『鬼の孫』~木目角弥栄・序章~①

頭書

ふざけるつもりは毛頭ございませんので、このお話、行けるところまで書かせて(描かせて?)くださいますように。


◎ タイトル

『鬼の孫』~木目角弥栄・序章~


◎ 本を調べる手

   手は弥栄(主人公)のもの。
   鬼に関する冊子、文献等、
   様々にあさっている。
   スマホやPCでも検索している。

弥栄独白「“鬼の孫”について検索して
 みたが、出てくるのは
 ぬらりひょ△の孫
 関連ばかりだ。
 ぬらりひょ△の孫。
 ぬらりひょ△の孫。
 ぬらりひょ△の孫。
 これもぬらりひょ△の孫!
 それはぬらりひょ△の孫であって
 鬼の孫じゃないだろう!!

 と思った時、notuというサイトに、
 こんな記事があった。

 秘密結社『鬼の孫』。

 バクザンさんという人が書いていた。
 秘密結社?」

   記事を読む弥栄。
   初めて顔へとパンアップ。
   中三~高一くらいか?
   そこそこきれいな顔立ち。
   目深な髪。
   秀でた額が知的だ。

弥栄独白(続き)「俺の名前は
 木目角弥栄。
 きめつのやさか、と読む。
 折からのキメツブームでは、
 友人知人問わず、
 やたらめったらからかわれた。
 せっかくだから
 あと二文字改名しちゃえ
 とか。
 俺は弥栄って名前、
 けっこう気に入ってるので、
 そういうジョークは好まないし、
 言ったやつにはとことん教育を
 施すので、そう何人もは言い散
 らかさなかったが、それでもけっこう
 頻繁に言われて不愉快だった」

   図書室を出、校舎を出る、
   その動きの間も独白は続く。
   
弥栄独白(続き)「木目角の姓は、
 この町でもめっちゃ少なくて、
 名乗ってるのはたいがいうちの
 親族だ。
 神主、芸術家、武道家、変わり者。
 そんな親戚ばっか。
 一族、金はないけど土地持ちで、
 学校裏山もうちの土地。
(ちなみに学校の土地は市のものだ。
 昔から違うらしい)」

   正門を出るとそこは高台。
   町全体がざっくり見下ろせる。
   学校の背後のこんもりした山が、
   弥栄の言う裏山らしい。
   弥栄、振り向き、見上げるが、
   ややあって、
   かしらを戻して歩き出す。
   帰宅するようだ。
   かぶってやはり独白。

弥栄独白(続き)「こんなこと長々
 言ってるのは、去年の夏、
 ばあちゃんが亡くなるちょい前に
 ぼそっと言ったことが気になった
 からだ」


◎機を織る祖母~回想

   よい手際で機を織りつつ呟く
   祖母のそばで、弥栄は西瓜に
   かぶりついている。

祖母「今は木目角って書くがよう、昔は
 鬼目角と書きよったんぞ」

弥栄「ひめふの?(鬼目角?)」

   西瓜に気が行って、音が
   くぐもっている。
   そのコマにもかぶって弥栄独白。

弥栄独白(続き)「去年はもろに
 中二だったし、俺はめっちゃ目が
 よくて、ほんとは視力4.4ある。
 それで鬼目なのかもって納得してる。
 木目牙って違い姓の親戚は、何かと
 犬歯が派手だし、木目原家の人間は
 何食っても当たらないしね。
 ばあちゃんは木目根の家から
 嫁いできた。
 根は寝の文字換えで、そのせいか
 ばあちゃんは夢の読み解きが出来た。
 なくした財布も、家出した猫も、
 ばあちゃんの夢見で簡単に
 見つかってきた。
 でもってやっぱし、みんな目がい
 い・・・」

◎ 木目角家~現在

   黒々と立派な旧家然とした大きな
   門。
   奥まって見事な家屋。
   『木目角』と達筆に書かれた
   表札の門をくぐり、弥栄帰着。
   家人に目顔で挨拶して、自室へ
   引っ込む間も、弥栄の独白は
   続いている。

弥栄独白(続き)「木目と鬼目。
 やっぱこれって・・・」

◎ 弥栄自室

   十五、六の少年らしい、ちょっと
   散らかった部屋。
   自室の本棚の一角には、永井豪氏
   の各作品。
   デビルマン。
   凄ノ王。
   バイオレンスジャック。
   手天童子等が並んでいる。

弥栄独白(続き)「偉大なる永井豪さん
 の『手天童子』の主人公には徐々に角
 が生え、それに伴って超人的な力が
 強まっていった。
 俺もそうなるのかもしれない。
 厭だなあ。
 かっこよくなるならともかく、獣化
 とかするんだったら絶対やだ。
 それで鬼の字の姓、調べ始めたのだ
 けど、通常鬼頭くらいしか出て
 こない。
 でもうちみたい、字を変えてるとこ
 もあるかもって思うと、気が遠くなる
 ほど探さないといけない・・・
 暗澹たる気持ちでネットうろついてた
 時に、偶然出会ったのがこの
 『鬼の孫』
 だったのだ。
 秘密結社『鬼の孫』。
 どんな、どんな組織なんだ。

 おそるおそる俺は、notuにアクセス
 した・・・」


◎ 学校(朝)

   登校する生徒たち(男女とも
   ブレザー)の中に弥栄。
   幾分眠そうである。

「キメ!」
「キメおはよ!」
「木目角君!」
弥栄「おはよーさん(欠伸)」
「眠そうね」
「夜更かし?」
弥栄「んー。調べ物」

   答えるともなく答えていると、

「ヤサカ!」

   違う呼びようで呼んで現れる
   同級生(小野塚武)。
   知的な顔立ちと、たくましい
   肉体を持っている感じだ。

弥栄「おのぢー。おはよー」

   周囲がちょっとざわつく。
「(小声)キメって呼ばなくていいの?」
「(小声)小野塚君はいいのよ」
「(小声)小野塚君も変な呼び方
 されてる」
「(小声)木目角君だけはいいのよ」
「ふうん。いいんだ・・・」

   最後のセリフを発したのは
   腰までの長い黒髪の女子
   (黒塚仁保〔にお〕)。
   彼女だけがセーラー服である。

仁保「なんで?」

   微妙な語気で言うと、一般女子が
   “変容”した。


◎ イメージ〔回想的な〕

   校内階段の踊り場で、ちょっと
   蓮っ葉な感じの少女らが
   駄弁っている。
   リーダー格の少女(笹川なみ)が
   嘲り口調で言う。

なみ「だからヤサカって変だってば!
 令和じゃないない。平成でもない。
 昭和?違う違う。もっと前じゃね?」

   ぎゃははと下卑て笑った直後、

なみ「え?あ?ああーっ!!」

   勝手に階段を転げ落ちて
   いった・・・


◎ 通学路~もとの場面

   先のシーンのまま、話し続けて
   いる女学生たちがいる。

仁保「偶然でしょ?」
「偶然っていえば偶然だけどー」
「木目角君カンケイには、けっこーそーゆーのあんのよねー」
   ざわざわがやがやの少女らの中、
   黒塚は弥栄と小野塚を目で追って
   いる。


   見送られている視線を少し感じ
   つつも、小野塚と校舎に向かう
   弥栄である。

弥栄「(振り向かず小野塚に問う)あれ
 誰?なんでセーラー服?」
小野塚「転校生だからな。隣のクラスの
 黒塚仁保。苗字違うけど校長の娘」
弥栄「校長?最近きたやつ?」
小野塚「そ。あいつ」

   小野塚が目で示す。
   昇降口の前に、ダンディーな
   中年男が立っている。
   生徒らの挨拶をにこやかに
   受けている。

弥栄「久喜隆介・・・久喜か」



◎ 木目角家・弥栄自室

   勉強机に向かっている弥栄だが、
   紙片に繰り返し落書きしている。
   久喜
   久喜
   久喜・・・
   九鬼。

弥栄「九の鬼でも九鬼か・・・。
 黒塚も」

   九鬼の横に、
   黒塚
   と書く。
   安達ヶ原
   とも書くが、いきなりペンを置い
   てPCを叩き始める。

弥栄「鬼につながる姓だよなあ・・・。安達
 ヶ原?鬼婆ァ?にしては顔きれーだけ
 ども」

   栞を置いておいた記事を開く。
   浮かび上がるnotuのロゴ。
   続いて記事タイトル、『鬼の孫』。
   文章の一部も表れる。

『うちは渡辺綱にも金太郎、つまり、
 坂田金時にも関係ないけど、それで
 も豆まきはしなくていい。
 そういう家系なのだ』

弥栄「そーゆーってどーゆー家系なん
 だよ」

弥栄(独白)「ああでもうちも豆まきは
 やんないな。てか、丸かぶりもやん
 ない。あれはちょっとやってみたい
 気も・・・」

「あれって?やらしいことならダメよ」

   言いながら入ってきたのは弥栄
   の母。
   乾いた洗濯物を一抱え、届けに来
   たようだ。

母「まあ珍し。弥栄がまともげなこと
 検索してる」
弥栄「珍しくない!あんたの息子は今
 期も学年10番以内だ!」
母「あら、小野塚君は5番以内って聞い
 てるけど?」
弥栄「誰に!」
母「小野塚ママとかそのお取り巻き。母
 親情報網甘く見ちゃだめよーん」

   ベッド上にどんと洗濯物を置く。
   ついでにデスク上の落書きも
   見る。

母「久喜、は九鬼。数鬼(かずおに)系
 か。母さん昔結婚させられかけた」
弥栄「まじ?」
母「幸いあんたがおなかにいて。木目角
 大河も責任とるって言ってくれて。そ
 れで今のアタシがあるの」
弥栄「母さん十分フシダラじゃん」
母「ええい!言うに事欠いて!どうせ言
 うなら情熱的!ってお言い。SAY!」

   勿論弥栄はリピートしない。

弥栄「母さん旧姓・木目我だっけ。旧字
 は牙(キバ)?」
母「牙。どっちも固くて好かなかった・・・
 黒塚?」
弥栄「新校長の娘。連れ子かも」
母「黒塚?名前は」
弥栄「仁保。にほ、って書いて、にお。
 長ーい黒髪の美少・・・」

   女、と続ける前に弥栄黙る。
   母はものすごく微妙な表情をして
   いた・・・



◎ 木目角家・全景(夜)

   降り出した雨が屋根を打ち始め、
   みるみる豪雨となってゆく。



◎同・弥栄自室(夜)

   窓を叩く風雨を見るともなく見て
   たり、手にしたスマホいじってた
   りの弥栄。
   ベッドに仰臥したまま、LINE文
   面を打っている。

弥栄文面『まさか今夜直撃とはなあ。未
 明までに抜けそうじゃん』

   おのぢー名のところに返信出る。

小野塚文面『お気の毒。体育はなくならない』

   弥栄ちょっとムっとなり、

弥栄文面『体育忌避してねーわ俺!』
小野塚文面『知ってる』
弥栄「くっそー」

   舌打ちしたまさにその時。
   弥栄は窓外の存在に気づいた・・・


   結露も防ぐ最新式サッシ窓の外
   に、朝見たばかりのあのセーラー
   服美少女、黒塚仁保が立ってい
   た!
   長い髪を風に嬲らせつつ、風雨で
   ビタビタ濡れそぼったまま、窓外
   に浮いているのだ!
   唇が動いている。
   声にならない声で言っている。

 開けて。
 開けて。
 入れて。

   それらはテレパシーのように弥栄
   の脳内に直接響く。
   弥栄は思う。

 何で。
 何でこんな時間。
 何でうち。
 そもそも俺たち知り合ってもない。
 何で、
 何で黒塚・・・

   気づけば弥栄、窓鍵を解錠、雨の
   降り込むのも構わずサッシ窓を開
   け放っている。
   そしてもっと気づけば、窓を開け
   た瞬間からそこは、弥栄の部屋で
   はなくなっていた!


◎ モノトーンのグラデーション空間

   グラディエーションのグレーが
   ただただうねり、のたくっている
   空間に、弥栄と黒塚だけがいる。
   黒塚の髪ものたうっている。
   黒塚の口は動いていないが、その
   思考は弥栄の脳内に流れ込んで
   いる。

黒塚思考「私、あなたに恨みない。
 でも私、こうしなきゃ」

   黒塚の美しい髪が伸び、弥栄の
   手足に絡んでくる。
   黒塚は泣いている。
   でも弥栄は執拗に絡め取られ、
   首に巻き付いたその豊かな黒髪に
   締め上げられ、いまにも息が
   絶えそうだ。

弥栄「うううっ」

「弥栄!!」

   空間を引き破るように現れたのは
   弥栄の母!

   空間を引き破れる母なのだから、
   黒塚の髪くらい何でもないはずだ
   が、引っ張ったくらいでは外せ
   ず、かえって母が弥栄と同じく絡
   め取られそうになってゆく。

母「南無三!」

   表情筋を歪めて毒づいた母、大き
   く口を開く。
   口腔内に鋭く目立つは犬歯だが、 
   彼女のそれは人並み外れて発達し
   ており、まるで牙としか思えな
   い。
   それを使って弥栄母、黒塚の髪を
   噛み切り始めた。

黒塚「!」

   黒塚は衝撃を受けた様子で、弥栄
   の脳内に流れ込む感情も、少女ら
   しい衝撃に変わっている。

黒塚思考「いやあああ!あたしの、あた
 しの髪!!」

   叫んで後ずさる黒塚。
   髪たちも逃げるように黒塚のとこ
   ろまで引いた。

黒塚「お・・・覚えてなさい!」

   完璧捨て台詞のように言葉を投げ
   つけ、消え去る黒塚。
   と同時にグレーの空間もかき消
   え、

◎ 弥栄の部屋~もとの場面(夜)

   室内は元通りの、いつもの弥栄室
   に戻った。
   開けた窓からビシャビシャと、台
   風の雨が吹き込んでいる。
   慌てて窓を閉めた弥栄だが、母の
   怒りはものすごく、弥栄いきなり
   パン!と頬張られた。

母「黒塚に窓開けてどうすんの!」
弥栄「てえ・・・。まじ怒ってらっしゃる
 じゃん」
母「怒るわよ!おばあちゃまが夢見して
 くれなかったら私も気づけなかった。
 危ないとこだったんだよ!!本気で
 反省しなさいよねっ!」
弥栄「します!します!します・・・って、
 ばーちゃん去年死んだじゃん。木目根
 の夢見は死んでも効果あんの?」

   母はギクッと黙るが、一度浮かん
   だ疑問はもう、弥栄の中から消え
   ない。

弥栄「死んだばーちゃんが俺を守れる!
 母さんは黒塚追い払える!木目根、木
 目我、木目寝、木目牙!木目ってなん
 なんだよ!!」

   ほとんど絶叫の弥栄に、母はただ
   ただ沈黙しているが、ややあっ
   て言う、

母「いろいろ考えなくていいから、あの
 子には近づかない!それだけ守って
 ちょうだい!」

   言うだけ言って出て行く母であ
   る。

◎ 空(朝)

   台風一過の見事な青空の下。
   町の小高い丘に建つ弥栄の学校。
   一つの窓に寄ると、物思いしてい
   る弥栄の姿がある。

   

◎ 教室(朝)

   着席中の弥栄のところに、

「弥栄!弥栄!弥栄!弥栄!」

   小野塚が駆け寄ってくる。

小野塚「黒塚仁保が!」
弥栄「つややかな黒髪を肩でぷっつり切
 ってきたか?」

   小野塚キョトンとなり、

小野塚「何でわかった」

   弥栄、えっとなり、

弥栄「よしてくれよあてずっぽうなの
 に!」

   机をばん!とやって立ち上がる。

小野塚「どこ行く」
弥栄「隣。実物見に行く」

   教室を出る。
   小野塚も続く。


◎ 肩どころか耳下パッツンの黒塚

   が、教室内自席にいる。
   廊下に立つ弥栄と小野塚。
   さすがに弥栄も言葉を失うが、そ
   の視線を受けた黒塚は、明らかに
   弥栄の視線を避けた。
   クラスメートもその極端な短髪ぶ
   りにざわざわしているが、さすが
   に誰も本人に、『どうしたのその
   髪!』とは聞かない。

弥栄思考「やっぱ俺が自分で聞くべき
 か。でもなんて聞く。それって俺ん
 ちでうちのおふくろにやられたやつ?
 ってか?うわあ・・・」

   それでも意を決して問おうとする
   のだが・・・

弥栄「黒・・・」

「木目角君」

   封じるように早くかかる大人の
   声。
   見遣るとそこには久喜校長が立っ
   ていた。

久喜「(小野塚に)君は教室に戻りなさ
 い(弥栄に)君は校長室へ」


◎ 校長室へ続く廊下

   先に立って歩く久喜。
   続く弥栄だが、心中は別のことを   
   考えている。

弥栄(心中)「俺こいつ大嫌い。こいつ 
 赴任してきてから、俺らの好きな先
 生、次々やめてった。
 怒るけど褒めてもくれる多田先生も、 
 間違ったら相手生徒でもちゃんと謝っ
 てくれる中野先生も、ジシュージシュ
 ーって騒ぐと、三回に一回は自習にし
 てくれる伊井先生も辞めてった。
 今はつまんない先生ばっかだ。

 こいつ自身も嫌い。
 いつもにこにこしてるけど、本心って
 感じたこと一度もない。
 本気も本質も感じない。
 俺そういうやつ大嫌い」

   そんなことを考えているうちに校
   長室に着いた・・・


◎ 校長室

   久喜が入り、弥栄を促し、弥栄が
   入って久喜が扉を閉めた途端、
   室内は“あれ”に変貌。
   そう。
   うねるのたくるあの、グラデーシ
   ョン空間だ。
   黒塚の空間より数倍禍禍しい。
   その中心に久喜校長。
   仁保の武器は髪だったが、ロマン
   スグレーの校長の髪は触手代わり
   には適さないらしく、代わりに校
   長は、両手十本の指をシュウン!
   と伸ばして弥栄を襲っている。

弥栄「(回避しつつ)なんで指なんだ
 よ。ふつうは爪だろ?」
久喜「漫画の定番だろうがな、現実はそ
 うじゃない」
弥栄「なんで俺を」
久喜「何でかな。木目角を嗣ぐ者だから
 かな。だとしたら動機は幾分漫画的
 だな」

   攻撃は止まない。
   指自体がしなう金属ようの棒に変
   化し、伸びかかって襲い来続け
   る、
   ついに片足首に巻き付かれた!

弥栄「うわあ!」

   すっ転ぶ弥栄に、

久喜「死ねえっ!」

   久喜がモロ、漫画の悪役みたいに
   叫んだまさにその時。

「弥栄!」

   グレーの空間が得物ふうのもの
   に、さくっと切り裂かれたかと
   思うと、小野塚と黒塚が飛び込ん
   できたではないか!
   黒塚の髪は元通り伸びてうねって
   おり、小野塚はなんと大ぶりの斧
   (よき)を持っている。
   (それで空間を切り裂いて来たら
   しい)

小野塚「弥栄無事か!?」
弥栄「無事じゃない!」
小野塚「だよな!」

   ざっと斧で薙ぎ払うと、久喜の指
   が何本か宙を舞った!

小野塚「ゲッ!爪だろふつう!」
弥栄「だからふつうじゃないんだよ。お
 まえは斧を持ってるし、黒塚髪戻っ
 てるし、昨日より長いし、って何で黒
 塚こっち(側)なんだよ!」
黒塚「・・・」

   黒塚は答えず、代わりに小野塚が
   答える。

小野塚「きのうのお詫びだと。きのう何
 があったんだよ」
弥栄「話せば長い」

   立ち上がった弥栄が警告する。

弥栄「来るぞ!」

   指先を切られた久喜校長が怒りに
   満ちて叫ぶ。

久喜「三人とも死ねえ!!」

   ふたたび伸びた指先が、弥栄たち
   を見舞うが、黒塚が髪を無限ほど
   に伸ばして三人を包むと、三人は
   ふっとその場から掻き消えた!

久喜「!!」



◎ 木目角家・居間

   ばん! と出現する弥栄、小野
   塚(斧つき)、黒塚。
   お煎餅食べながらテレビを見てい
   た弥栄母がキョトンとなるが、
   黒塚に気づいて露わな怒りを発
   した!

母「あー!きのうの眷族!!まだ弥栄狙
 ってるの!?」
弥栄「おふくろ違っ」
母「違いません!あんたまたたぶらかさ
 れてるの!?」
弥栄「たぶらかされてないし、逆に救っ
 てもらった!」
小野塚「ほんとですおばさん!」
母「(やっと気づく)小野塚のタケちゃ
 ん・・・あんたまでどうして・・・」

   戸惑いつつも母、通常モードに戻
   る。


◎ 居間~時間経過

   食べ散らかされたケーキと紅茶の
   カップが二組と、手のつけられて
   ない一組。
   食べ散らかしたのはもちろん弥栄
   と小野塚で、手もつけてないのは
   黒塚。
   黒塚は畏まって座っているばかり
   だが、弥栄母はまだちょっと疑
   ってる感じだ。

母「要するに久喜がきのうのこの子みた
 いに弥栄襲って、その窮地をこの子と
 タケちゃんが救ったと。そういうこと
 なのね」

   弥栄、小野塚頷くが、

母「あんたは何で突如うちの子を守る気
 になったのよ!」
黒塚「・・・」
母「答えれないのにどうやって味方だっ
 て思えるのよ!」
黒塚「・・・」
母「黙ってちゃわからないでしょう!!」
小野塚「まあまあまあまあまあまあ」
   弥栄母を制する小野塚。
小野塚「改心してなきゃここまで飛ばな
 いと思いますよ。相手仮にもお父さん
 だし」
黒塚「父じゃない」
小野塚「え」

   弥栄も母も、えっとなる。

黒塚「母も姉も、殺された。従わなかっ
 たらおまえも殺すって。木目の鬼、悪
 いやつって言われてたし。こどもだか
 ら信じてた。馬鹿でした」

   項垂れる黒塚の、小刻みに震える
   肩を見ていた母はもう、怒りも何
   も捨てている。

母「決めた。この子今日からうちの子!」

   ええーっ!となる弥栄と小野塚で
   ある。



◎ 弥栄室(夕)

   弥栄と小野塚が駄弁っている。

小野塚「でもって今日から同居ですかあ
 の美女と」
弥栄「ありがたいような不吉なような。 
 にしてもおまえ、あの斧・・・」
小野塚「これっすか」

   小野塚が手をシュンっと振ると出
   てくる。
   シュンっと逆に振ると消える。

小野塚「斧って言わずに『ヨキ』って言
 ってます。うちでは。
 最近やっと出し入れ出来るようにな
 ったばかりで。
 すべては木目一族を守るためです」
弥栄「マジで?・・・てか守るって何か
 ら・・・校長みたいなやつらから?」
小野塚「そうです。黒塚も、塚名だから
 従わざるを得なかったんだと思いま
 す」
弥栄「塚名・・・。じゃあおまえ、いつも俺
 につるんでくれてたのは・・・」
小野塚「宿命半分、友情半分ってとこで
 すかね。あんたもともといいやつだっ
 たし。でも塚側からは主人は選べない
 んで。黒塚、運がよかったスよ」



◎ 地下室を改装して、こぎれいにする
  弥栄母

   戸惑う黒塚にも手伝わせ、女子の
   部屋らしくする。



◎ 黒塚の髪を整える弥栄母

   大きな鏡に小さな鏡で後ろ頭も映
   し出し、『これでいいか』的に黒
   塚にお伺いの目を向ける。
   手振りで『髪、下ろしてみ』とや
   る弥栄母。
   耳あたりの長さだった髪が、わっ
   と腰まで伸びるが、弥栄母、ひと
   しきり面食らったあと、『もうち
   ょっと短く』っと手のひら仰向け
   で示す。
   肩より下の長さがふっと消えると
   弥栄母、満足げ。
   ちょっとだけ鋏を入れて、

母「よーし、いい感じ。美人さん出来上がりー」



◎ キッチン

   料理する母、手伝う黒塚。
   そっと見守る弥栄。
   セミロングヘア黒塚、おずおずな
   がら楽しそう。
   見ているだけで弥栄も楽しい気分
   になっている。



◎ 通学路(朝)

   通学する生徒たちの中に弥栄と
   小野塚。

弥栄「女の子得だなあ。めっちゃ可愛が
 られてる」
小野塚「おばさん前から女の子欲しがっ
 てたから」
弥栄「まじか」
小野塚「うちの母もですよ。黒塚のこと
 話したら、うちで預かってもよかった
 のにーって」
弥栄「なんなんだよー。俺行っても、お
 ばさんけっこう冷たいのにー」
小野塚「実子でもけっこうゾンザイに扱
 われてますよ。女親ってあんなもんな
 のかなあ」

   駄弁りながら学校に着くと、正門
   に、

   着任式

   の看板が出ている。

弥栄・小野塚「!!」


◎ 学校・体育館

   全校生徒の列の中に弥栄、小野
   塚。
   ステージには教師たち。
   置きマイクのある演壇に着いてい
   るのは40才くらいのスーツの女
   性(伊沖志麻子)。

伊沖「というわけで久喜校長が、海外赴
 任となりましたので、本日から私、
 伊沖志麻子が本校の校長となります。 
 よろしくお願いいたします」

   と馬鹿丁寧に頭を下げた・・・


           第一話 了























   





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