実務家パウエルの死闘—パンデミックの嵐と、蘇った「インフレの亡霊」【FRB議長列伝⑤】
(※前回の記事:【FRB議長列伝④】ジェネット・イエレン編はこちら)
ボルカーが「インフレ」を殺し、グリーンスパンが「バブル」と踊り、バーナンキが「崩壊」からの「再生」を未曾有のマネーで埋め尽くす。そして
膨れ上がったFRBのバランスシートを「正常化」させるという困難なバトンは、ジャネット・イエレンを経て、第16代議長ジェローム・パウエルへと託されました。
しかし、彼を待ち受けていたのは、平穏な正常化への道ではなく、100年に一度の疫病と、40年ぶりに蘇った「インフレの亡霊」との果てしない死闘でした。
1. 異端の「経済学の学位を持たない」FRB議長
-ウォール街を知り尽くした実務家
歴代のFRB議長、特にアラン・グリーンスパン、ベン・バーナンキ、ジャネット・イエレンは皆、経済学の博士号(Ph.D.)を持ち、象牙の塔でマクロ経済の複雑なモデルを研究してきたトップクラスの「学者」たちでした。
しかし、第16代議長ジェローム・パウエルは全く異なる経歴の持ち主です。彼は経済学の学位を持たない弁護士であり、名門投資銀行ディロン・リードや、世界有数の未公開株(PE)投資会社であるカーライル・グループで巨万の富を築き上げた、生粋の「ウォール街の実務家」でした。
FRB議長として経済学博士号を持たない人物が就任するのは、実に約40年ぶりのことでした。
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