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【深海への軌跡 #2】始まりの平滑、水張りの儀式。


エスキースを終え、いよいよ「紙(支持体)」を作る工程に入る。

外は雨。水張りをするには、絶好の日和だ。

本制作の舞台は、平らな机の上。
そこに木製パネルを据え、厚手の水彩紙を固定する作業からすべてが始まる。

まず行うのは、木製パネルの面取りだ。
紙やすりを使い、パネルの鋭い角を丁寧に削り落としていく。
水を含んでデリケートになった紙が、乾燥時の猛烈な張力によって角から裂けてしまうのを防ぐためだ。しかし、削りすぎてもいけない。
乾燥してピンと張ったときに、画面の輪郭が美しい垂直を保てるよう、絶妙な塩梅で角を落とす。

その後、紙の裏にたっぷりと水を含ませ、繊維を均一に伸ばす。
濡れた紙をパネルの裏側へと巻き込み固定する。これが【裏張り】だ。

この裏張りの際、最も神経を研ぎ澄ますのが、四隅の処理だ。
余った紙をどのように折り込み、美しく収めるか。表からは見えないその四隅の処理にこそ、一流の品格が備わる。


水分が静かに蒸発するにつれて、縮もうとする紙の力がパネルを引き絞り、ピンと張り詰めていく。
完全に乾燥したとき、太鼓のように硬く、美しい平滑な面が生まれる。

この水張りは、単なる準備作業ではない。
これから画面の上に叩きつけられる水彩の激しい滲み、色鉛筆の鋭い筆圧。
深海という、すべてを押しつぶす圧倒的な水圧の世界を受け止める、強固な「土台」を築く儀式だ。

机の上には、完璧に平滑となった白い支持体。

これが、これからの制作の舞台になる。


第3話へ続く。



深淵の、さらにその奥へ。
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深海への軌跡まとめ


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