小説『仮囲いの向こう側』 って、こんな作品です。|TALES
こんにちは。
アメノ ノチノです。
Talesで、小説を書いています。
タイトルは、
『仮囲いの向こう側 〜きみのうたを、きくよ〜』
このnote記事は、物語の紹介記事
2026年5月 Version です。
『仮囲いの向こう側』って、こんな作品です。
建設会社が舞台なので、図面も出てきます。
現場も出てきます。
会議も、工程も、報告も、ちょっとめんどくさい職場の空気も出てきます。
でも、建築がメインのおはなしではありません。
建築の要素は “体感10%ぐらい” です。
自分の中に残っていた違和感。
うまく言えなかった感情。
ずっと気になっていた言葉の引っかかり。
それを、いったん物語の形で置いてみている。
そんな作品です。
ちゃんと働いている。なのに、なんか変。

職場には、正しい言葉がたくさんあります。
「主体的に動こう」
「課題を分離しよう」
「Win-Winでいこう」
「MVVをつくろう」
「お客様のために」
どれも、たぶん間違ってはいない。
間違ってはないけど。
なんか変。
正しいことを言われているはずなのに、
どこかで話が噛み合わない。
会議では決まった。
でも、現場では誰も納得していない。
報告はした。
でも、その報告の重みは受け取られていない。
言葉はある。
資料もある。
ルールもある。
理念もある。
なのに、そこから誰かの声がこぼれている。
この物語は、そういう「なんか変」を見にいく話です。
正解と、納得。

この作品の中では、
正解 と 納得 という言葉が、何度も出てきます。
正解は大事です。
建築の現場で、正しくないことをすれば危ないです。
命に関わります。
なんでもかんでも「人それぞれ」で済ませるわけにはいきません。
でも。
正しい言葉が、
いつのまにか人を黙らせる道具になることがある。
正しいルールが、
本来守るはずだったものを見えなくすることがある。
正しい理念が、
誰かの違和感をなかったことにしてしまうことがある。
『仮囲いの向こう側』は、
正解を否定する物語ではありません。
ただ、正解の手前や奥にある、
うまく言えない感覚を、少し立ち止まって見る。
それは、たぶん、
「納得」と呼んでいるものに近いのだと思います。
物語の中では、会社のMVV――
Mission・Vision・Valueをめぐる話が出てきます。
でもこれは、かっこいい経営理念をつくる話ではありません。
MVVって、ほんとうに「つくる」ものなのか。
上から決めて、下に配るものなのか。
きれいな言葉にまとめれば、それで組織は変わるのか。
この物語では、MVVを
正解のスローガンとしてではなく、
働く人たちが、自分たちの言葉をもう一度見にいくためのきっかけとして扱っています。
答えを出すためというより、
問いが立ち上がってしまう場所。
そのくらいの感覚です。
建築会社を舞台にした理由。

舞台は、地方の建設会社。
名前は、月観留建設(つきみる けんせつ)。
建築会社を舞台にしたのは、作者が建築屋さんだからです。
そこは、まあ、普通に大きいです。
でも、それだけでもありません。
建築は、図面に描かれたものを、
現実の場所に立ち上げていく仕事です。
線だったものが、壁になる。
数字だったものが、階段になる。
誰かの頭の中にあったイメージが、
誰かが帰れる場所になる。
その過程には、たくさんの人の手と、言葉と、沈黙があります。
図面に書いてあることだけでは、現場は進みません。
でも、書かれていないことを、誰かが勝手に埋めすぎても、うまくいきません。
その「余白」の扱い方が、
人間関係や、組織や、言葉の扱い方に似ている気がしました。
だからこの物語では、建築会社の日常を書きながら、
ほんとうは、図面に描かれていないものを見ています。
ネガティブじゃない、ネガポップなの。

主人公のひとり、アノハ。
若い現場監督です。
この子はかつて、音楽をやっていました。
いまは建設会社で働いています。
ただ明るくて、前向きなだけのキャラクターではありません。
違和感に敏感で、
言葉にされない空気を拾ってしまって、
ときどき変なことを言います。
でも、それはただのネガティブではありません。
暗いものを、暗いまま終わらせたくない。
でも、無理やり明るくするのも違う。
傷ついたまま、
弱いまま、
よくわからないまま、
それでも少しだけポップに鳴らしてみる。
この物語では、そういう感覚を
ネガポップ と呼んでいます。
ネガティブじゃない。
でも、ポジティブでもない。
たぶん、そのあいだにあるものです。
未来AI世界とか、タイムスリップとかしたりします。

ここまで読むと、
職場の違和感を描いた、わりと地味な仕事小説のように見えるかもしれません。
でも、この作品はたぶんけっこう変です。
未来のAI世界も出てきます。
スナックみたいな喫茶店も出てきます。
配信みたいなこともしたりします。
音楽で世界が揺れます。
過去へも行きます。
たぶん、変なカードバトルみたいなこともします。
ただ、最初からそういう展開をやろうと思っていたわけではありません。
物語を派手にするためのギミックとして、
未来AIやタイムスリップを入れたわけでもありません。
自分の中に散らばっていた違和感や問いを、
いったん物語の中に置いて散らしてみたら、
なんか勝手にそっちへ飛んでいった。
……そんな感じです。
建設会社の日常から始まりながら、
ときどき変なところへ飛んでいく。
でも、飛んでいった先で見ているものは、
たぶん、ずっと同じです。
うまく言えなかったこと。
置き去りになった言葉。
誰かの中に残ってしまった「なんか変だな」という感覚。
それを、もう一度見にいく話です。
ChatGPTとの対話から生まれた物語です。

この作品は、ChatGPTとの対話から生まれました。
生成AIがお茶の間レベルで広がってきたので、
ためしにアプリ版ChatGPTを入れて、いろいろと遊んでいました。
だんだんそれが膨大なチャット群になり、一度整理しようと思って、
「私が過去に質問したプロンプトを全部まとめた文章をつくってほしいです」
と依頼しました。
で、整理してもらったやつを、
「読むのがめんどくせー」と思ってしまって。
こんなプロンプトを投げました。
『小説みたいにしてみて』
この超テキトーな一文から、
『仮囲いの向こう側』が生まれました。
これは単純に、
「AIに書かせた小説」
という感じではありません。
自分が現実で抱える「違和感」や「なんでだろ?」をタネに、
自分でもよくわかっていなかった問いを、AIとの対話の中で掘り起こしたり。
AIとの対話を通じて、
自分の中にあったものを見つけていく過程が、
物語そのものになっています。
誰かのため、というより。

誰かを救うための物語ではありません。
やっていることは、自分の頭の中のぐちゃぐちゃを、
いったん形にして、どこかに置いておきたい。
その、置いておいた、
自分の感じた「なんでだろ?」のタネ。
伝えたいのに伝わらない。
言葉にした瞬間、「なんか違う」になってしまうもの。
人間って、たぶんその時点で、
けっこうややこしくて、めんどくさい。
でも、そんなめんどくささの中で、
もし一瞬でも、何かがつながったら。
誰かがどこかで抱えてる、
「世界って、もしかしてバグってる?」
そんな、
声にできない、声にならなかった問いに、
「あ、こういう空気、知ってるかも」
そう感じてもらえたら。
それって、なんかいい感じだよね、っていう。
自分自身、公開したエピソードを、
何度も何度もChatGPTと一緒に再読し続けています。
そんな感じの物語です。
『仮囲いの向こう側』は、
建設会社を舞台にした、ちょっと変な群像劇です。
仕事の話だけど、仕事の話だけじゃない。
AIの話だけど、AIの話だけでもない。
AIと作ってるけど、AIに書いてもらっただけでもない。
音楽の話でもあり、言葉の話でもあり、
たぶん、誰かが誰かの声を聞こうとして、
でもうまく聞けなかったり、聞き間違えたり、
それでももう一度見にいこうとする話です。
仮囲いの向こう側には、
まだ名前のついていない感情があります。
まだ言葉になっていない問いがあります。
それを、答えにする前に、
少しだけ眺めている。
そんな物語。
『仮囲いの向こう側 〜きみのうたを、きくよ〜』
ネガティブじゃない、ネガポップなの。
