泥酔した若い男がふらっと入ってきた
あっと思ったけど、入られてしまったのだからしょうがない
とりあえずお冷やを出したらはねのけられた
水じゃない!
酒だ酒!!
たいそう上がられてますよね
一旦ご休憩されて、ちょっとお食事もされたほうが・・・
るせえよ!
酒売ってなんぼだろ!飲ませろ!
大声で、まあ・・・
かつての人気者って、ほんと始末悪い
あら残念ですねえ
これ最高級なのに
と、水のグラスを私が干す
と。
相手ははっと私を二度見した
か、帰る
借りてきた猫のように席を立つと、長財布からカードを出して、バイトちゃんに渡した
好きな金額で売り上げていいから
そのカードもあげる
暗証は俺の誕生日
君かわいいね
言いたい放題言って出てった
もと人気者ってかっこ悪いですね
眉ひそめ、バイトちゃんが言う
お客様の噂しない
諫めたが、私も内心、ちょっと呆れてる
いちばん上手に生き延びてたはずの子だったのに
栄枯盛衰は世の常とはいえ、世間はほんと、非情・・・
マダム。
何を見せたんですか
バーテン君が揶揄い口調で私に言う
あら、あたしは水仰っただけよ?
とぼけとくのが無難というもの
“何にでもなれる”し、“何でも見せれる”けど、そんなことわざわざする必要もないほど、かれは十分追い詰められているのだろう
やだー
カード読み込めません!
バイトちゃんがふくれる
ああ
カードも停止なのね
次は車と住まいが無くなる
たぶんまだ、親御さんもご健在だろうから、貯金と家族と実家が守ってくれるだろう、きっと・・・
その間に出直せたらいいんだけどね
名が大きくなりすぎて、押しつぶされてしまったかれを昔、私はけっこう、
ううん、
グループでいちばん好きだった
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