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偏平足和紙【毎週ショートショートnote】
「私、書道、やめようかなって」
「なんで?」
「私の字、下手だもん。べったりしてて起伏がないって、みんな言ってる」
「そんなの、気にしなきゃいいよ」
書道教室の息子で、筆圧の強弱も操って端正な字を書ける彼が引き留めてくれても、むしろみじめになるだけだ。
「いいの、本当だし。自分でも思うもの、偏平足の自分の足みたいな字だって」
「そんなことない。丁寧で堂々とした筆遣いだってことだよ」
「……そんなに優しくしないでよ」
私は拒絶するように言い放つ。
気づいているのだ。半紙のように繊細に整った顔立ちの彼が、何かと私を気にかけてくれるのが気に入らなくて、陰口をたたかれているってことも。
「同情なんて、いらない」
「同情なんかじゃない。好きなんだよ、君の字も――君のことも」
真っすぐな瞳に私はたじろぐ。
でも、偏平足の私じゃ、和紙のような彼には釣り合わない――
「むしろその偏平足で顔を踏んでほしい」
同情じゃなくて劣情だった。
墨ぶっかけてやろうか。
