じんせいかきいろの観た映画感想文「機動警察パトレイバー EZY File1」(ネタばれあり〼)帰ってきたのはイングラムか、それとも特車二課の日常か
はじめに
5月下旬、公開初日に観てきました、シリーズも履修済みです。
最初に感じたのは、これは完全に新しい別物としてのリブートではなく、旧作の時間の先にある『パトレイバー』だった、ということです。
もちろん、主人公たちは新しい世代です。
舞台も2033年。
レイバーを取り巻く社会も、AIや自立型ロボットへの移行が進んだ時代になっています。
けれど、そこにある空気は、確かに『パトレイバー』でした。
巨大ロボットが派手に戦う作品というより、街があり、警察があり、現場があり、隊員たちがいて、そこで少し変な事件が起きる。
そして、その事件に特車二課が出動する。
その“日常の中にレイバーがいる感覚”こそが、やはりパトレイバーらしさなのだと思います。
今回のFile 1は、長編映画というより、約25分前後のエピソードを3本まとめて劇場で観る構成に近いものでした。
その意味でも、初期OVAやテレビシリーズのように、1話完結の積み重ねで新しい第二小隊の空気を立ち上げていく作品だったと感じました。
本予告
まずは公式予告です。
新しい特車二課、2033年のレイバー社会、そしてAV-98Plus イングラムの姿が確認できます。
あらすじ
1990年代末、テクノロジーの急速な発展とともに、あらゆる分野に進出した汎用人間型作業機械〈レイバー〉。
しかしそれは、レイバー犯罪と呼ばれる新たな社会的脅威をも生み出すことになった。続発するレイバー犯罪に、警視庁は本庁警備部内に特殊車両二課を創設してこれに対抗した。通称、特車二課パトロールレイバー中隊「パトレイバー」の誕生である。
そして、時は流れ──。
労働人口減少の一途を辿る2030年代の日本は、AI技術による自動化が進んでいた。
かつて最先端技術だった〈レイバー〉は、社会基盤を支える一部として定着。
人が搭乗するスタンドアローン型の〈レイバー〉は、自立型ロボットへの代替が進み、もはや時代遅れとなりつつあった。
だが時代が変わろうとも、特車二課の仕事は変わらない。人と街を守ること。
第二小隊は旧式98式AVイングラムをチューンナップした”AV-98Plus イングラム“とともに、知恵と勇気で新たなテクノロジー犯罪に立ち向かう。
公式のIntroductionにもある通り、『EZY』の舞台は2030年代の日本です。
レイバーは社会基盤を支える存在として定着している一方で、有人搭乗型のスタンドアローン型レイバーは、自立型ロボットへ代替されつつある時代になっています。
そんな中で、特車二課第二小隊は、AV-98イングラムを改修したAV-98Plus イングラムを運用しています。
この設定が、とても面白いと思いました。
かつて最新鋭だったイングラムは、2033年では決して新しい機体ではありません。
むしろ、時代の流れからすれば旧式に近い存在なのかもしれません。
けれど、そのイングラムを改修し、現場で使い続けている。
ここに『EZY』の大きなテーマがあるように感じました。
つまり本作は、単に「イングラムが帰ってきた」という懐かしさだけの作品ではありません。
自立型ロボットの時代に、なぜ人が乗るレイバーがまだ必要なのか。
そのレイバーを扱う特車二課は、2033年にどう存在しているのか。
File 1は、その問いの入口だったと思います。
総評
『機動警察パトレイバー EZY File 1』は、新しい第二小隊の顔見せでありながら、旧作の時間が確かに流れた先にある作品でした。
観る前は、シリーズとの距離感をどう取る作品なのかが気になっていました。
完全なリブートなのか。
旧作の設定を借りた別物なのか。
それとも、旧作と地続きの未来なのか。
実際に観てみると、これはかなりはっきりと、旧作と地続きのパトレイバーでした。
パンフレットに掲載されていた「パトレイバー・マルチバース年表」も、そこを補強してくれます。
漫画版、テレビ版、初期OVA版、劇場版など、複数のパトレイバー世界の出来事を整理したうえで、2033年の項目に『EZY』が置かれている。
つまり『EZY』は、過去作をなかったことにした完全なリセットではありません。
これまで積み重ねられてきた「レイバーのある社会」の先に置かれた、新しい時代の物語として作られているのだと思います。
そしてFile 1では、大きな陰謀や壮大な事件を一気に描くのではなく、EPISODE #01から#03までの3本を通して、新しい第二小隊の仕事と空気を見せていきます。
この構成は、かなりパトレイバーらしいと感じました。
パトレイバーは、世界を救う巨大ロボットものではありません。
街の中で、社会の中で、警察組織の中で、働く機械と人間がどう関わるかを描く作品です。
その意味でFile 1は、まず「2033年にも特車二課は存在している」ということを、事件の積み重ねで見せる導入編だったと思います。
そして個人的に強く感じたのは、『EZY』がただ昔からのファンに向けて懐かしさを並べた作品ではなかった、ということです。
もちろん、旧作を知っている人ほど反応できる要素はたくさんあります。
年齢を重ねた太田と進士の登場、遊馬の存在への言及、零式後継機の扱い、そして「特車二課」という場所の空気。
シリーズを追ってきた人に向けた作品愛は、随所に感じられました。
けれど同時に、本作は今の時代の観客にも楽しめるように作られていたと思います。
2033年という時代設定。
AIや自立型ロボットへの移行が進む中で、あえて有人レイバーを使い続ける第二小隊。
ドローンや更新されたコックピット、現代的なレイバー運用の見せ方。
そうした要素によって、『EZY』は単なる懐古作品ではなく、今の時代にもう一度パトレイバーを立ち上げようとしている作品に見えました。
つまり本作は、昔から応援してきたファンに対しては「これまでのパトレイバーを大切にしています」と示しつつ、初めて触れる人に対しても「これが今の時代の特車二課です」と差し出している。
その意味で『EZY File 1』は、シリーズの最大公約数に向けて、かなり誠実に作品愛を示した導入編だったのではないでしょうか。
旧作の記憶を否定しない。
けれど、旧作の再現だけにも閉じこもらない。
そのバランスを取ろうとしていること自体に、私は好感を持ちました。
File1の基本的な流れ
File 1は、EPISODE #01、EPISODE #02、EPISODE #03の3本で構成されています。
長編映画として一本の大きな物語を見せるというより、約25分前後のエピソードを3本積み重ねながら、新しい第二小隊の空気を立ち上げていく作りです。
この構成自体が、初期OVAやテレビシリーズの呼吸を思わせます。
大事件だけでなく、日常の仕事、妙なトラブル、隊員たちの癖、そして現場の空気を見せていく。
そうした短編の積み重ねで世界観を作るのは、やはりパトレイバーらしいところです。
EPISODE #01「トレンドは#第二小隊」
EPISODE #01は、新しい第二小隊の顔見せとして機能するエピソードでした。
保育園で啓発活動を行っていた第二小隊に出動命令が下り、クリスマスイベント用にレンタルされた雪だるまレイバーが暴走する、という流れです。
いきなり国家規模の危機が起きるわけではありません。
地域イベント、商店街、広報活動、暴走レイバー。
この規模感がとてもパトレイバーらしいです。
特車二課にとって、広報活動も大切な仕事であり、街の中で起きる少し困った事件に対応することもまた仕事です。
巨大ロボットがいるのに、やっていることは妙に地に足がついている。
このアンバランスさが、やはりパトレイバーの味だと思います。
そして、このエピソードで個人的に大きかったのが、シバシゲオ、いわゆるシゲさんの存在でした。
新しい第二小隊の物語でありながら、EPISODE #01の時点でシゲさんが登場することで 、『EZY』が旧作の空気を完全に断ち切った作品ではないことが伝わってきます。
イングラムを動かすのは、パイロットだけではありません。
整備する人間がいて、現場を支える人間がいて、ようやく特車二課は動きます。
その意味で、シゲさんがいることはかなり大きいです。
イングラムという機体だけでなく、整備班の文化や現場の匂いもまた、2033年に受け継がれているように感じました。
また、2033年版のイングラム周りも見どころでした。
旧式のイングラムをただそのまま出すのではなく、AV-98Plusとしてアップデートされている。
整備班が扱うドローンや、コックピット周りの現代的な更新など、時代が進んだことも細かく見せてくれます。
この第1話でまず見えたのは、懐かしいイングラムではなく、2033年の現場で使われているイングラムでした。
そして同時に、シゲさんの存在によって、そこには確かに旧作から続く特車二課の匂いも残っていました。
新しさと懐かしさ、その両方を最初のエピソードで見せてくれたのが、EPISODE #01だったと思います 。で使われているイングラムでした。
EPISODE #02「閑中妄あり」
EPISODE #02は、事件がない時間を使って、隊員たちの性格や職場感を見せる回でした。
年明けの特車二課。
大きな事件もなく、緊張感もあまりない。
そんな中で、十和が暇を持て余し、妄想を日誌に書いていく。
この“暇な特車二課”という空気が、かなり良かったです。
パトレイバーは、常に大事件が起きている作品ではありません。
むしろ、何も起きない時間、だらっとした会話、隊員たちの余計な妄想、そういう部分に特車二課らしさがあります。
そしてこのエピソードでは、妄想の中に旧作ファン向けの要素も差し込まれていました。
特に印象的なのは、謎の暴走レイバーの存在です。
パンフレットによれば、それは劇場版第1作に登場した零式の後継機にあたる存在とのこと。
しかも現実の事件ではなく、妄想内に登場させるあたりが、重すぎない旧作リスペクトとしてとても上手いと感じました。
旧作を知っている人は思わず反応できる。
でも、知らない人にとっても「妙に強い謎のレイバー」として楽しめる。
この距離感はかなり良かったと思います。
EPISODE #03「ホンモノが一番」
EPISODE #03は、特撮時代劇の撮影現場を舞台にしたエピソードです。
リブートされた映画の撮影現場に、実物大プロップとして改造された土蜘蛛レイバーが登場する。
そこに第二小隊が警備担当として関わり、やがて現場は混乱していきます。
この話で面白かったのは、「ホンモノが一番」というタイトル通り、実物へのこだわりが事件を呼び込むところです。
特撮の現場、巨大なプロップ、火気厳禁のはずの撮影、暴走するレイバー。
現実と虚構が入り混じる舞台で、第二小隊がどう動くかを見せる回でした。
そして、ここでシリーズファンとして大きかったのが、年齢を重ねた太田と進士の登場です。
これはかなり意味があります。
『EZY』は完全なリブートではなく、旧作の時間の先にある作品なのだと、ここで強く感じられました。
かつての第二小隊の隊員たちが年齢を重ね、その先の時代に新しい第二小隊がいる。
この時間の流れが、ただのファンサービスではなく、作品世界の奥行きとして効いていたと思います。
パンフレットでは、遊馬の存在についても触れられていました。
File 1では出番こそありませんが、旧作キャラクターたちの時間が完全に止まっているわけではない。
それぞれが年齢を重ね、それぞれの場所で生きている。
ここはシリーズファンとして、かなり胸に来るポイントでした。
シリーズとの繋がり
『パトレイバーEZY』を見るうえで、やはり気になるのは旧作との繋がりです。
ただ、私は今回、あまりシリーズの固定観念に囚われすぎないように観ようと思っていました。
野明ならどうだったか。
遊馬ならどう言ったか。
後藤隊長ならどう動いたか。
押井守監督作品ならどうだったか。
そうした比較は、もちろんしたくなります。
それだけ旧作の存在が大きいからです。
けれど、新しい作品を見る時に、過去作の採点表だけを持ち込むと、今作の良さを拾い損ねてしまうかもしれません。
なので今回は、まず『EZY』が一つの新作として、どんな特車二課を見せようとしているのかを大事に観ました。
そのうえで言うと、本作は懐かしさだけの作品ではありません。
けれど、旧作と切り離された別物でもありません。
パンフレットの「パトレイバー・マルチバース年表」によって、漫画版、テレビ版、初期OVA版、劇場版といった複数のシリーズの歴史が整理され、その先に2033年の『EZY』が置かれています。
これはかなり大きいです。
『EZY』は、旧作のどれか一つだけをそのまま継承するというより、パトレイバーという作品群が描いてきた「レイバーのある社会」を踏まえたうえで、その先の時代を描いているように見えました。
2033年。
レイバーは社会基盤の一部として定着している。
その一方で、有人搭乗型のスタンドアローン型レイバーは、自立型ロボットへ代替されつつある。
そんな時代に、第二小隊はAV-98イングラムを改修し、AV-98Plus イングラムとして運用している。
この設定が非常に良いと思いました。
かつて最新鋭だったイングラムが、今では旧式に近い存在になっている。
けれど、それでも現場には必要とされている。
『EZY』のイングラムは、ただ帰ってきたヒーローロボットではありません。
時代に取り残されかけた有人レイバーを、それでも現場で使い続けるための存在です。
そこに、新しいパトレイバーとしての面白さがあります。
また、File 1は大きな本筋を急いで進めるのではなく、1話完結のエピソードを重ねながら、新しい第二小隊を立ち上げる構成でした。
この作りは、初期OVAやテレビシリーズ的なパトレイバーの呼吸を思わせます。
街で起きる小さな事件。
暇な職場。
妄想。
撮影現場のトラブル。
そして、そこにレイバーが関わってくる。
パトレイバーは、巨大ロボットが世界を救う作品ではなく、社会の中にレイバーがあることで生まれる面倒ごとを描く作品でした。
『EZY File 1』は、その原点をかなり大事にしていたと思います。
そして個人的には、ここに今作の誠実さを感じました。
『EZY』は、今まで応援してきたファンに向けては、太田や進士、遊馬への言及、零式後継機、特車二課という場所の空気を通して、「あなたたちが愛してきたパトレイバーを忘れていません」と示してくれています。
一方で、今の時代の観客に向けては、2033年のレイバー社会、AIや自立型ロボット、ドローン、アップデートされたイングラムの運用を通して、「これは今見る新しいパトレイバーです」と差し出している。
旧作ファンだけを見ているわけでもなく、新規の観客だけに寄せているわけでもない。
その両方へ向けて、最大公約数の作品愛をかなり丁寧に示してくれた作品だったと思います。
新しい第二小隊は、まだ始まったばかり
もちろん、File 1だけですべてを判断するのは早いと思います。
今回の3本は、新しい第二小隊の顔見せとしての役割が大きいです。
十和や桔平たちがどういう人物なのか。
2033年の特車二課がどういう空気なのか。
AV-98Plus イングラムがどう運用されているのか。
まずはそこを見せる導入編でした。
その意味では、File 1は「完成された大作」というより、これから始まる新しいパトレイバーの土台作りだったと思います。
だからこそ、File 2以降で、この新しい第二小隊がどこまで自分たちの物語を持てるのかが大事になりそうです。
旧作の時間と地続きであることはわかりました。
では、新しい第二小隊は、旧作の影の中にいるだけでなく、自分たちの時代の特車二課になれるのか。
ここが、これからの見どころになると思います。
終わりに
『機動警察パトレイバー EZY File 1』は、旧作の懐かしさに寄りかかるだけの作品ではありませんでした。
もちろん、旧作を知っている人ほど反応できる要素はあります。
年齢を重ねた太田と進士の登場、遊馬の存在への言及、零式後継機の扱いなど、シリーズファンに刺さる部分も多いです。
けれど、それだけではありません。
2033年という時代。
社会に定着したレイバー。
自立型ロボットへ代替されつつある有人レイバー。
それでもAV-98Plus イングラムを運用する第二小隊。
その設定によって、『EZY』は新しい時代のパトレイバーとして立ち上がろうとしていました。
そして何より、今の時代に観る人にも楽しめるようにしながら、これまで応援してきたファンにもきちんと作品愛を示してくれたことが嬉しかったです。
File 1は、長編映画というより、3本のエピソードを通して新しい第二小隊の空気を見せる導入編です。
大きな事件よりも、街の中にあるレイバー、職場としての特車二課、そして旧作から流れてきた時間を感じる作品でした。
帰ってきたのは、イングラムだけではありません。
特車二課という、少し変で、少しゆるくて、それでも現場に向かう場所。
その日常が、2033年にもう一度動き出したのだと思います。
File 2、File 3で、この新しい第二小隊がどこまで自分たちの物語を見せてくれるのか。
旧作の記憶を大切にしつつも、まずは『EZY』という新しいパトレイバーを追いかけていきたいと思います。
以下の方々におすすめです。
・『パトレイバー』シリーズが好きな方
・特車二課という職場の空気が好きな方
・ロボットと社会がつながる作品が好きな方
・旧作の時間の先を見届けたい方
・新しい第二小隊の始まりを追いかけたい方
それではまた、次の映画で。

