脳循環、脳保護と術後脳梗塞
脳循環
脳重量:体重の2%
脳血流(CBF)は心拍出量の15-20% 安静時CBF:50-60ml/100g分 75%灰白質
酸素消費量:全消費量の20%
CMRO2脳代謝率 3−4ml/100g分 脳全体40−70ml程度の酸素消費 神経活動に60% 基礎代謝に40%使用
安静時の脳血流(CBF)50ml/100g/min
脳100gあたり3~4ml の酸素と6mg のグルコースを供給
wills輪完成している18−20%
吸入麻酔では脳血管の炭酸ガス反応性は維持・自己調節能は浅い麻酔では維持されるが深くなると障害
MAC増加での血流増加はイソ(20%:1→2MACで)>セボ
脳代謝と体温
低体温時(28-32℃)は自己調節能と炭酸ガス反応性はともに保たれる
脳波20-22℃でほぼ平坦×20度以下
DHCA(超低体温循環停止):27-45分(虚血時間)
HCA単独に比べて、ACP(順行性脳還流)やRCP(逆行性脳灌流)を併用すると神経系の合併症や死亡率を減少させると考えられる。
ACPとRCPの優劣については未だ議論されている。
RCPはACPより安全に脳保護を行う時間が短い
過去問
◯鼓膜温、食道温、直腸温のうち、最も脳内温度を反映するのは鼓膜温
×冷やすは体外循環時間を短縮するため、脱血温と送血温の差を可能な限り大きくする
◯低体温+選択的脳還流の許容閾値は90分
脳血流とCO2
CBFはPaCO2が1mmHg増えると1-2ml/100g分増える(2-4%)
STAT管理:
α-stat:成人 CO2付加しない(CO2は新鮮ガス流量で調整) 自己調節能保たれる
pH-stat:小児 CO2付加する 脳血管拡張のため早い頭部冷却と酸素解離曲線の右方移動で酸素解離増加で有利 ただ、micro-emboli増える
塞栓が200μm未満がmicroemboli 剖検例から脂肪滴の飛散
低灌流はoff-pumpでもある 無症状でも一側80%狭窄・両側50%狭窄・閉塞+」50%狭窄
CPB中にHt27%と15−17%では低いほうがPOCD増悪
POCDとrSO2との関連性研究あり
Microembolic signalsとPOCDの関連性低い
術後脳梗塞
心臓血管手術後には、Stroke, POD, POCDといった障害が生じる。
Stroke 脳梗塞
術後せん妄Post-operative delirium(POD)
術後認知機能障害Post-operative cognitivedecline (POCD)
Strokeは術直後だけなく、遅発性にも生じる。
原因と対策:塞栓と低灌流>動脈硬化
①塞栓:
Microemboli 空気、脂肪→空気の混入を避ける。脂肪を含んだ術野血液をcell saverで洗浄すると術後認知機能低下が軽度である
Macroemboli 動脈壁の粥腫、血栓→大動脈操作をできるだけ避ける、OPCABを選択、送血部位の変更等
Off-pump CABGとon-pump CABG single aortic clampは術後 strokeが少ない。大動脈壁の操作と術後strokeには強い関連性がある
②Hypoperfusion 人工心肺灌流圧低下、心不全、送血障害、解離進展→灌流圧調節、心拍出量維持
脳保護対策
術前:
危険因子の把握
MRIによる頭頸部血管の動脈硬化性病変の評価
術中:
epiaotic echoやTEEで上行、弓部大動脈の内膜肥厚を評価
人工心肺動脈フィルター40 μm以下
少ない大動脈のクランプ回数 or OPCAB on pump beating CABG
徐々に復温:送血温と脱血温の差は10度未満で調整
人工心肺中の体温を低めに
alpha-stat 成人手術
高血糖を避ける
人工心肺中の圧を保つ(高リスク患者では70-75 mmHg以上)
赤外線脳酸素モニターを使う
貧血を避ける
術後
早期MRI診断
選択的順行性脳灌流
方法:体外循環による中心冷却で20~22度程度まで下げた後に循環停止
①弓部大動脈あるいは弓部分枝をオープンにしてからバルーンつきカニューレを内腔から各分枝に個別に挿入する方法
②左右の鎖骨下動脈や腋窩動脈を使用する方法
③直接弓部分枝に巾着縫合をかけてカニューレを挿入する方法
灌流量:10ml/kg/min(500ml/min)
利点:
脳への血流を優先的に維持する自己調節能により、低体温中は低灌流であっても虚血に対する耐性が完全循環停止と比較して増大することが実験的に示されている。
脳虚血時間の許容時間は長い(全弓部置換)
特に送血部位が限られる弓部大動脈手術では、腕頭動脈や頸動脈からの灌流が有効
欠点:
人工心肺回路が複雑
カニュレーションの時の脳塞栓の発症
→DHCAとの組み合わせによって手術成績は飛躍的に向上している
逆行性脳灌流
方法:DHCAに組み合わせてより脳保護効果を高め、上大静脈に留置してある脱血管より酸素化された血液を頭に送る
逆行性脳灌 流流量 800ml/min前 後
CVPを20mmHgに
利点:手技は簡単(上行置換)
欠点:許容時間はやや短い 60分以内
過去問
NIRSについて間違っているのはどれか
a.20%以上の低下で介入:位置を確認
b.貧血で過大評価する
c.CSF層が厚いと過小評価する
d.座位になると過小評価する
解説:
a.20%以上の低下で介入:位置を確認
NIRS値が基準値から20%以上低下した場合、脳の酸素飽和度低下を示唆するため、モニター位置や血行動態の確認・介入が必要です。
b.貧血で過大評価する
→ 実際は貧血により酸素運搬能力が低下するとNIRSは過小評価する傾向があります。貧血は光の吸収特性に影響しやすいため、過大評価は誤りです。
c.CSF層が厚いと過小評価する
→ 頭蓋骨と脳の間の髄液層が厚いと光の透過が妨げられ、実際より低い値が出やすく過小評価のリスクがあります。
d.座位になると過小評価する
→ 座位では頭部への血流が減少しやすく、NIRS値が実際より低く表示される傾向があります。
過去問
TAR、分離脳循環のために3分枝カテーテルを挿入したら、右橈骨 Aline圧が20台、左橈骨Alineの圧が40台だった。考えられる理由は?
a.左総頸動脈カテが 抜けかけている
b.腕頭動脈カテが深い
c.3分枝とも同じ経のカテーテルをいれてしまっている
d.末梢動脈に狭窄がある。
解説:b
TAR(全弓部大動脈置換術)で3分枝(腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈)にカテーテルを入れて分離脳循環を行う際、右橈骨動脈Aライン圧が20台、左橈骨動脈Aライン圧が40台と左右差がかなりある場合に考えられる理由について解説します。
a.左総頸動脈カテーテルが抜けかけている
圧低下の原因になる
カテ先端が血管内にしっかり留まっていないと、圧波形が弱くなり圧が低く表示される可能性がある。
ただし左橈骨圧が40台と低いのは左総頸側ではなく、右橈骨の20台が問題かつ低い圧なので、この説明だけでは不十分。
b. 腕頭動脈カテーテルが深すぎる
腕頭動脈カテが深いと圧波形が異常になる可能性あり
右上肢血流がカテによる閉塞や流れの乱れで低下し、右橈骨動脈圧が低くなることもある
右橈骨圧低下の原因としてはあり得る
c. 3分枝とも同じ径のカテーテルを入れている
同径のカテーテル使用であっても必ずしも左右の圧差が生じるとは限らない
血管径や流量の差により多少の影響はあるが、顕著な圧差の説明としては弱い
d 末梢動脈に狭窄があり血管抵抗が異なるため
左右上肢動脈の狭窄や血管抵抗の差で、同じポンプ流量でも実際の末梢血流は異なることがある
これにより左右の圧差が出る可能性はある
しかし通常術中に急激に現れることは少なく、また血管抵抗差だけでは極端な圧差は説明しにくい
対策:
まずはカテーテルの位置をエコーで確認し、位置調整を行うのが第一。
圧波形を確認し、波形異常や平坦化があれば閉塞や位置異常を疑う。
必要に応じてカテーテル交換も検討。
