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NOT A HOTEL と SANU 2nd Home、両方のオーナーになってわかった「豊かさの定義」

この記事を書いているのは「NOT A HOTELの10泊オーナー」であり、「SANU 2nd Home Co-ownersの12泊オーナー」でもある筆者です。

この記事では、「シェア別荘」であるNOT A HOTELとSANU 2nd Home Co-ownersの徹底比較をします。

・NOT A HOTEL

・SANU 2nd Home Co-owners

はじめに:両方持ってみて、初めてわかる世界観の違い


別荘を持つことは、非常にハードルが高いことだと思っていませんか?

実は、私自身もかつてはそう思っていました。しかしこの「シェア別荘」という両サービスの仕組みは、格段にそのハードルを下げてくれました。

両サービスとも、ひとことで言うなら資産として不動産を共同所有しながら、使いたい時だけ全国の拠点を別荘代わりに利用できる仕組みです。

性質の異なる両サービスを併有するのは、私にとってはそれぞれの役割が違うため、極めて合理的な選択です。この2つは「似たようなサービス」として比較されがちですが、実際に使ってみると目指している世界観は大きく異なり、明確な使い分けが可能です。

価格帯も、チェックアウトの作法も、仕組みも、窓の外の景色への向き合い方、冷蔵庫の中身に至るまで。コンセプトがまるで違います。それは優劣でなく、それぞれが異なる「豊かさの思想」を体現しているからです。

そもそも価格帯が全く異なる2つのサービスを並べて比較することには、無理があるのかもしれません。でも、どちらも「自分だけのセカンドホームを持つ」という同じ問いに対する答えである以上、あえて比較することに意味があると思っています。

どちらが優れているかではなく、何を求めているかで答えは変わる。その判断材料として、両方のオーナーだからこそ書ける比較をここに記します。

SANU 2nd Home 館山 1st

情報源について
本記事の情報は
①各社公式サイト・ヘルプセンター等の公開情報
②筆者が個人的な商談・契約プロセスで確認した内容(一例であり条件は変動します)
③筆者の実際の利用体験に基づく個人的感想
の3種類が含まれます。それぞれ該当箇所で明示します。



【共通点】まず、両社が解いている「同じ問い」を理解する

差異を語る前に、まず両社の共通点を整理しておきます。これを理解することで、その後の「設計思想の違い」がより鮮明に見えてきます。

1. 「所有」を軽やかにするシェアリング・テクノロジー

両社の大きな共通点は、「不動産の所有権を小口化(シェア)し、テクノロジーで管理する」という仕組みです。
単なるホテルの宿泊権や会員制リゾートの利用権ではなく、実際に不動産の一部を持ち分保有する「資産」としての側面を持っています。一人で一軒を所有すると高額になりやすい物件を、必要な日数分だけ購入することで、初期投資を抑えつつ資産価値を享受できる設計です。売却・相続・減価償却も可能であり、「消費」ではなく「所有」です。
さらに予約や解錠、清掃手配、自分が使わない日の運用管理まで、すべてスマホひとつで完結する利便性を両社とも追求しています。


2. 「別荘の負担」を大きく軽減するフルマネジメント

従来の別荘所有につきものだった「管理の苦労」を大幅に軽減した点も共通しています。到着した瞬間に整った空間があり、清掃の手配は運営側が担います。「せっかく買ったから掃除に行かなきゃ」という義務感を、「各地の拠点を楽しもう」という高揚感に変えている。海で波を待つ時間や、雪山でスキーのラインを描く時間に、オーナーが集中できる環境を整えています。
なお、チェックアウト時に利用者自身が行う後片付けの範囲は両社で異なります。この点は後の章で詳しく比較します。


3. 「一拠点」に縛られないネットワーク型ライフスタイル

「自分の別荘はここ」という固定概念を壊し、「あらゆる箇所に自分の家がある」という体験を提供しています。自分が所有している拠点以外の場所にも宿泊できる相互利用の仕組みを持ち、季節や趣味(観光、マリンスポーツ、ウィンタースポーツ、登山、釣りなど)に合わせて最適なフィールドへ移動する暮らしを可能にしています。同じ場所へ通い続けるだけでなく、新しい建築や異なる環境を渡り歩くことで、常に新鮮な体験が得られるよう設計されています。


4. 自然との対峙を軸にした立地選定

両社とも、都市の喧騒から離れ、日本の豊かな自然を再発見させる場所に多くの拠点を構えています。窓からの景色を一枚の絵画のように捉え、海・森・湖といった自然との境界線を曖昧にする設計を重視している点は共通しています。既存の観光地だけでなく、ポテンシャルのある地方に拠点を置くことで新しい人の流れを生み出し、地方創生にも寄与しています。


5. 「ブランド世界観」への帰属意識

単なる不動産販売ではなく、「どんな人生を送りたいか」という問いに対するブランドとして確立されている点も共通します。建築家やデザイナーとの協業により、細部に至るまで徹底した美意識が貫かれており、「NOT A HOTELのオーナーであること」「SANU 2nd Homeのオーナーであること」が、単なる利用者を超えた、価値観を共有するコミュニティへの参加に近い感覚を与えています。


共通点のまとめ

両社に共通しているのは、「所有の重み(管理や固定費)を最小化し、体験の質(自由と時間)を最大化する」という思想です。物質的な独占よりも、自分の身体感覚——波に乗る、雪を滑る、木々の香りを嗅ぐ——を大切にする現代的な価値観に向けた、新しい時代の「インフラ」と言えます。

NOT A HOTEL FUKUOKA


では、これほど多くの共通点を持ちながら、なぜ両社の体験はここまで異なって感じるのか。 その答えが、ここからの比較にあります。


1. 運営企業:創業者の哲学

所有を検討する以上、その拠点を長期運営する企業の背景は重要な判断材料です。そして両社において、創業者個人の哲学とサービス設計が色濃く反映されているのが見て取れます。

◼️ NOT A HOTEL:「所有」の概念を覆すIT出身の変革者

NOT A HOTEL株式会社は2020年4月設立。代表の濱渦伸次氏はeコマース支援「アラタナ」を創業しZOZOに売却、その後ZOZOテクノロジーズ取締役を務めた連続起業家です。
2026年1月から、江藤大宗氏との共同代表体制へ移行しています。

※以下は筆者の解釈・推察です
ZOZOといえば、創業者・前澤友作氏が体現してきた、起業家的衝動が印象的な企業です。濱渦氏がその環境で幹部として過ごした経験は、NOT A HOTELの設計思想にも少なからず影響しているように感じます。「建築を芸術的な域にまで完成させる」「誰も体験したことのない滞在を発明する」「アメニティ一つに至るまで一切の妥協がない」。これらは、前澤氏的な「最高のものを、惜しまず作る」という美意識と構造的に一致しています。

また、濱渦氏のIT・EC領域での経験は、NOT A HOTELの「建築×テクノロジー×ホスピタリティ」という設計に通じているように感じます。建築そのものの美しさだけでなく、予約、解錠、滞在中の体験まで含めて一つのプロダクトとして設計しようとする発想が見えます。

企業概要(2026年1月末時点)

  • 企業理念:「日本の価値を上げる」

  • 累計調達額:332億円

  • 累計契約高:約650億円

  • オーナー数:1,100名超

  • 開業拠点:全国9拠点

NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA BASE M


🟧 SANU 2nd Home:自然への確信を持つ二人が作ったライフスタイルインフラ

株式会社SANUは2019年11月設立。
SANUは当初、月額料金を支払って日本各地の拠点を自由に利用できるサブスクリプション型のサービスとしてスタートしましたが、2024年から、一拠点の所有権を分割購入する「Co-owners」のサービスを開始しました。
この会社を理解するには、二人の創業者の背景を合わせて見る必要があります。

  • CEO 福島弦氏:マッキンゼー出身の戦略家。トレイルランニング・スキー・登山に深く打ち込む

  • Founder / Brand Director 本間貴裕氏:Backpackers’ Japan創業者。釣り・ウィンタースポーツ・サーフィンを愛し、バックパッカーとして世界を旅した経験が起業の原点

※以下は筆者の解釈・推察です
二人に共通するのは、「自然の中に身を置くことでしか得られない体験がある」という個人的確信です。マッキンゼーで培った戦略眼と、バックパッカー時代に培った「最小限の装備で自然に入っていく」感覚——この二つが融合したのがSANUというサービスだと感じます。

釣りやサーフィンをする人間は、川や海で何時間も「待つ」ことができます。登山をする人間は、不便を承知で山に入ります。この感覚を持つ二人が設計したサービスが、「あえて余白を残して作られている」のは必然かもしれません。

ブランドコンセプト「Live with nature. / 自然と共に生きる。」は、二人の創業者にとって他人事ではなく、自分たちの生き方そのものです。

企業概要(2025年時点)

  • 企業理念:「Live with Nature. / 自然と共に生きる。」

  • 累計調達額:120億円

  • 累計契約高:非公開

  • 会員数(オーナー・ユーザー数):会員登録者数 10万人超(サブスクリプション会員の待機者数も含む総数)

  • 目標:2028年までに国内外100拠点

SANU 2nd Home 八ヶ岳 2nd 「BEE」

2. 思想の対比:「便利と贅沢の極致」か「意図的な不便の中の豊かさ」か


両社の違いを一言で表すなら、豊かさの定義がそもそも違うということです。

◼️ NOT A HOTEL
利便性、快適性、そして美しさ。ラグジュアリーを極限まで突き詰めた先にあるのが、NOT A HOTELの提案する豊かさです。煩わしい日常のタスクをすべて削ぎ落とし、ただ圧倒的な空間に身を置く。それは、ある種の完成形とも言える贅沢な体験です。

滞在中の体験価値を高める設備も徹底されており、多くの拠点にサウナを完備。さらに、その土地の個性を活かした温泉やプライベートプールなど、施設ごとに独自の魅力が備わっています。

また、各拠点には専用のテスラが用意されている(有料)ほか、「NOT A GARAGE」などのサービスを組み合わせることで、船やヘリコプターで優雅に拠点へ乗り入れるといった、移動そのものを楽しむ体験も可能です。


🟧 SANU
SANUが体現するのは、異なる方向の豊かさです。自然の中に身を置き、自ら火を熾し、手間をかけることで得られる豊かさ。完成された贅沢ではなく、不便さえも楽しむ「余白」を味わう心地よさです。ここで私が重要だと考えるキーワードが「不便益」という考え方です。

  • 「不便益」とは
    現代の過剰な利便性は「自ら動く機会」を奪い、皮肉にも達成感の喪失や心の空白を招きました。その反動として、キャンプのようにあえて手間をかける価値観が注目されています。
    効率化やテクノロジーで代替できる行為をあえて自力で行うことで、便利さが損なった「やり甲斐」や「自己効力感」を再発見し、精神的な充足感を取り戻そうとする逆説的な動きのことです。

※以下は筆者の解釈です
SANUの設計は、この「不便益」の思想と深くリンクしていると感じます。到着したら花を摘んで生ける、自炊する、後片付けして帰る、常駐スタッフはいない、共用施設も(ほぼ)ない。これらは「できなかった」のではなく、あえてそう設計されているように思います。登山、釣りやバックパッキングに生き甲斐を見出す二人の創業者が「自然の中で過ごすことでしか得られない豊かさ」を確信しているとすれば、このサービスの骨格は腑に落ちます。


3. 建築と空間:一点ものの豪邸か、自然に溶け込む機能美か

両者の違いを住まいに例えるなら、

「一流建築家が設計した一点ものの豪邸」「BESSの規格化されたミニマリズムを感じる家」か。

というほど差があります。どちらが優れているかではなく、何を求めているかで答えが変わる。この例えは、両者の関係をそのまま表しています。

◼️ NOT A HOTEL:圧倒的な非日常を「所有」するラグジュアリープラットフォーム

各拠点は、藤本壮介、ビャルケ・インゲルス、スノヘッタといった世界的クリエイターが設計を手掛けており、その建築美はもはや芸術の域にまで達しています。 そのラグジュアリー感は他を圧倒します。

例えば「NOT A HOTEL SETOUCHI」では、瀬戸内・佐木島の約1万坪もの広大な半島に、わずか3棟のヴィラを配するという贅を尽くした空間構成を採用。前述のように専用クルーザーやヘリコプターによるアクセスも可能です。このようなランクの物件は世界的に見ても唯一無二の存在であり、単純な比較は容易ではありません。本記事では個別の物件評価ではなく、提供される「サービスモデル」という視点から比較していきます。


家電はミーレ(Miele)等一流品が揃い、家具は名作揃い。iPadひとつで照明からエアコン、カーテンまで管理するスマート設計。アメニティは歯磨き粉がMARVIS、石鹸・シャンプーはAesop、バスローブからパジャマまで一流品が完備。食事配達のクーラーボックスすらグローブ・トロッターの特注品という徹底ぶりです。全室に洗濯機が設置されており、長期滞在でも不便を感じない設計です。

さらに拠点によっては共用施設が用意されています。レストランがある場所は多く、AOSHIMAやMIURA(未開業)には共用プールがあり、さらにMIURAにはジムが併設される予定。KITAKARUIZAWAにはキッズパークも計画されています。

自室の贅沢さに加えて、一部の拠点ではホテルライクな共用空間まで享受できる設計になっています。

(筆者の感想)
初めて滞在したのはAOSHIMAでした。色々と外出も考えていたものの、到着した瞬間から極力その中で過ごしたいと思いました。結局3泊4日ずっと車を使わずに、NOT A HOTEL周辺で過ごしました。朝起きたらまずは波を確かめ波乗りに行く。家族が目を覚ます時間に帰り、朝食に行く。午前中はプールで遊んだ後、お昼ご飯をとりに散策に出かける。近くのスーパーで軽く買い出しをして、帰ってくるなりサウナで整える。それが終わるとBBQの準備。非日常感を楽しむために、自分がそこに溶け込むだけで十分でした。NOT A HOTELは、それ自体が目的地になり得ます。

NOT A HOTEL AOSHIMAの共用プールとサウナ
NOT A HOTEL KITAKARUIZAWAのレストラン「石朴」
NOT A HOTEL AOSHIMAのセルフBBQメニュー
(2人前)
NOT A HOTELのアメニティ

🟧 SANU:自然の中のセカンドホームを「共有」する規格化された拠点

SANUは建築そのものを主張しすぎない設計です。しかし一口に「SANU」といっても、建物にはいくつかのバリエーションがあります。

規格シリーズ(BEE・MOSS・ARC・HIKE等)
統一されたデザインを持ち、どの拠点に行っても一定の品質と体験が担保されています。

  • BEE:SANUを代表するモデルです。大きな開口部、ロフト、キッチン、デスクを備え、比較的スタンダードに使いやすい設計だと感じます。天井が高いため、実際の広さ以上の開放感を感じます。

BEE
  • MOSS:低い視点や曲線を取り入れた、より没入感の強いモデルです。BEEと比較してより機能的に全体が整理され、横長の窓が開放感を生んでいます。外のテラスとリビングが続いており、窓を開放すると大きなリビングのようになる構造です。外部の自然との一体感を感じます。天窓も心地よい日差しを室内に届けてくれます。

MOSS
MOSSはこの書斎スペースが機能的で美しい。
子どもたちが遊ぶのを見守りながらコーヒーを飲む、なんてこともできる。

セレクションシリーズ
既存の別荘をリフォームして展開するシリーズ。規格物とは異なる個性と広さを持ち、より別荘らしい空間体験を提供。SANUの世界観を保ちつつ、画一的ではない選択肢として機能しています。

家電はハイアール等、実用性の高いものが選ばれており、テレビは置かずプロジェクターを備える。基本的に必要な家電、リネンやソープ等は揃っているもののミニマムです。歯ブラシすら置いていない。
これは「シンプルさ」が貧しさではなく、自然との関係を最前面に出すための意図的な選択だと考えます。

洗濯機は全拠点に設置はあるものの、共有部に設置されている拠点もあります。

多くの拠点には焚き火台が設置されており、拠点によってはBBQスペースが共用で設けられ、アウトドアの楽しみも取り込まれています。

また、共用施設として一宮にはコワーキングスペースが用意されています。

(筆者の感想)
例えば八ヶ岳のセレクションシリーズ、「HOTORI」は冬の外気がマイナス15℃にもなる場所で、建物の保温性も決して高くはなく正直かなり寒い。暖炉で薪を焚きながら暖を取り、備え付けの羽毛布団は驚くほど暖かく、思わずその羽毛布団のネットショッピングページを開いてしまいました。そういう、本質を突いた快適さが随所にある。豪邸ではなく、自然に連れて行くための箱として割り切られているからこそ、窓の外の景色が主役になれます。

SANU 2nd Home HOTORI 八ヶ岳
冬のSANU 2nd Home HOTORI 八ヶ岳の前は、凍った湖
かなり寒かった為、自然と暖炉の周りに家族が集まり、火を囲んで良い時間を過ごすことができた。

4. 「到着」の作法:完成された空間に迎えられるか、自分から場所を完成させるか

◼️ NOT A HOTEL

着くと、空間がすでに完成されて待っています。ドアを開けてまずはその豪華さに胸が高鳴り、この圧倒的な空間を独占できるという事実に、オーナーとしての気分が高揚します。照明も、温度も、香りも整えられている。やることは何もなく、ただそこに身を置くだけでいい。「迎えられる」感覚であり、それ自体がサービスの核心です。プールやレストランも、「何もしなくていいが、何でもできる」という自由を体現しています。

NOT A HOTEL AOSHIMA SURF

🟧 SANU

着いてまず目に入るのが、一輪挿しです。そこには何も挿さっておらず、花摘みバサミが置いてある。到着したら、外へ出て周辺で花や草を一輪摘んできて、それを生けるところからステイが始まります。誰かに演出してもらうのではなく、自分がその場所と関係を結ぶ最初の行為。「Live with nature.」というコンセプトが、この小さな儀式に凝縮されています。現地にスタッフは常駐しておらず、空間は「未完成」のまま待っている。自分が場所を完成させる主体として設計されているのです。

SANU 2nd Home ASAGIRI 足柄。
テーブルの上に一輪挿し。

(筆者の体験)
両方を使い続けて印象的なのは、子どもの反応です。
NOT A HOTELのドアを開けて子どもの発することばは「ヤバッ」「スゴッ」とはしゃぎまくるのに対し、先日SANUのドアを開けたときは「ただいま」と言ったのには驚きました。両者の空気感を端的に表しているように感じました。


5. 食の体験:至れり尽くせりか、その過程から楽しむか


◼️ NOT A HOTEL:選び抜かれた「何もしない贅沢」

食事は施設内のレストラン、ケータリング、部屋食、BBQと選択肢が幅広く、1食1万円前後から。現地の食材を厳選した、趣向を凝らした上質なメニューが揃っています。

部屋食にはセルフスタイルもありますが、鍋で具材を煮込む程度の簡単な仕上げだけで済むよう工夫されています。

食事は全体的に満足度が高く、印象に残るメニューが多いと感じています。

部屋には専用のコンビニがあり、カップヌードルから、ウイスキーの響アニバーサリーブレンド、高級シャンパンのKRUGまでが並ぶ世界観です。

(筆者の感想)
部屋の「コンビニ」を初めて開けたとき、価格よりもそのセレクションの哲学に驚きました。ここに並ぶものは、誰かが「これでなければならない」と選び抜いたものです。
キッチンはありますが、自炊しようとすると「あとちょっと」が揃っていないことがあり、例えば調味料は基本的に備え付けられておらず有料です。
実例:一度福岡でもつ鍋を持ち帰って食べようとした際、鍋道具一式(鍋・カセットコンロ・お玉・取り皿・調味料セット)で9,680円(税・サービス料込)という設定でした。

NOT A HOTEL AOSHIMA SURFのキッチン
NOT A HOTEL AOSHIMA SURFのコンビニ

🟧 SANU:地産地消の自炊が体験の一部

SANUは自炊がしやすい設計です。公式の宿泊ガイドでも入る前に買い出しをすることが推奨されており、近隣のスーパーやベーカリー、市場の案内まで用意されています。

自炊に必要な基本的な道具は調味料を含めて概ね揃っており、私の滞在では大きな不便は感じませんでした。

BBQをする場合は、焚き火台が用意されているが網だけは自身で用意する必要があります(館山や那須3rdの共用BBQ施設使用の場合は有料)。

備え付けの販売には、ワインやレトルトカレー等のこだわりのセレクトが日常の延長として楽しめる価格設定で用意されていますが、ミニマムの品揃えです。

(筆者の感想)
地元の市場で旬の食材を吟味し、慣れないキッチンで試行錯誤しながら料理する。そのプロセス自体に、都会のレストランでは味わえない能動的な充足感があります。これこそが「不便益」の醍醐味と言えるでしょう。家族みんなでキッチンに立ち、土地の恵みを調理して囲む。そんなひとときも、SANUでのかけがえのない楽しみの一部になっています。
自炊をしない場合には、自然の中の立地ということもあり、近くにレストランを見つけるのは容易でない立地もあります。

SANU 2nd Home ASAGIRI 足柄の備え付け有料品
SANU 2nd Home ASAGIRI 足柄の家電

6. サポート体制とチェックアウト:「ゲスト」か「住人」か

スタッフ体制:手厚いサポートか、セルフ完結か

◼️ NOT A HOTEL
アプリ経由の専任スタッフ対応を含む現地での手厚いサポート体制を持っています。何かあればアプリのチャットを通じて依頼ができ、到着から滞在中まで対応してくれる安心感があります。

(筆者の感想)
この安心感は、「完成された非日常」という体験を支える重要な要素です。NOT A HOTELは、一般的なホテルのような滞在体験をそのまま提供するサービスではありません。そのため、スタッフによる手厚いサービスを期待するというよりは、建物や空間設計そのものを存分に味わうのが本来の楽しみ方といえます。実際、必要がなければチェックインからチェックアウトまで誰とも顔を合わせずに過ごすことも可能です。
一方で、以前滞在中にスズメバチが室内に侵入してしまった際、チャットで連絡するとすぐに対応してもらえたことがありました。自然豊かな立地だからこそ、いざという時に頼れるスタッフがいることは、大きな安心感に繋がると実感した出来事です。

🟧 SANU
運営は基本的に無人で行われており、チェックインから退室までセルフで完結します。一方で、電話やウェブによる問い合わせ窓口は24時間体制で稼働しており、遠隔でのサポート体制もしっかりと整えられています。

(筆者の感想)
「誰にも見られていない、自分だけの場所」という感覚で過ごせるのは、無人運営ならではの魅力です。これもまた、ある種の「不便益」と言えるかもしれません。
とはいえ、以前車のトラブルに見舞われた際、サポートデスクに連絡したところ、非常に親身に対応してくれました。物理的には無人であっても、いざという時に頼れるバックアップ体制があるからこそ、安心して滞在を楽しむことができます。

チェックアウトの作法

両者のチェックアウトの差には、その思想の差が表れています。

◼️ NOT A HOTEL
使い終わった薪の片付けすら不要です。燃え残った薪も、灰も、そのままにして退室できます。滞在の最後の瞬間まで「何もしなくていい」が貫かれています。

🟧 SANU
簡単に現状復帰してからチェックアウトする運用です。使用済みの炭や薪を所定の場所に片付け、ゴミ出し、食器洗いを終えてから鍵を返します。

(筆者の感想)
この一連の「撤収作業」は、キャンプの撤収と構造的に同じです。テントを畳み、焚き火台を洗い、ゴミを分別して帰る。「やり切った感」と、SANUのチェックアウト後の充足感は似ています。NOT A HOTELのチェックアウトが「また来たい」「またここに来るために頑張ろう」という余韻・日常へのエネルギーチャージで終わるとすれば、SANUのチェックアウトは「ちゃんと使い切った」「リフレッシュできた」という達成感・エネルギーの回復で終わります。どちらが良いかは、その人の価値観次第です。


ここまでで、両者の思想や体験の違いは見えてきたと思います。
ただ、実際に「どちらを持つべきか」を考えたときに重要になるのは、ここから先の話です。

・実際に泊数は使い切れるのか
・予約のしやすさと実態
・固定費と維持コストの構造
・資産としての価値
・実際に向いている人

ここからは、両方のオーナーとして最も差を感じた「現実的な使い勝手」「判断に直結する部分」を、踏み込んで書いていきます。


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