焼きすぎた話(完全版)

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(1)その男、省略し過ぎにつき

焼く︰火を当てて燃やす、データを記録する
類語︰燃やす、焦がす、書き込む
比喩︰やきもちを焼く、世話を焼く、手を焼く

職場、アルバイト、サークル、ゼミなど所属するコミュニティだけで通じる独特な言葉遣いや言い回し。そのことに気づかず、あるいは気をつけていても癖でつい使ってしまった。そんな経験はないだろうか?

学生の頃、バイト先の某大手学習塾での話。ここの教室長にかかれば、この「焼く」という言葉、全く別の熱を持ち始める。


「明日の保護者会用に20部コピっといて。」
コピる→コピーする
これはいい。現代日本語の範疇だ。

「日曜、もんぱい行ける人ー?」
もんぱい→校門前配布
いわゆる業界用語。
これもまあ、分かる。

問題は、次だ。
ある日の夕方に彼が放った一言。 
「三田クーン、明日の授業後、1F奥の教室空けといて。最水の飯田さんと本Bの小林くん、焼くんで。」
焼く→…ん?
バーベキューでもすんの?いや、これも業界用語か?でも他の先生が使ってるのを聞いたことないな。

これは、本人に確認するしかない。
そう思った僕は担当直入に聞いてみた。
「室長、焼くってどういうことですか?」

「あぁ、まぁ気合い入れるってこと。あいつら最近たるんでるから。」

「その言葉、普段から使ってます?他の先生方から聞いたことありませんけど。」

「どうだろ、あんま気にしたことないな。まぁ、意味は通じたでしょ?」

つまりこういうことだ。
厳しく指導する→焼きを入れる→焼く

…室長、初見じゃ分かりませんよ。
言葉を研ぎ澄ませた結果なのか、ただ削りすぎて芯がなくなったのか。
彼の担当科目は「国語」であった。


(2)言葉を煮詰めたその先に

厳しい︰厳格でゆるみを許さないさま
対義語︰甘い、緩い、寛大な
使い方︰厳しいご指摘を頂いた

汎用性の高い言葉といえば、何を思い浮かべるだろうか。 
「どうも」「すいません」「やばい」。
このあたりが現代日本語の三種の神器だろう。
だが、焼きすぎる教室長にかかれば、「厳しい」という形容詞が、あらゆる感情と事象を飲み込むブラックホールへと変貌を遂げる。

ある雨の日、
「ジメジメして、本格的に梅雨入りですね」
「キビシーよ」

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