宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟の出来事をめぐる解釈
2026年春、ある声優さんと作曲家さんが相次いで空へ旅立たれたのち、銀河鉄道999を改めて見直したときから囚われている、70年代~80年代の松本零士の世界観を持つ宇宙アニメ+リメイク版ヤマトの旅ですが、いまだ抜け出せずにいます。
一番の理由は劇伴。やはり青木望さん、宮川泰さんの劇伴は、それ以降のどのアニメの音楽よりも素晴らしく、何度繰り返し聴いても飽きることのない、広大な宇宙が広がっています。他にも好きな作曲家さんはいますが、やはり青木さんと宮川さんは圧倒的。
宮川さんについては、そのご子息である宮川彬良(あきら)さんがリメイク版である2199以降の音楽を担当されており、すでに楽譜が失われていた原曲を掘り起こし、さらに壮大に作りこまれた音楽で心をわしづかみにしてきます。
船の舵を奪われ正体不明の星へ不時着するときに流れる「Shambleau」は特に秀逸な1曲。ぜひ映像と合わせてみていただきたい。
わたくし、2199本編だと、旧作にはなかったストーリーである14話「魔女はささやく」の回が非常に気に入っています。人の心が読めるジレル人が関与する話で、乗組員全員が精神攻撃をしかけられ船のコントロールまで奪われたところに、哨戒活動から戻ってきた古代と森雪が船を奪還する話です。
ジレル人はその特殊能力から迫害を受け絶滅の危機にあり、一部はガミラスのデスラーに忠誠を誓いガミラスに加担し、一部はたまたま聖地へ訪れていたため迫害の難を逃れ、ガミラスへもガトランティスへも抵抗し、星巡る方舟で登場する、彼らの聖地へこもって生き残っています。
星巡る方舟は、ヤマトがイスカンダルから地球へ帰還する途中、この迫害を逃れたジレル人が仕掛けた話。ヤマトからすると、ガトランティスから吹っ掛けられた喧嘩をきっかけにジレル人へ火の粉が飛んだ、巻き込まれ事故のような出来事です。
この話はヤマトらしくなく、むしろ銀河鉄道999にありそうな話で、戦闘シーンを好むと思われるヤマトのファン層にはささらないのか、あまり語られていないようです。なので、もう10年も前の作品でもあることですし、ここでは盛大にネタバレしつつ、特に大和ホテルの場面について、私なりの考察、いや解釈を書いていきます。
このストーリーでメインをはるのは、ヤマトの技術科員、言語学者の卵である桐生美影(以降、桐生)と、ガミラスのドメル陣営にいたフォムト・バーガー(以降、バーガー)。この二人がそれぞれジレル人に呼ばれます(怪しい女性の歌声を聴いたのはこの二人)。

https://www.cinemacafe.net/movies/25695/image/326513/
ヤマトが舵を奪われて降り立ったのは惑星シャンブロウ。液体に覆われた惑星の内部に、地球型の大気で覆われたジャングルが広がる大地が存在する二重構造の惑星。調査へ向かった古代たち(古代進、桐生美影、沢村翔、新見薫、相原義一、アナライザー)はガミラスの救難信号を受信、救難信号の発信源へ向けてジャングルを歩く途中、桐生は過去に訪れたことがあると言いだします。
そしてたどり着いた戦艦大和の外観をした大和ホテル。内部に入ると出入口をふさがれますが、このホテルも桐生は来たことがあると言います。そしてそこにいたのはガミラスのバーガー艦のメンバー(フォムト・バーガー、ネレディア・リッケ、クリム・メルヒ、ヴァンス・バーレン)。ホテルから出られないために、ガミラスとヤマトクルーによる奇妙な共同生活が始まります。

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おそらく、歩いてきたジャングルと大和ホテルは、その後航空隊の沢村が指摘したように、桐生の記憶を読みジレル人が作った世界。
桐生の記憶が利用されたのは、バーガーが戦闘で失った過去の恋人メリア・リッケ(以降、メリア)と桐生の見た目が瓜二つだったから、、とロマンティックな妄想でつなげたいところですが、この記憶操作をしたジレル人レーレライ・レール(以降、レーレライ)は、メリアと桐生が瓜二つであることを認識していないのでそんなはずはなく、桐生の記憶にあったジャングルとこの惑星を覆う森がリンクしたのかもしれません(笑)
また、同じ大和ホテルにいたバーガーたちにとっては、このホテルの外観は大和ではなかったのではと考えます。メリアの姉、ネレディア・リッケ(以降、ネレディア)に化けたレーレライと桐生が、客室のテーブルの上にあった一つの本を違う本として認識していたように。
ホテルで脱出方法を考えながら過ごしたチーム・古代とチーム・バーガーの共同生活6日目、携帯していた食料が底をついてきたころ、桐生はジレル人の言葉を聞きます。
飢えは争いを呼びさます
そのことを空耳だと信じなかった新見情報長。この人は、自身のプライドのためか、ここ一番の判断をよく誤りますね。一方で、これを信じた沢村。おそらく沢村が桐生の話を信じたことで、状況を打破する方向へ話が動きます。
バーガーはまた、ネレディアとの会話で、ここにいるネレディアが桐生とメリアが似ていることに気づいていないことを知り、本当のネレディアではないことを確信します。
一方、古代は、ガミラスの老兵ヴァンス・バーレンから、バーガーの過去を知らされ、またバーガーを支えているのがヤマトへの復讐心であることを知ります。
そして、腹をすかしてイライラが極限に達したガミラスのクリム・メルヒは、レーレライが化けたネレディアの操り人形になり、大きく話が動きだします。
ジレル人の話をレーレライが化けたネレディアとバーガーから聞いた桐生は、部屋にあったヘレン・ケラーの本を参考にして水に触れ、触覚でジレル人の伝承にたどり着くことになります。
眼は闇を映し、耳は沈黙を聞く。暗闇を真実とし、沈黙にのまれし者、お互いの疑心が自らを滅ぼす。11層目に至りし者は真の世界を見出せるであろう。
ホテルの秘密を解読した桐生は、ドアが開いたエレベーターに乗り、見た目では存在しない11階へたどり着きます。
レーレライによって作りだされるヤマトクルーとガミラスクルーの対立。バーガーは古代たちが敵であるヤマトのクルーであることを知らされるも、ネレディアが黒幕であろうと感じていたバーガーは、その銃を、対立をけしかけるレーレライが化けたネレディアへ向けます。
それに、ネレディなら俺のことはフォムトって呼ぶんだ
ガトランティスの艦隊が来たタイミングでしょうか。上空の海が割れて降りそそいできたとき、レーレライがこのホテルでの一連の出来事を明かします。ここで桐生の言語知識が大活躍します。桐生がその知的好奇心からジレルの言葉を読み上げることで儀式が成立し、惑星シャンブロウの封印が解かれていきます。
銀河に蒔かれた種、数多の種族、この地に集いて七日のち、心をひとつとなす。光輪に入りて、手を携え、同じアケーリアスの遺伝子を持つ、銀河のはらから(同胞)よ。さすれば封印は解かれ、星巡る方舟、永き眠りより、目覚めん。
要は、7日間、複数の種族が争いを起こさず過ごし、互いに手を携えることができたなら、封印が解かれ方舟が目覚める、という予言。アケーリアスが産み落とした種族へ託した希望だったのかもしれません。
レーレライは、ガミラスについていた、2199本編の14話でヤマトへ攻撃をしかけたミーゼラ・セレステラとミレーネル・リンケがしたことも知っていましたね。
古代「記憶を操作したのか。以前ヤマトにしたように」
レーレライ「それはガミラスに帰依したものの所業」
ここから先は、みなさん大好きな戦いが始まります。激熱な見どころは次の2つの場面。
①ガトランティスに対するヤマトとバーガー艦隊の共同戦線。ヤマトの左舷から浮かんでくるガミラス艦隊。これに砲撃しようとしたところを古代が止めて友軍と称したシーン、初めて地球軍とガミラス軍が共闘した場面。
②錨(いかり)を武器にしてガトランティス艦を引き寄せ、近接戦闘で撃墜する場面。イスカンダル由来の純正波動砲が無敵な武器として存在するために最終段階の攻撃がワンパターンになりやすいヤマトシリーズにあって、波動砲を使わない戦闘、しかも錨を使う戦闘は熱かったです。

https://www.animatetimes.com/news/img.php?id=1418712447&p=1&n=5
2202でキーになる、ガトランティスの巫女サーベラーもちょくちょく登場、次回以降のストーリーへの頭出しになっています。それにこの話は、珍しく古代が戦闘をリード、頼もしく描かれていていいですね。
物語後半戦の劇伴としては、ガトランティスとの戦闘に勝ったところから流れるこちらの曲をぜひ。旧作だと「ヤマトよ永遠に」で使われた「新銀河誕生」の現代バージョン。これも心に残る曲。
星巡る方舟は、各シーンにあわせて作曲したらしく、総合的な演出が高いレベルで整っているのも納得です。
ガトランティスに対して共闘したバーガーと古代は、このあと2205で再会しますね。イスカンダルで。
星巡る方舟は、オープニングとエンディングにも注目です。
オープニングでは、葉加瀬太郎のインストゥルメンタル。この出来事までに起きた2199の旅路を、葉加瀬太郎のバイオリンにのせてダイジェストで見せてくれます。これもかっこいいんですよね。
エンディングは平原綾香でGreat Harmony。旧来の宇宙戦艦ヤマトにはない完全新作ストーリー(マンガに、この元になる話があると聞きましたが)だからこそ、作れた曲かなと思います。
いい音楽は繰り返し繰り返し聴いてしまうので、今はこれを上書きしてくれる音楽を求めています。
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