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教育実習のあまい罠

教育実習生が来ている。
高校時代、アイドルみたいなピカピカの日々を送った女の子と、もっさりとして一言も言葉を発しなかったような男の子。高校時代は決して交わることのなかった二人だ。今は同じ志を持つ者として、仲良く授業見学をしたり、お昼ご飯を一緒に食べたり和気藹々とやっている。卒業後の思わぬ出会いもあるから、面白い。

教育実習は3週間であっという間に終わってしまう。あっという間に終わってしまうのだが、短いが故に、いつまでも忘れられない想い出にもなる。

自信満々で教育実習に来る学生でも、その多くは授業に行き詰まり、生徒との関係に苦労し、自分の力のなさに気づく。
「自分は教師にむいていないな」と撃沈する。

一方、生徒たちは突然現れたお兄さんやお姉さんみたいな先生に興味津々。老人ホームにアイドルがやって来るみたいなものだ。もっさりとしたお兄ちゃんでも生徒にはアイドルに見える。

実習生の授業はひどい。とても授業の体をなさない。でも、下手くそすぎて屁みたいな授業でも、その一生懸命さやひたむきさが生徒の心をつかむ。皮肉なことだが、ベテラン教師の洗練された知的で高度な授業よりも、何の工夫もないウンコみたいな授業の方が生徒にとって面白いということが往々にしてある。

実習は3週間だ。これが1ヶ月も半年も続けば実習生のボロが出る。生徒達もバカではない。実習生がアイドルなんかじゃないことに気づく。やがて授業に慣れてつまらなくなり、実習生の人間性にも飽きてくる。実習生の賞味期限はほぼ3週間だ。生徒たちは気づき始める、真実に。

3週間後、お別れの時だ。何もかも上手くいかなかった3週間。最後のホームルーム、撃沈した実習生にサプライズが待っている。担任が仕込んだ、花束と一人一人のメッセージがしたためられた色紙が生徒代表からプレゼントされる。感極まる実習生。涙で言葉が詰まり、お別れの言葉も満足に言えない。


家に帰り、色紙を読みボロボロと涙を流す。

『授業、面白かったです!』
『頑張って先生になってください!』
『先生なら絶対いい先生になれます!』

何度も何度も色紙を読み直す。

終わっちゃったな、教育実習
もう会えないのか
明日からどうしょう……

空しい気分になる。
襲い来る虚無感。
3週間の日々が胸に去来する。

もしかして教師になれるんじゃないか?
教師に向いているのかも
教師になりたい

実習生はまんまと教育実習の罠に落ちる。

僕も罠に落ちた一人だからよく分かる。


ほくそ笑む妻…


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