一次相続と二次相続をご存じですか。将来、団塊の世代の大相続時代が到来します。二次相続の時代になると相続税額が増加、特に人口減少エリアでは住宅地の地価下落圧力が強まると予想されます。



(2025年12⽉)のデータを基に筆者作成
2026年4月28日ブログ「基礎控除があり、遺産総額が一定以上なければ、相続税はかかりません。ただ、最近は株高・地価上昇を映じて遺産総額が膨らみ、2024年には死亡者数に対する相続税の課税件数が10%を超えました」の続きです。
団塊の世代の人々が、75歳以上の後期高齢者となり、少子高齢化が益々加速しています。一番上の図表をみてください。2024年10月1日時点の年齢別人口ピラミッドです。この時点から2年半経っていますので、もう少し上の方にズレています。一番膨らんでいる団塊の世代が、寿命を迎え、亡くなる時代になると、「大相続時代」が到来します。
二番目の図表をみてください。被相続人数(≒死亡した人の人数)は、2024年時点で年間161万人まで増えてきました。そのうち、課税対象の被相続人数は16.7万人です。三番目の図表をみてください。基礎控除などがあるので、皆が相続税を課税される訳ではありません。課税される被相続人の割合は10.4%と10人に1人の割合となっています。
四番目と五番目の図表をみてください。株価の高騰やマンション価格の高騰などで、保有資産の評価が上がってくると、相続税の課税価格が増加し、支払う相続税額が増えていきます。既にそうした局面に入ってきているようです。
ただし、「大相続時代」になって、相続は増えても「一気に」相続税収が増えて、大量の住宅(不動産)が売りに出される訳ではありません。それは、一次相続と二次相続があるからです。二次相続の時代になれば、相続税収が増えて、住宅(不動産)が大量に売りに出されるでしょう。それにはもう少し時間がかかります。
一次相続と二次相続をご存じですか。一次相続とは、夫婦のうち先に亡くなった人の相続のことです。二次相続とは、残された配偶者が亡くなったときの相続のことです。一次相続は、残された配偶者の生活を守るため優遇されています。夫婦で築いた財産に対して、残された配偶者に過度な税負担をかけない相続税制になっています。
厚生労働省の2024年簡易生命表によると、平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳です。結婚している夫婦の年齢が同じ歳とすると、平均的には、夫が81歳で先に亡くなり、一次相続が行われます。その時、妻が住宅を相続します。その後も、妻が6年間その住宅で一人住まいして87歳で亡くなると、二次相続が行われます。その時点で住宅等の遺産が子どもに相続されるというのが、平均的な姿です。もし子どもが既に自身の住宅を所有していて、相続した両親の住宅の活用法がなく、空き家になってしまうのであれば、売りに出されることになります。
両親とその子ども2人のケースを想定してみましょう。父が亡くなると、父が被相続人、母と子ども2人、計3人が相続人になります。これが一次相続です。基礎控除は、3000万円+相続人3人×600万円=4800万円です。さらに、配偶者控除が使えます。1億6,000万円または法定相続分相当額のどちらか大きい方まで相続税ゼロになります。その住宅は母の生活拠点であるので、母が相続するケースが多くなります。多くの家庭では、母が相続する財産はこの範囲に収まるため、母の相続税はゼロになるケースが多くなります。
その後、母が亡くなります。母が被相続人、子ども2人が相続人になります。これが二次相続です。基礎控除は、3000万円+相続人2人×600万円=4200万円です。一次相続に比べて、基礎控除額が減ります。配偶者控除は使えないので、一次相続で大幅に節税できても、二次相続で一気に課税されます。
一次相続で母が受け取った財産に、母自身の財産が合算されるため、遺産総額が大きくなります。そして、両親が住んでいた住宅も二人の子どものいずれか、あるいは共有財産として相続されます。「小規模宅地等の特例」を使うには、原則として同居や一定の要件が必要です。小規模宅地等の特例とは、相続した土地の相続税評価額を最大80%まで減額できる相続税軽減制度です。二次相続は、相続税額が大きくなるため、税率も上がります。一次相続より相続税額が大きくなります。
「大相続時代」に向けて、一次相続中心から二次相続中心に移行していく過程で、課税割合も上昇、相続税額が増えていくでしょう。そして、相続人の話し合いの結果、空き家の維持が困難ということで、その住宅の多くが売りに出されることになるでしょう。住宅(不動産)の需給関係が緩み、特に人口減少エリアでは下落圧力が強まると予想されます。
