ヒエロニムス・ボス《最後の審判》を求めて―造形美術アカデミー絵画ギャラリー
ウィーン中心部にひしめく美術館の中でも、特に楽しみにしていた場所のひとつがこちらの絵画ギャラリー。
かつてエゴン・シーレやオットー・ヴァーグナーも学んだ、ウィーンで最も伝統と格式ある美術大学のギャラリーです。アカデミーは1692年創設。
画家を志したアドルフ・ヒトラーが2度受験していずれも不合格に。その遺恨は、後のヒトラーが正規の美術教育を否定する動きや、退廃芸術追放運動につながったと言われます。
日が落ちてから入場したためか、館内は静まりかえっていました。すれ違った観覧者は2、3組。年末の街の喧騒や、2ブロックしか離れていない美術史美術館の賑わいを忘れるようです。


ギャラリー最大のハイライトは、ヒエロニムス・ボスの《最後の審判》。入り口からみて最奥の部屋に展示されています。


中央に最後の審判と7つの大罪、左翼にエデンの園、右翼に地獄。


「最後の審判」を描いた絵は数多くありますが、どうしてもシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの作品が頭に浮かんでしまいます。その神々しい肉体の集合とは趣が大変異なる、ボスの奇想ワールドがここに広がっていました。

エンターテインメントも情報を得る手段も少ない時代に、祭壇画の扉を開けて広がるこの世界を観るとき、人は一体どのような心境に導かれるのでしょう。
ボスは裕福な家庭に暮らし、敬虔な道徳心を持つ地元の名士であったようです。そのような落ち着きの中から生まれる破天荒な絵の細部に、尽きせぬ興味が湧きました。
その他の展示には、クラナッハ数点やムリーリョ、安定のルーベンスに、最晩年の筆致の荒いティツィアーノなど豪華な顔ぶれが並びます。ギャラリー全体がそこまで広くないため、疲れることなくゆったりと鑑賞できました。


周りの空気を引き留めるような視線と口元。
静寂から動き出しそう。

写真で伝えにくいのですが、小ぶりな絵です
私たちはこの日最後の観覧者に。閉館時刻をぎりぎりオーバーせずに退室しましたが、廊下の電気は既に消されており、暗くて寒い。その中で眠りにつく名画達を想像しながら大学を後にしました。
