知らない紳士がNNさんの横に座った
なんか馴れ馴れしく話しかけ始めた
ここ
混雑してますね
(ああ馴れ馴れしい)
(NNさんの表情もそう言ってる笑)
(でも構わず男は話し続ける)
そんなでもなく見えますか
失礼
私はいろいろ視(み)えるもので
ふうん
視えるんだ
NNさんの表情はそう言ってる
例えばどんな?
あのあたりには地縛霊が
あそこには浮遊霊が
そしてあそこには狐と狸が・・・
狸がどうかしましたか?
たぬさんがさりげなく割り込んだ
いや
狸の話をちょっと
狸お詳しいんですか?
(たぬさん容赦ないな)
いえ
私は別に・・・
紳士は話の腰を折られてかなりお冠のようだが、常連たちがもう収まらない
俺が正体見せようか
尻目さんが脱ぎ出しかけるのを目で制して、私がそっと進み出る
お客様
いま当店、そんなに込んでいませんよ?
いや込んでる
あちらにも
こちらにも
あれ?
紳士はきょろきょろ見渡すが、死霊とかなど、もともといない
ここはれっきとした人外バーなので、そんじょそこらの幽霊とかは来ない、来れないのだ
そう、紳士は自分の知覚~とやら~だけでもの言ってるのにすぎないのだった
上には上がいる
下には下が
思い上がった人間は、時々奇妙な思い込みで来る・・・
紳士は目の前のグラスを干して、バツが悪そうに出ていった
ママありがと
NNさんが小声で言う
この人も、無遠慮な人とかに、踏みにじられてきた人生の人
ここでだけは、厭な思いはしてもらいたくない私なのである
今日は店の奢り
てか、
あの人につけた
NNさん、目を瞠(みは)り、次に一気に破顔した
笑むと今でも美しい
知り合って、ずいぶん時間が経った・・・
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