここで冒頭のOSのアップデートの例えが完全に回収されるんですね。
【男性】 ええ、まさに。タイトルのリタが果たした本当の役割は主人公を自己嫌悪に陥らせることじゃなかったんです。彼女の涙と別れを通して主人公の古いOS、つまり利己主義を完全に破壊して、その焼け跡にリタという新しいOSをインストールすることだったんだ。
【女性】 おっしゃる通りです。リタは主人公の生き方を根本から変革するための起爆剤、まさにカタリスト、触媒だったんです。
【男性】 触媒、ですか。
【女性】 はい。別れという強烈な摩擦熱がなければ彼の自己中心的な殻は決して割れなかったでしょうから。
【男性】 だからこそ時計もCDも返せたのに優しさだけは返せなかったんですね。すでに彼自身の新しいコアとして深く組み込まれてしまっていたから。
【女性】 ええ、失ったことで永遠に自分の一部になったんです。深いですね。
【男性】 まさにそのパラドックスこそがこのテキストの最も美しい部分なんです。そして物語の最後、自己変革を遂げた主人公の時間に対する捉え方が劇的に変化するんですよ。
【女性】 どんな風にですか。
【男性】 忘れた過去に泣いたりしない、過ぎない時間に泣いたりしない、と。かつては後ろ向きに歩いてつまずいていた彼が、過去への執着を手放したんです。
【女性】 今と未来を向き始めたんですね。
【男性】 ええ。そして「君と笑った季節が終わる、時は流れる、たったそれだけ」と結ばれるんです。
【女性】 たったそれだけ。
【男性】 はい。無理な強がりでもなく絶望でもない、ただ静かに季節の変化と時間の流れという現実を受け入れているんです。
【女性】 本当ですね。別れは確かに痛みを伴いましたけど、彼はもうゴミ箱の中にはいません。誰かのために笑うという新しい目的を持って流れる時間の中を前を向いて歩き出している。見事な成長の軌跡です。
【男性】 いやあ、本当に一本の映画を見終えたような充実感ですよ。あなたは、どう感じましたか。今日の深掘りを少し振り返ってみましょうか。
【女性】 そうですね。今回はamazarashiの「リタ」というテキストを通じて1人の人間が強がりの鎧を脱ぎ捨て、自己中心的な世界から抜け出して誰かのために生きたいと願うようになるまでの痛ましくも美しい変遷をたどってきました。
【男性】 ええ。「リタ」という存在は最初は魔法使いのように彼の日常を塗り替え、次には残酷な鏡として彼のエゴを映し出し、最終的には彼の生き方をアップデートする新しいOSとなりました。
【女性】 はい。
【男性】 しかし最終的には、彼の古い価値観を打ち砕いて新しい生き方への道しるべとなったんです。悲劇的な別れを見事に人間の成長へと昇華させていますよね。私たちも生きていると大切な人との別れを経験することがありますよね。それは心の一部がもぎ取られるような痛みを伴いますが、今日私たちが読み解いたように、その痛みは決して無駄なものではないという深い気づき、古い自分を壊して新しい自分に生まれ変わるための通過儀礼なのかもしれないですね。
【女性】 痛みがなければ私たちは自分の抱える歪んだ歯車に気づくことすらできないことが多いですからね。
【男性】 そうですね。あの、最後にこの深掘りを聞いてくださっているあなたに1つ考えてみてほしいことがあるんです。
【女性】 何でしょうか。
【男性】 もしあなたの人生から深く愛した誰かが去っていったとして、あるいはあなたが誰かの人生から立ち去ったとして、そのすべてが終わった後、決して返すことができず、相手の心に永遠に組み込まれてしまう新しい歯車とは一体何でしょうか。それはリタが残したような優しさでしょうか。それとも全く別の何かでしょうか。
【女性】 次にあなたが人生のどこかで大切な誰かと、思い出を振り返る時、少しだけ自分の中に残されたアップデートの痕跡を探してみてください。今日の深掘りはここまでです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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