カタツムリとの出会い
陸産貝類、いわゆるカタツムリとの出会いは、カタツムリを調べるというミッションを課せられた時だった。
当時は持ち込みされるカタツムリを仕分けるのに一苦労だった。基本的には中身のない殻を送ってもらうことになっており、見つけた場所と日付が記入されたものが殆どだったが、中には腐敗臭のするものや、貝類の腐肉に付くウジが孵ってハエになり、死んだ蝿が一緒に梱包されて届くものもあった。
そして西宮市貝類館の学芸員の方には大変お世話になった。
貝類館の某学芸員にキセルガイの同定を依頼時の話。陸貝は落ち葉や石の間にいることが多く、大雨で土砂と一緒に流されることもある。貝殻が土まみれということも普通である。私が持参した貝は口の部分が汚れたままだった。Oさんは、小さな貝を手で摘んで、貝の口部分を舌でぺろっと舐めたのである。一瞬の出来事だった。次の瞬間にはルーペを当てて見てから、
「シリオレギセル、、、こっちはナミギセルやね。」と次々名前を教えてくれた。
泥やゴミをとって同定する部位を見やすくするのが目的だということを頭では理解したが、貝に対する愛情はさほど深くなかった私は驚いた。それに広東住血線虫の存在を聞かされ、サラダに混じったものを食べて重篤になった症例を知っていたので、冷静さを取り戻すのに少し時間がかかった。
広東住血線虫とは、カタツムリやナメクジ、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)に寄生し、人間がそれらを生や加熱不十分で食べたり、粘液に触れた野菜を食べて感染すると、脳や脊髄に寄生し激しい頭痛や髄膜炎を引き起こす危険な寄生虫のことである。
まぁいろいろあったのだけれど、あの時をきっかけに陸産貝類が好きになり、今では近所の神社で見つけた貝数匹を飼育するまでになった。
カタツムリは移動能力が低いので開発された土地に自力で移入するには大変な時間がかかる。畑にいるのはウスカワマイマイといって栽培作物に付着してきたものが殆どのようだ。なぜカタツムリ調査なのかというと、環境指標生物としての位置付けと、視線の低い子どもたちにも見つけやすく親しみやすいからだ。そんなこんなで、雨が多くなって冬眠から覚める貝を見る季節になると、少しだけ嬉しくなるのである。
因みに、暑い季節は「夏眠・かみん」をする。自身の身体にできるだけ負担をかけないように生き残るという戦略を身につけた貝類を見習いたい。暑すぎる夏はもう懲り懲りだ。

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