森の夜は、静かな色を集めてできている
夜が近づくにつれて、森は少しずつ深い色へ変わっていった。
昼間はにぎやかだった風も落ち着き、葉の揺れる音だけが静かに響いている。
カラノアは、大きな枝の上で空を見上げていた。
その少し先には、ツェリケがいる。
何も言わず、ただ風の流れを眺めているだけなのに、不思議とその場所だけ空気が違って見えた。
「……きれいだなぁ。」
カラノアはぽつりと呟く。
最初は、本当に“きれい”だと思っていただけだった。
羽の色。
静かな立ち姿。
夜に溶け込むような気配。
でも最近は、それだけじゃない。
ツェリケのそばにいると、景色の意味が少し変わって見える。
遠くから、楽しそうな声が聞こえた。
「サンガラーン!勝負ーっ!」
ピカローザだ。
風みたいに軽やかに飛び回りながら、サンガランデへ踊りを挑んでいる。
対するサンガランデは、相変わらずキレキレだった。
「さんがらーん♪」
独特のリズムで、迷いなく踊っている。
その動きは派手で華やかで、見ているだけで楽しくなる。
ピカローザは笑いながら追いかけた。
「ちょっと待って速いってー!」
その声に、カラノアも思わず笑う。
楽しいことを探すのが好きなカラノアにとって、ああいう時間は宝物だった。
にぎやかで、自由で、止まらない。
でも、ツェリケの静けさもまた、不思議なくらい心に残る。
カラノアはそっと隣へ近づいた。
「ツェリケはさ、なんでそんなに落ち着いてるの?」
ツェリケは少しだけ目を細める。
風が羽を揺らした。
「森には、いろんな色があるから。」
静かな声だった。
「明るい色も、静かな色も、全部必要なの。」
遠くでは、ピカローザとサンガランデがまだ踊っている。
笑い声。
羽音。
風のざわめき。
どれも違う。
でも全部、この森の景色だった。
ツェリケは、そのことをちゃんと知っている。
だからきっと、何かを競うみたいに輝かなくても美しいのだろう。
カラノアは静かに空を見上げた。
自分は、楽しいことを探して走り回ってばかりだ。
でもそれも悪くないと思う。
ピカローザみたいに勢いよく笑う時間も。
サンガランデみたいに全力で踊る瞬間も。
全部、森を彩る色になる。
そしていつか、自分も。
“色を集める側”じゃなく、“誰かの心に残る景色”になれたらいい。
そんなことを、ふと思った。
夜風が静かに吹く。
ツェリケの羽が、夜の光をやわらかく映していた。
派手じゃない。
でも、目を離せなくなる美しさだった。
遠くからまたピカローザの声が響く。
「もう一回ーっ!」
「さんがらーん♪」
楽しそうな音に包まれながら、森の夜はゆっくり深まっていく。
その静かな景色を見つめながら、カラノアは小さく笑った。
この森には、ちゃんといろんな色がある。
だからきっと、こんなにも心地いいのだ。
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