不意にそこはダンスホールとかディスコではなくなった
巣窟

タチバナは消えない
男たちも消えない
そして、いま、まさにタチバナは、彼らに吸収されようとしているのだった!

咬まれるのでもない
飲まれるのでもない
ただ存在がうすくなっていくタチバナ

ああ爪

今日のために彼女が装った、バーテン君さえ気づいたおめかしの爪!

それが私に点火した

させるかああああ!!!

怒鳴った瞬間、いやそれより一瞬早く、お姉さんが進み出た

怒ってくれてありがとう
おかげで二馬力
いえ、
二百万馬力になった

言い様彼女は両手を掲げ

太刀をこれへ!

と叫んだ
とたんその手には、宝玉の柄と見事な打ち出しで仕上げられた、清浄なる両刃の一振りが現れた
雷を伴うその太刀を、斬り下ろし、右に払い、再度上段から切り下ろすと、雷光のような、衝撃のような何かが太刀から迸った
タチバナをほとんど吸収しつつあった八人、否、八つの存在は、迸る力に瞬時に弾き飛ばされた
粘る者、留まろうとする者、反応はそれぞれで、

よくも邪魔を!

食事を!

物騒な呟きを残す者もいたが、タチバナに一番近く寄り添っていた者だけはちょっと違っていた

私は愛していた
一緒にいたかったんだ!
ほんとだ!

せつなくも、それは確かに、本当に聞こえたが

うわあああああああ!

叫びとともに薄れて消えていった
消えていくさまは
大蛇のようでもあり

かなり長々と尾を引いていた

八つ頭の大蛇
ってまさか・・・

言いかけた私を、お姉さんが制した

名を呼んではいけない
彼らはいつでも戻ってこれるのだから

その声が低いのに、私は初めて気がついた
当人も私が気づいたと気づき、ウィッグとドレスを脱いだ。
お姉さんではなく、お兄さんだったのだ



で、タチバナはどうなったんですか?

どうもこうも・・・

あたしは言葉を濁す
正気づいたタチバナに、かれはずっと恋人であったように対した

踊り疲れて眠ってしまってた
寝顔に見とれてたらマダム来て、絶好のチャンス逃したよ

タチバナはぽっと赤面し、彼を恋人として自然に受け入れた・・・


あれはヤマトタケルだ
女人に化けて魔を払った
救われたタチバナは以後オトタチバナとして、永遠の伴侶となるのだろう
そして、そのあとは・・・


私は二つのことに気づいている
去った八岐大蛇のうち、少なくとも一人は本当に、本当にタチバナを好きだった気がする
そしてオトタチバナとなって去ったタチバナは、別れ際私に

すみません

と言った・・・


そうなのだ

私はまた、新しいバイトちゃんを探さなければならないのだ


#ものの町日常
#連作の四拾弐

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NN/主題歌挿入歌カラオケ次回は何とin仙台。出張なんかしちゃってみるぜっ それでも地球は回っている