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デジタル難民

デジタル関係の操作が苦手。

新しい学期が始まったので、生徒たちはアカウントとかパスワードの、更新だか変更だかをしなければならないらしい。
説明されても、僕には何のことなのかさっぱり分からない。

僕の相方のS先生がアカウントがなんちゃらとか、パスワードがなんちゃらとかクラスに説明し、指示をしている。

僕には何を言っているか、さっぱり分からない。
分からないけど、いかにも知っているようなオーラを出して机間巡視をする。

心の中で
「俺に聞くなよ、俺に聞いても無駄だぞ」
「俺に聞いたら承知しないぞ」
「聞くなよ…」
「聞くなよ…」
と、祈りに似た気持ちで歩く。
内心ビクビクしながらも、笑顔を振りまき生徒の間をゆっくり歩く。

僕の気持ちを察しないある生徒が
「先生、これどうするんですか?」と聞いてくる。
「バ〇か、こいつは!わかるわけねーだろ!」と思いながらも、
「どれどれ」と笑顔でタブレットを覗き込む。
分かるわけがない、さっぱり分からない。
何に困っているかさえ分からない。
でも、悟られてはいけない。
「うーーん…何だろうねぇ…」と考えるふりをする。


他の数人が、何を勘違いしたのか僕のところにやって来る。

「俺に聞いても無駄だ!聞く相手を間違えている!『大事なのは誰に聞けばいいのかを判断することだ!』と口を酸っぱくして言っているだろ、このど阿呆が!!」と思う。
言えないけど。

「まずはS先生だろ!S先生の所へ聞きに行け!」と僕はデジタル関係が得意な相方のS先生を見るが、S先生は他の生徒の相談で手一杯だ。S先生は僕の方を見てもくれない。

「先生は『俺はベテランだから何でも出来るぞ』と、いつも偉そうに豪語しているんだから、それぐらいしっかりとやってくれないと困ります!」とS先生に怒られそうなので、「どれどれ...」と、生徒の話を聞くだけは聞いてやる。


アカウントがどうのこうの、パスワードどうのこうの、何が何だか全く分からない。
自分のパスワードだって怪しいのに、人のパスワードなんてわかるわけがないだろ。
そもそもパスワードを忘れたお前が悪いんだ。
俺もしょっちゅう忘れるけど。
アカウントの変更の仕方なんて分かりっこないだろ。

そもそも『アカウント』って何なんだ!
『パスワード』とか『アカウント』という言葉を聞くと、俺の頭はシャットアウトするのだ!
クローズするのだ!
フリーズするのだ!俺に聞くな!
責任者出てこーーーーい!だ。


僕に聞いたところで埒が明かないと、途方に暮れた生徒達は職員室の情報の専門の先生のところに行ってデータを初期化してもらい一件落着。

初期化してどうなるのかも、これを書いている今も僕には全く分からない。

情報専門の先生が僕の隣の席で、「強烈なパスワードが何ちゃらかんちゃらで...」と聞いてもいないのに僕に説明してくれる。

彼の口から『パスワード』という言葉が出てきたところで僕の頭はシャットアウトする。

僕の頭の中を一度初期化してもらい、必要なデータを入れてもらうしかないな、これは…

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