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控えめな豪奢チャッツワース、最後に灯った温かな宿 No.15 イギリス旅

朝は快晴だったのに、今は冷たい雨。
ハウス入口には簡易の荷物預かり所があり、最小限にまとめたバックパックを預ける。
トレンチコートに、水筒と財布、スマホだけ。身軽になって見学開始。

館内はクリスマス仕様。暖色の照明に、豪華さよりも洗練された上品さが漂う。
大広間には大きなクリスマスツリー、中央階段には赤い絨毯。窓辺には松の枝やフェルトの小さなネズミ——可愛らしさも忘れない。

大広間
小さなネズミ

舞踏室のような空間では、天井から幻想的なクリスタルボール。
そこでも人々は思わず「わあ」と声を上げる。

……が、そこに現れたのが「一生映えを追い求める中国人女性ペア」。
占拠と撤退を繰り返しながら撮影を続け、正直かなり目立っていた。

その後、小さな一室には花束と静電気のマジックボールが置かれていて、少し触ってみると意外と楽しい。
芸術作品が並ぶ長い回廊を抜けると、彫刻展示室にたどり着く——帰国後に『プライドと偏見』を見返してからようやく気づいたのが、ここはまさに、エリザベスがダーシー家を訪れた際に見学していた彫刻展示の部屋だった。彼女が物思いにふけりながら見つめていたダーシーの彫刻胸像が置かれていた場所だった。
さすがに今置いていないだが。
映画と同じルートと角度で写真が取れたらよかったが、事前に復習してこなかったことに後悔しかない。

彫刻室

奥へ進むにつれて外はすっかり薄暗くなり、館内もクリスマス用の控えめな装飾照明だけが頼りになる。雰囲気はとても良いのだが、展示品そのものをじっくり味わうには少し物足りない。
クリスマス特別仕様の装飾は確かに丁寧で美しく、春夏の陽光あふれる季節にもう一度来たいと強く思った。

それに、映画の中で一瞬だけ映る噴水のシーンもある。建物のすぐ前にあるものだと勝手に思い込んでいたが、実際にはかなり離れた場所にあった。

森のエリアへ向かうと、待望の生垣迷路。
背丈ほどの高さの緑の生垣が壁のように整えられ、まさに想像していた通りの迷路だ。
入口で嬉々として動画を撮り始めたものの、わずか3分で出口に到着……。
中央の花壇を目指して彷徨い、子どもたちと一緒に生垣の穴をくぐるという、想定外の攻略法で花壇へ辿り着いた。
しかし私の記憶にある、美しく整えられた生け垣の迷路は、ここではなく、映画にも出ていない。いったいどの作品の記憶だろう。「男女の主人公が、迷路の庭園を見下ろす高台で向かい合い、静かに見つめ合う」のようなシーンの出所ご存じの方、ぜひ教えてほしい。

庭園を一通り見終え、素朴な動物ファームを覗き、16時にようやく食事にありつく——言うまでもなく、この日も昼食抜き。
飲食の選択肢が少なく、軽食を提供するカフェも、ケーキやスイーツ以外はほぼ売り切れ。
カフェインが苦手の私は、寒さに負けホットチョコレートを購入。ヨーロッパに来ると飲めるのはホットチョコレートだけ…
9.5ポンドを奮発してドイツ風ソーセージのホットドッグも購入——どんだけドイツが好きなの…
体が温まり、幸福感が戻ってくる。

クリスマス特別のライトアップは17時開始だが、外がようやく暗くなり始めたのが17時過ぎ。
「天国の階段」は、芝生の中に続く数十メートルの上り階段に、蛍のように瞬く青いLEDライトが仕込まれる物。岩山エリアには先端が光るLEDライトの帯が設置され、風に揺れて草むらに咲く花のように見える。

天国の階段

迷路エリアでは左右からライトを当て、交響楽が流れ、少し不気味で厳かな空気を漂わせていた。
全体的に派手ではないが、控えめで確かな華やかさ。「控えめな豪奢」というイギリスの印象に、実によく合っていた。

脇の林は赤、黄、緑、青とカラフルな照明に照らされているが、美しいというよりどこか神秘的で、ハリー・ポッターの魔法世界を思わせる雰囲気だった。

ちょっと怖いかも

18時を目指して荷物を取りに戻ると、正門はすでに閉まっていた。
通りがかったスタッフが扉を開けてくれ、守衛室の隅に残っていた私のバックパックを指差す。
……残っていたのは、私のものだけ。

バスで夜のホテルに向かう。
複数路線のバスがここを通るうえ、一方通行のため往復とも同じ場所に停まる。行き先は車体前面のLED表示で判断するしかない。
午前中の「ルート変更事件」が頭をよぎり、Google先生の案内が間違っていないか、表示された地名と実際のバスを何度も照らし合わせていた。
途中、Sheffield行きのバスに多くの人が乗り込んだのを見て、このバスはホテル近くを通るかなと不安になり、運転手さんに確認すると、「俺は駅行きだよ、君は逆方向だからここで待ちな」と親切に教えてくれた。感謝、感謝。

念願のバスが来て、念のため再度運転手さんに確認したら、逆に緊張を招く結果に。白ひげの運転手は、私のスマホ画面を見て、「この場所(バス停)は知らないな」と言う。
……えっ? さっきの運転手さんは知ってたのに?
とはいえ、これが最終便。選択肢はなく、「このまま乗って様子を見ます」と伝えると、「OK」とだけ返された。
バスは地図の青い線に沿って、田園地帯をくねくねと進む。
——ルートは合っている、よし。
5分ほどで黄色く灯るバス停が見え、人が待っているのを確認。ここで降りたいと告げ、支払い方法を尋ねると、運転手は手を振って「It’s OK」。
少し苛立った様子で「ここはPisleyだろ? 最初からPisleyって言えばよかったんだ」と言われる。
いやいや、バス停の名前は違ったよ……どうやら運転手たちは、日々走っているバス停の正式名称を把握していないかも。

宿の温かな灯りが見えて、安心した瞬間、暗闇で思い切り転倒。街灯もなく、道端が凍っていることに気づかなかった。膝が痛い。

スタッフの青年は親切で、部屋は木枠の窓と木製の机、典型的な英国田舎の宿。バスルームは清潔で暖かく、衣類やタオルを乾かせるヒーターラックまで備え付けられている。

「贅沢」な1人部屋

ネスプレッソ、デカフェの紅茶、ビスケット。幸福のハードルが一気に下がる。
とくに地元産のチョコレートビスケットは本当に美味しい。今でも、あの濃厚なバターと純粋なカカオの味を思い出す。あの時フロントで買って帰ればよかったと本気で思う。

ベッドに腰掛け、初めて現地のテレビをつけると『ビッグバン★セオリー』。
即席のミルクティーとビスケットを手に、ようやく長い一日が終わった。

マッグを盗みたいぐらい

この一泊200ポンドは、今回の旅で唯一の贅沢。
翌日は、ピークディストリクトの風景を見る。それだけを楽しみに、眠りについた。


※このイギリス旅の交通や宿、注意点を下記記事にまとめました。
1日目の例はご覧可能ですので、
実用的な情報を詳しく知りたい方は、お気軽にお開きください。


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