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yukitaka_sawama
合戦バー【毎週ショートショートnote】
バーの扉を開けた途端、ひりつく空気を感じた。
十二月、クリスマスや年末年始を共に過ごす恋人が欲しい者たちが集い、鍔迫り合いをする場だと噂の――
「あちらのお客様からです」
席に座る前に、早くもグラスが置かれた。
「こんばんは。それは私のオリジナルカクテルで、『長篠』といいます」
隣の席に一人の男性が腰掛け、語り出す。
「ウォッカベースの力強い風味で武田騎馬隊の勇猛さを表しつつ、それを返り討ちにした信長の鉄砲隊の鮮烈な戦果を、フレッシュな果実の……」
「合戦の話なら、私もご一緒しても?」
突然、背後から別の声がした。
「ああ、失敬。私は源平合戦の『一ノ谷の戦い』が好きでしてね。予期せぬ方向から予期せぬタイミングで奇襲を仕掛ける、これこそが合戦の醍醐味だと――」
私は、説明を遮るように、席を立つ。
「失礼するわ。私は、言葉じゃなく腕っぷしで勝敗を競うバーだと思って来たのだけど――どうやらここはまだその前段階、『能弁バー』だったようね」
