アナリストが選ぶ、モビリティの注目すべきニュース。新しいニュースレターの見本号を、まるごと公開します。
8月25日に、有料ニュースレター「Andy's Mobility Signals」を創刊します。
EV、自動運転、電池、政策。毎日たくさん流れてくる世界各国のモビリティ、自動車産業のニュースの中から、いま注目すべきものをモビリティ分野のイノベーションアナリストである私、Andy Kondoが選びお伝えします。
そのニュース、いったい何が起きているのか、その背景には何があるのか、そして世界各地を取材している私の読み筋を添えて、毎週火曜と金曜の朝にメールでお届けするものです(月額1,200円・いつでも解約できます)。
どんなものが届くのか。説明を重ねるより、実物を見ていただくのが早いと思います。この記事では見本として1号分、そのまま全文公開します。
※見本号の内容は2026年8月18日時点のものです。
詳しい紹介と購読のお申し込みはこちら → https://andykondo.jp/briefing.html
【Andy's Mobility Signals】 2026-08-18(火) 見本号
■ 今号でいちばん大事な一報
Uberと日の丸交通の提携です。以前『トヨタが動かないと日本のロボタクシーは動かない』という動画を出しましたが、日本にロボタクシーがどう入ってくるのか、その「型」の兆しが初めて具体的に見えた一報だと思っています。
■ ハイライト(4件)
● [政策・規制] 英国、「2030年に新車の8割をEVに」の目標を下げる検討へ。5割案まで選択肢に
何があったか: 英国政府は2026年8月、EVの販売義務の目標を見直すための意見公募を始めました。対象は2027年から2035年までの目標です。乗用車の2030年目標については、いまの80%に対して70%・60%・50%へ引き下げる案と、80%は動かさずに達成の猶予措置を2034年まで延ばす案が並んでいます。意見の締切は2026-10-23です。
背景: 英国には「ZEVマンデート」と呼ばれる制度があります。メーカーごとに、その年に売る新車のうち何%を排ガスゼロの車にしなければならないかを決め、届かなければ罰金を科す仕組みです。消費者が買う気になるのを待つのではなく、売る側に義務を負わせてEVを普及させる。このやり方を欧州でいちばん強く採ってきたのが英国でした。なお今回はまだ「意見を集める」段階で、引き下げが決まったわけではありません。
読み筋: 「規制が需要をつくる」というやり方の総本山が、目盛りを動かすかどうかの分かれ目です。値引き競争で消耗したメーカー側の緩和要求が通れば、欧州全体のEV移行のペース論に波及します。
Andyの見立て: 揺り戻しが来ています。EV推進が正しい方向であることは変わりません。ただ、環境への効き目が誰の目にも明らかになるには、再生可能エネルギーの比率や電池生産の効率まで、社会の側が大きく作り変わる必要があります。そこが進まないうちは、作るときから走らせるときまで生涯全体のCO2で見たとき、ハイブリッド車と劇的な差がつきにくい局面があるのも事実で、これが懐疑論の根を張る土壌になっています。「多少痛くても頑張ろう」と言い切るための決定的な差を、いまは見せにくい。次のCATLの項目は、この構図のちょうど裏返しとして読んでください。
出典: electrive(UK launches consultation on EV sales mandate)
裏取り: ✔確認済み(複数媒体で目標レンジ・締切10/23を照合)
● [AI・自動運転][日本] 東京のロボタクシー、日々の運行を担うのは日の丸交通。Uberが提携発表、2026年後半に試験開始
何があったか: Uberは、東京で2026年後半に始めるロボタクシーの試験運行について、日の丸交通と組むと発表しました。車両は日産リーフで、運転するAIはWayveのAI Driverを積みます。日の丸交通が車両の運行・車庫・整備・充電を受け持ち、Uberが配車アプリ側を提供します。試験の初期は、東京の交通事情に慣れた乗務員が安全運転者として同乗します。
背景: ロボタクシーを実際に走らせるには、少なくとも4つの役割が要ります。①運転するAI ②車両 ③客と車をつなぐ配車アプリ ④毎日の運行(車庫・整備・充電・保険・トラブル対応)です。今年3月にUber・Wayve・日産が結んだ覚書は①〜③まででした。今回埋まったのが④で、しかも日本ではタクシー事業は国の許可がないと営めないため、この役はどうしても既存のタクシー会社が担うことになります。
読み筋: 日本のロボタクシーは「タクシー会社を巻き込む」型で進む。その最初の実例です。技術を持つ側だけでは前に進まない、という日本市場の構造がそのまま出ています。
Andyの見立て: 以前の動画で、日本のロボタクシーには2つの壁がある、という話をしました。タクシー業界という岩盤と、車両側をトヨタ系が押さえている構造です。今回の発表で、その壁がどう越えられていくのかの輪郭が見えました。Waymoが日本交通・GOと組む陣容と合わせ、この4階建てを既存タクシー会社込みで組む形が、日本の典型になっていくのでしょう。ただし懸念が2つ。1つは価格です。ロボタクシーの経済性は、突き詰めれば「いかに人を雇わずに済ませるか」で成り立ちます。ところが米国でも、Waymoの料金はまだ人が運転するUberより少し高いという調査が出ている段階です。タクシー会社が組織ごと乗る日本型で、運賃はどこまで下がるのか。もう1つは完成車メーカーの居場所です。自動運転ソフトはWayveから来る。日産が「車を納めて終わり」になるなら、EV化で利益率が細るなかで新しい稼ぎ方を探すべき完成車メーカーとしては面白くない立ち位置です。自前でやり切るテスラは別格として、既存メーカーでここに本気で踏み込めているのは、MoiaでID. Buzzを走らせるVWと、中国でPony.aiと量産ロボタクシーを始めたトヨタくらいではないでしょうか。
出典: Uber Japan公式ニュースルーム / Car Watch
裏取り: ✔確認済み(一次資料=Uber公式発表)
● [電池・サプライチェーン] CATL、電池工場20カ所すべてでカーボンニュートラル達成。次は取引先にCO2の報告を求める
何があったか: 中国のCATLは2026-08-17、自社が運営する20の電池工場すべてでカーボンニュートラルの認証(ISO 14068-1)を取得し、「2025年末までに本業でカーボンニュートラル」という目標を達成したと発表しました。次の目標は2035年までに取引先を含めた全工程でゼロにすること。そのために2027年から、主要なサプライヤーにCO2排出量のデータ提出を求めます。
背景: CATLは世界最大の車載電池メーカーです。カーボンニュートラルとは、排出量をまず減らし、どうしても残る分を削減・吸収の分で相殺してゼロとみなす考え方で、ISO 14068-1はそれを第三者が確認するための国際規格です。ここで効いてくるのが、電池の場合、CO2の8割超は自社の工場ではなく、正極材などを作る取引先の側で出るという事実です。だから自社工場だけ達成しても話は終わらず、取引先にデータを出させる段階に進む必要があります。
読み筋: 欧州は電池のカーボンフットプリント(採掘から廃棄までに出るCO2の総量)の開示を義務づける方向に進んでいます。CATLの動きは、その規制を先回りして、本来なら「規制対応のコスト」でしかないものを競争優位に変えにいくものです。
Andyの見立て: 前の英国の項目の、ちょうど裏返しの動きです。「それでもEVだ」と大手を振って言うためには、電池そのものが徹底的にクリーンでなければならない。CATLの必死さはそこから来ています。そして自社工場を片付けた次は、サプライヤーに圧がかかる番です。銅や希少金属、電子部品。材料供給の側に多くいる日本企業には、この圧力がこれから降りてきます。環境対応に二の足を踏みがちな日本企業も、ここは逃げられません。EVの生涯CO2を下げるには電池で下げるしかなく、電池は材料で決まるからです。
出典: CATLプレスリリース(PR Newswire) / CnEVPost
裏取り: ✔確認済み(一次資料=CATL発リリース。ISO規格名は報道側で確認)
● [AI・自動運転] Pony.aiとUber、欧州5都市に2,000台超のロボタクシー。1都市の実験から「横展開」の段階へ
何があったか: 中国の自動運転企業Pony.aiとUberが提携を広げ、欧州5都市で2,000台を超えるロボタクシーを展開する計画を発表しました。すでに2026年4月からクロアチアの首都ザグレブで商用運行しており、そこへ4都市を足します。中東への展開も計画に含まれます。Pony.aiがレベル4の自動運転技術と運行ノウハウを、Uberが配車・決済・顧客対応のプラットフォームを持ち寄る形です。
背景: レベル4とは、決められたエリアと条件の中でなら、運転席に人がいなくても走れる段階を指します。そのロボタクシーの広げ方には、いま2つの型があります。1つは自前のアプリで客を集めるWaymo型。もう1つは、自動運転の技術は持っているが客を持たない会社が、Uberのような既存の配車プラットフォームに乗る型です。後者は都市を増やす速度が出る代わりに、客との接点はUberに握られます。
読み筋: 都市ごとのパイロットから「プラットフォーム経由で複数都市に複製する」段階への移行例です。中国勢とUberの役割分担型が、欧州で規模の実績を作れるかが焦点になります。
Andyの見立て: 欧州で自前展開できるプレーヤーが限られるなか、Pony.aiはうまく入ったと思います。入口が象徴的で、既存の自動車産業のしがらみがない国・クロアチアのザグレブからです。ハンガリーではBYDの工場が動き出し、ベトナムのVinFast系の電動タクシーは7月末にコペンハーゲンで走り始めました。中国勢・新興勢は、欧州の周縁からじわじわ入っていく。いきなり独仏の本丸では始まらないでしょうが、そのミュンヘンでもMomentaとUberの実証が始まろうとしています。欧州の路上の競争は、向こう2年でかなり動くと見ています。
出典: Uber IR(プレスリリース) / CNBC
裏取り: ✔確認済み(一次資料=Uber IR発表)
■ 分野別ショート
[政策・規制] ハンドルのない車を売るための「法律の例外」を、米当局が初めて認めました。
Zoox(Amazon傘下)が2026-07-31、NHTSA(米運輸省の道路交通安全局)から、連邦自動車安全基準(FMVSS)8基準の一部について一時免除を取得したものです(年間最大2,500台・2年間)。米国ではハンドルやミラーを備えることが法律で義務づけられているため、それらを最初から持たない専用設計の車は、免除がないと合法に走らせられません。専用設計のロボタクシーに商用展開の免除が出たのは初めてです。ただし有料で客を乗せるには、州や市の許可が別途要ります。
出典: 連邦官報(2026-07-31公示) / TechCrunch
裏取り: ✔確認済み
[電池・サプライチェーン] 英国最大の電池工場が拡張計画を止めました。
日産の英国工場に電池を供給するAESCサンダーランドが、ジャガー・ランドローバー(JLR)向けとなる3本目の生産ラインの設置を保留したもので、英紙ガーディアンが2026-08-15に単独で報じました(AESC・JLRはコメントを辞退)。理由はJLRとの供給交渉が進まないことと、日産の需要が想定を下回ったことだとされています。電池工場は投資額が大きく、買い手の確約が先にないと建てられないため、完成車側の計画が揺れると建設もそのまま止まります。
出典: Guardian記事(AOL転載版)
裏取り: ✔報道確認(一次資料なし・英紙単独ソースにつき出典明示)
[日本] 熊本地震からの生産復旧が進んでいます。
熊本地震(2026-07-28・Mj7.1・最大震度7)を受けて止まっていた工場のうち、トヨタはトヨタ自動車九州の福岡3工場を2026-08-06に再開しました(田原工場は08-17)。日産は福岡県内2工場で一部車種を08-06に再開。ホンダは鈴鹿・埼玉など四輪3拠点を08-19まで休止し08-20に再開予定で、二輪の主力である熊本製作所は再開日が未定です。震源から遠い三重や埼玉の工場まで止まるのは、部品がひとつ欠けるだけで組み立てラインを動かせないからです。(※記載は見本号の2026-08-18時点)
出典: 時事通信 / ホンダ公式(稼働状況) / 気象庁 令和8年熊本地震ポータル
裏取り: ✔確認済み(一次資料=ホンダ公式・気象庁)
■ ウォッチリスト(未確認・要注目)
● 経済産業省がEV用電池の回収義務化を検討している、との情報を日次収集で捕捉しました。事実であれば、メーカーは電池を「売って終わり」にできなくなり、回収と再利用の体制まで抱えることになります。出典が二次的なサイトのみで、一次確認が取れていません。●未確認
● HyundaiがトルコのIzmit工場でIONIQ 3の量産を開始した、との報道。同社として初の欧州向けEV生産拠点になります。現地紙の報道のみで裏取りができていません。●未確認
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発行: Andy Kondo(andykondo.jp)
