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A Genius of the Times 003 KOHARU KISARAGI

Weekday Cinema & Earthgirls ×Cohen

伊藤正子さんは高校時代に、すでに後輩の間でも評判になるほどの方でした。

昨日、吉祥寺の成蹊学園まで歩いて出かけた。夏休みだったので生徒、学生はまばらでした。学園グラウンドでは大学ラクロス部の方々が練習をしていた。母校成蹊は、いつ訪れても変わらず優しい。
帰りは頑張って吉祥寺から井の頭線で渋谷まで出かけてみた。

当時の渋谷は公園通りにパルコができて、西武百貨店の勢いがすごく、糸井重里さんのコピーが輝いていた。
第1回目の東京国際映画祭が開催されたのも渋谷であった。メイン会場だった渋谷パンテオンは、今はヒカリエと名乗っている。
あの頃よりも、今の渋谷はノイズや不協和音が、整然とした都会らしさを奏でている気がした。しかし、変わらず、渋谷は和声では表現しにくく、対位法的思考で都会のカオスを構成し直すと少しは表現できるのではないかと感じた。

伊藤先輩は、如月小春の名で『都市の遊び』(1986)という書籍を出版されている。写真撮影はブルース・オズボーンさん、解説を山口昌男さんが担当していた。山口昌男さんは、同書を、演劇的・空間的な感性と呼応し、都市生活者が観客であり演者でもある重層的な空間として東京を読み解いていると解説している。

東京という都市は当時から、モノと情報が溢れ、経済と文化、日常と非日常が入り乱れ、クリエイティブの源泉となるカオスな状態が至る所にあった。改めて同書を読んで、都市を遊び歩くことで得られる体感が空間のつながりを読み解くことの大切さを教わった。ストリート、路地裏、公園、商店街のスケールや変化を体感することで、人は自らの記憶と目の前の現実との間に余白を発見する。
伊藤先輩からは、あなたが見つけた余白に問いをデザインすることが喜びなのよと問われている気がした。
ガルシアマルケスの『百年の孤独』がノーベル文学賞を受賞したのもこの時期、もしくは少し前であっただろうか。

伊藤先輩にとって生まれ育った杉並や武蔵野が自身の原風景としてのメタファーとなる辺境であり、渋谷は都市のシンボルであったのかもしれない。帰りも、井の頭線に乗って吉祥寺まで戻ってきた。渋谷からの12.7km、17駅、各駅停車で30分。伊藤先輩と同時代に杉並に住み、成蹊で学んだものとして感謝をもって想いに馳せる。

伊藤先輩、みてますか?
ありがとうございます。

© K.T of earthgirls × Cohen


【如月小春】
1956年。東京都生まれ。
東京女子大学文理学部哲学科卒業。
在学中に東大の演劇サークルと、劇団「綺畸(きき)」を結成。
1976 年に処女戯曲『流星陰画館』を発表。
1982年に「綺畸」を退団後、1983年に劇団「NOISE」を結成。
1983年に『DOLL』『MORAL』などを上演する。
2000年に逝去。
著書に『如月小春戯曲集』『工場物語』(新宿書房)『如月小春のしばい』『如月小春のフィールドーノート』(而立書房)『はな子さん、いってらっしゃい』(晶文社)がある


【読むべき本】
⁡『百年の孤独』
ガルシアマルケス(著)

【何度も見たい映画】
『ペーパームーン』
1973年製作/102分/アメリカ
原題または英題:Paper Moon
配給: パラマウント映画=CIC
劇場公開日: 1974年3月9日

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