カランカランの響きとともに、スーツ姿の紳士が来たが、スーツのベントから、細い尻尾が出ていた。
しかも先が二股に分かれている。
猫又!!
実物は初めてだ。
バーテンダーが目礼した。

マタタビ酒になさいますか

紳士は否と首を振った。
マティーニを。
うんとドライで。
ジン多め。
エクストラ・ドライ?
そこまではお望みじゃなさそうだ。
お席の前にピッと置く。
おいしそうに楽しんでくださった。

また来ます。

猫又紳士はさらりと去った。


週に二日ほどいらっしゃるようになって、上がられるカクテルも種類が増えてきたある夜、遅れて入ってきた数人の集団に、知り人がいたらしい。
露骨に嫌な顔をなさった。

お会計を

低く言ったのに、知り人は気づいた。

おお、猫間さん!
最近ご一緒しないと思ったら、こんなところでお一人で。
一緒に飲みましょう!
一緒に!

ボトルキープはフェミ(笛見酒造)のマタターヴ。
猫間氏が血相を変えた、その瞬間、マダムが時間を止めた。

猫間氏だけ解除して、マダムがお会計を済ませて差し上げた。

いいんですか?

はい。
気分よく過ごしていただけて初めてお店です。

ありがとうございます。

泣きそうな声でおっしゃって、そそくさと帰られた。


時間が動き出す。
猫間氏のお知り合いは、一瞬だけあれ?となったけど、

飲もう飲もう

既に2軒くらい回った後なのだろう、気にせずに乾杯しまくっていた。


猫又さんはアレルギーなのだろうか。
友飲みが厭だったのだろうか。
深入りする必要もないことよ、とマダムの横顔が言っている。
それでも僕はちょっと気になる・・・



#ものの町日常
#連作の参拾弐

バックナンバーは↓


いいなと思ったら応援しよう!

NN/主題歌挿入歌カラオケ次回は何とin仙台。出張なんかしちゃってみるぜっ それでも地球は回っている