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voice_watanabe
学生総隠居【毎週ショートショートnote】
「……どんどん講義に出席する学生の数が減っているな」
研究室で私はため息をつく。
「先週も何人か退学しましたからね。仕方ないですよ、教授。今は『学生総隠居』時代なんですから」
人工知能の進化により、レポートも研究もAIに任せれば事足りるようになってしまった。
それだけではない。今では、すべての仕事はAIが学習済みで、人間の仕事はAIの指示に従うことだけ。つまり、若者が大学に行ってまで学ぶ必要はまるでないのだ。
「……失礼します」
ただし――
「教授、先程の講義の内容で質問が」
「おお、熱心だな」
『勉強は無駄』という価値観が定着した今、それでも大学の門を叩く彼のような者は、強い熱意と意欲がある。
「ええ。知らないことを学ぶ、こんなに面白いことは他にありませんよ」
ただし――
それはほぼ全員、定年後の熟年層の「老後の趣味」として、であるが。
「少しでも学びたいんです――寿命で『退学』する前にね」
目を輝かせ、私より遥かに歳上の学生は語る。
