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かき氷はじめました

5泊6日の出張が終わり、家に久しぶりに帰った。
しばらく家を空けていたので、帰ってきた実感がわかない。ビールでも飲もうかと冷蔵庫を開ける。

出張に行く前、冷蔵庫の中には妻の大好きなスイカがテトリスのようにぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。そのスイカの姿がどこにもない。あの、大量のスイカはどこに消えたのだ…

スイカの代わりにインスタントコーヒーの瓶のような大きさの瓶が数本、ところ狭しと並んでいる。見たことのない瓶だ。黄色の液体が入っている。蜂蜜みたいでもあるが、振ってみると蜂蜜よりサラサラした感じだ。瓶にラベルは貼られていない。透明の円柱のガラスの瓶に金色のキャップ。何が入っている瓶なのか全く想像できない。何かの健康食品だろうか。昔懐かしい紅茶キノコにも見えて、口の中が酸っぱくなる。

冷凍庫にも謎の物体が凍っている。ごはん一膳を冷凍する時に使う円形の透明のプラスチック容器に似ている。白と透明の2種が数個ずつ凍っている。カマンベールチーズの一口サイズのような小さい白い玉が大量に入れられたジップロックの大袋がふたつもあり、冷凍庫を独占している。

なんだこれは?
わが家の冷蔵庫はどうしちゃったんだ?
僕の不在中に何があった?
僕は松ケンみたいに1年間も家を不在にしたわけじゃない、たったの5泊6日だ。


「かき氷」

妻は「かき氷」と、平然と答える。

瓶の中身はお手製のかき氷用のシロップ。冷凍庫の謎の物体はかき氷用の氷と、牛乳と練乳を混ぜた氷だと言う。丸い物体は白玉。よく見ると、アンコや抹茶シロップ、水飴…。かき氷関係の物が増えている。
この短期間で、わが家の冷蔵庫はスイカ専用から、かき氷専用の冷蔵庫に進化し、妻は八百屋さんからかき氷屋さんにでもなった気分なのであろう。

確かに、僕が出張に行く前に妻がボソっと言っていた。
「あー!かき氷食べたい。食べに行くの面倒くさいから、いいかき氷の機械を買うかなぁ」と。

妻は思い立ったら即行動する。
機動力に長けている。
僕が出張に行っている間にかき氷機について調べ、最適な機械を選んで、即Amazonでポチったらしい。
アマゾンの瞬発力もたいしたものだ。宅配業者の勤勉さにも頭が下がる。

クリスマスのプレゼントみたいに、プレゼントを夢見て、何日も眠れぬ夜を過ごすみたいな風情は全くない。欲しい物はすぐ手に入る。

ま、妻も人生をすでに折り返した。残された人生もそう長くはない。思い立ったらすぐ行動、やりたいことをやるのが一番だと僕も思い、妻を応援する。もっとも、妻は「私は200歳まで生きる」と豪語する。今朝も言ってた。まだ折り返し点にも達していない。先が思いやられる。
今後どうなるのか、僕は頭が痛い。

僕の住む地方の今年の天候は、暑かったり寒かったり、豪雨が降ったり変化が激しい。
かき氷機は届いたが、寒い日が続いている。 

今朝も妻は「寒い…」と言いながら、お手製の練乳かき氷アンコのせを満足そうに食べていた。

「一口食べてみて」と、妻は僕にも作ってくれる。
僕はかき氷には全く興味がない。
「これ、一口じゃないよね…」と、僕はパクパクとかき氷をかき込む。
サラサラとした雪のようなかき氷が口の中で溶ける。

急いで食べたからだろう、冷たさで僕の頭がさらに痛くなる。
痛む眉間に手のひらを当て、
ああ、家に帰ってきたんだなと実感する。

スイカから、かき氷に。
次は何になるのだろう。
僕の頭がズキズキと痛む。


今日の妻の一言

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