桂(けい)と桂の兄が隅で飲んでいる
桂を壁際に置いて
気持ちはわかるし、うちの店をおもんぱかってくれてるのだろう
ありがたくもあり、申し訳なくもある・・・
と、外国の顔立ちの男性がふたり、桂兄側の横に座った
お仲間とお見受けしてまして。
一人が桂兄に話しかける
私は岩を坂上に運んでも、岩が転がり落ちてしまうのです。
私は内臓を鷲に毎日食われる。
不死なので、翌日には内臓が戻る。
で、また食われる。
痛いし苦しい。
それに比べれば、貴君は・・・
桂兄は黙って飲んでいる
私はちょっと考える
いままさに伐っている木の斧跡が、その場で消える徒労
樵であるかれにとり、職業上の永遠の苦痛だ
岩を押すのや躰を苛まれるのとは確かに違うけれど
やっぱり苦痛は苦痛なんじゃないかなあ・・・
と、そこへ。
カランカラン
女性客が二人入ってきた
熱に浮かされたように赤い頬で
適当に、二人で席を決めた割に、視線はじっと桂を見ている
たぶんこの世に二人といない美貌
そのゆえの、呪いが彼にはついて回る
桂は立ち上がる
幾ばくかの現金を置いてその場を離れる
兄も続いて出て行く
話しかけていた外国人二人は、話の腰が折れたので、狐につままれたようになっている
私が代わりに続ける
岩を運ぶシシュポスさんも
鷲につつかれるプロメテウスさんも、どちらも神に逆らったのだから、あるいみ自業自得でしょう?
桂男(かつらおとこ)さんたちは、なんだか月の伝説になっちゃっただけなんです
望んだわけでもなんかしたわけでもないんです
そうなのよね
お兄さんの桂男さんは永遠に伐れない木を伐り続けなきゃならないし、弟の桂男、桂は美男の咎として、永遠に女たちに追われるの
あの女の子たちが出て行った
桂をどこまで追っていくんだろう
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