書庫冷凍【毎週ショートショートnote】
かつて天才と呼ばれた魔導師がいた。
数々の強大な魔法を編み出すも、あまりの才能ゆえに人間不信となり、晩年には自分の家を丸ごと氷結させた。
以来、その内側に封じられた彼の魔法書を手にしようと、あらゆる魔導師がその氷に挑んだが、誰にも溶かせないままだ。
「……ここが噂の『凍てついた魔書庫(フリーズド・フレーズ)』か。俺の炎魔法で溶かしてやるぜ!」
「いや、封印を解くのは私よ」
「お前じゃ無理だろ。炎魔法苦手なくせに」
「大事なのは心よ」
「魔法は精神論じゃないぞ」
いえ、この封印は、他人との交流に絶望した心そのもの。
寂しかった彼の心を、救ってあげられたら――
巨大な氷塊に、とある液体をかける。
すると――みるみるうちに氷は溶け出した。
「な、なんで……」
「やっぱり。大事なのは、彼の心を溶かすことだったのよ」
こうして彼女は、チョコを溶かす程度の炎魔法で作ったホットチョコレートで、天才魔導師ギリスラー・モラエンドの書庫を解放したのだった。
