【掌編】 雨の夜、隣で眠った男/シロクマ文芸部
雨宿りのつもりで傘を差し出すと
黒猫はそれを拒み足元にしがみついた。
おかげで人が食べるスナック菓子みたいな
キャットフードまで買わされるはめになった。
えさと寝床にありついて安心したのか
ソファーで丸くなりつぶらな瞳は見えなくなった。
小さい身体が寝息に合わせて膨張を繰り返している。
昨夜のフランス映画の続きを見ながら
名前はノアルにしようと思いついた。
人生で初めて付けたその名前を
目を覚ましたら呼んであげようと思ったが、
朝になってみると姿が消えていた。
今日から出社していた新入社員がそばに来て、
よろしくお願いしますと恭しく頭を下げる。
好きな食べ物はキャットフードでしょ。
趣味はフランス映画を見ることだったりして。
どうしてそれをと驚いた顔に
昨夜の健気な寝顔が思い出される。
しっかり働くんだよ、
ノアルくん。
