骨折祈願【毎週ショートショートnote】
就業時間は過ぎ、他の社員が次々に帰るなか、先輩は一人残って残業。
今がチャンスだ。
私は意を決して、先輩に話しかける。
「あ、あのっ、私に骨を折らせてください!」
……めっちゃ引いてる。おかしいな。
「先輩のために骨を折りたいんです!」
「……君、隣の部署の子だよね? えっと、骨は折ってほしくないかなー……」
「どうしてですか? 折らせてください!」
残業続きで大変そうな先輩のために、私が骨を折ろうと、その機会をくださいと、神社でお祈りまでしてきたのだ。
たとえ拒否されても、ここで折れるわけにはいかない――
「……なんだ、俺を連日の残業から助けようと思ってくれたのか。取り違えてごめんね」
言葉がすれ違い、私の思いを正しく理解してもらうのには、だいぶ骨が折れた。
「わかってもらえてよかったです」
「じゃあ、お言葉に甘えて、お願いするかな」
「ええ!」
よかった、これで先輩を残業地獄から解放してあげられる。
私は嬉々としてハンマーを振り上げた。
