『傷物語 -こよみヴァンプ-』旧三部作との変更点①声優の芝居
この『傷物語 -こよみヴァンプ-』論を書いた際のモチベーションのひとつには、旧三部作と総集編との違いが、世間一般的にほとんどまったく認識されていないことに対するある種の焦りのような、悔しさのような気持ちがあったのですが、とはいえ、それが広く認知されていないのも無理のないことだとは十分に理解しています。日常的な鑑賞経験のなかでは、そうした差異にまで意識を向けるのはなかなか難しいというのは、むしろ自然なことだと思います。
これは決して、日常的な鑑賞経験の仕方を軽視する意図があるわけではありません。それどころか、そうした日常的な鑑賞の仕方ほうが、作品の魅力を直に受け取れるという点で、かえって健全で望ましいのではないかとさえ思っています。
というのも、自分は旧三部作をこれまでに優に100回以上は繰り返し観ており、今回の総集編を劇場で封切り日の初日、新宿バルト9にて最速早朝の回で鑑賞した際には、どうしてもリテイク探しとでも言うべき視点から作品を観てしまいました。はっきり言ってそれはあまり褒められた鑑賞態度とは言えず、功罪入り混じるものがあると思います。

もっとも、そうした見方をしてしまうのも、ある程度は仕方のないことだと感じてもいます。監督・尾石達也のアニメに魅せられてしまった一人のオタクとして、そうした運命を受け入れるほかないと思うからです。
ところで、『こよみヴァンプ』において、特に強い印象を残した変更点は拙稿でも触れたとおり、モノローグの全面的撤廃と、ラストシーンにおけるカメラワークの大胆な反転です。これは、最低限押さえておきたい改変です。しかし、注意深く観察してみると、それ以外にも見逃すことのできない変更が随所に施されており、総集編全体がきわめて繊細な再構成のうえに成り立っていることが分かります。
なかでも視線が集まりやすいのは、映像に関係するリテイクや、完全新規で制作されたオープニングなどではないでしょうか。実際、自分自身もそうした演出には大きな衝撃を受けました。
しかし、それとは別に、どうしても個人的にこだわりたいポイントがあります。それは、キャラクター/声優の芝居、すなわち、アフレコの再収録がどのシーンで行われているのか、という観点です。
ここから先は
いただいたチップはシャフト公式オンラインショップ SHAFT TENに使うので、巡り巡ってシャフトのお金になります。
