『日本動物解剖図説 Illustrated Animal Anatomy 新装版』
図書館では時々かなり古い本に出会う。この本もそのひとつで、実際に手に取ったのは一九七七年に出版されたものだ。調べてみると二〇一二年に新装版が出ている。
序文に、初版は戦前の昭和十六年刊行とあり、故池田嘉平先生の監修で、当時広島文理大・高師博物会会員であった学生ら約九十名が、一年がかりで取り組ん
だことが記されていた。
タイトルどおり、日本在来生物の代表的なものを網羅し、精細な解剖のもと、正確に描いている。かなりの技術と忍耐力が求められる仕事だろう。ページをめ
くるたびに。知っている生き物の知らない姿が、精緻な筆運びでスケッチされており、どれもこれも一瞬息を吞む美しさだ。
かつてウシガエルの解剖を理科部員に任せ、観察は理科教諭の言葉を鵜呑みにした高校時代を回想した。
様々な情報が氾濫し、その出所や内容真偽の見極めが難しい時代だからこそ、このような資料が評価される
と感じる。
㈱丸善ジュンク堂書店「書標ほんのしるべ」第531号 2023年3月掲載
◆『日本動物解剖図説 Illustrated Animal Anatomy』
(森北出版・池田嘉平 / 稲葉明彦監修広島大学生物学会編・一三二〇〇円)
