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やれないものが、増えてきた。

こまゆの日記

昔より、できることは増えた。
でも、やれないことも、増えてきた。

…というか、「やれないもの」が、ふえてきた。



もともと、わたしは“できないこと”のコンプレックスが大きかった。
「またできなかった」って胸がしぼんで、
人の笑顔に、少し怯えて、
うまく呼吸ができないときもあった。

でも、そこで止まるのが怖くて。
手を伸ばし続けるしかなかった。
必死になって、ひとつずつ掴んでいった。

そうしているうちに、
いつの間にか“できる”が増えていた。
「こまゆさん、やっぱりすごいですね」なんて言葉に、
あの日の怯えが少しだけ救われるような気がしていた。

でも──

できるようになったのに、
やれないものが増えてきた。



気分の問題かと思ったら、ちがった。
これは、気持ちの問題だった。

「納得できてないこと」に体が動かない。
「意味がズレてるな」と思うことに、意識が入らない。
「それ、ほんとに大事?」って問いかけながら、止まってしまう。

──たぶんこれは、“ズレに気づいてしまった人”の、かなしみ。
でも、たぶんそれは、“やさしさのはじまり”



できるけど、やれない。
やれそうだけど、やりたくない。

その手前で止まってしまう自分に、
「ダメだな」って思ってた。

でもね、ちがった。
それってきっと、『誠実な拒否』だったんだ。

心がうごかないものに、体をうごかさないのは、
ちゃんと生きてる証だ。



だから今、私のまわりには、
「やれないもの」が、たくさん転がっている。

前みたいに無理して拾って、
「だいじょうぶなふり」をして進むことは、
もう、しないでおこうかな。

だって、
その「やれなかったもの」たちのことを、
今、こんなふうに考えてる自分がいるってことは──

それってきっと、
「考えたかった何か」だったんじゃないかな、って思うから。



うまく生きられなくてもいい。
ちゃんと感じて、生きていたい。

「やれない」がふえた分だけ、
問いが、ふえてる。


それで、いいかな。



⭐︎
このnote記事は作者の気持ちを、
小説『仮囲いの向こう側』に登場する「薬守こまゆ」に語らせた、創作風エッセイです。

あなたにも、“やれないままの気持ち”って、ありますか?
そんな気持ちに、少しだけやさしくなれる夜がありますように。



📚 本編はこちら → 仮囲いの向こう側|TALES



✍️ スピンオフ短編も同時進行中|TALES


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