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映画『ヴァージン・パンク』舞台挨拶 全レポ

2025年6月27日に劇場公開された映画『ヴァージン・パンク』第1弾「Clockwork Girl」の公開を記念して、東京と大阪で舞台挨拶が開催されました。

6月28日にはシネ・リーブル池袋、7月5日にはテアトル梅田にて実施され、監督の梅津泰臣さん、シャフト代表取締役社長の久保田光俊さん、プロデューサーの鈴木隆介さん、色彩設計の渡辺康子さんなど、豪華な制作陣が登壇。それぞれの回でテーマに沿って、作品の舞台裏が語られました。

各回は15分程度の短い時間でしたが、「企画」、「作画」、「音」、「色」、「演出」など、さまざまな切り口から制作過程でのこだわりや苦労、スタッフ同士のやり取りが明かされ、どの回も満席で会場は熱気に包まれていました。

テアトル梅田

本記事では、当日のトーク内容をレポート形式でまとめています。シャフトオタク界隈の協力もあり、池袋・梅田で開催された全舞台挨拶に参加できたため、7本すべてのレポートを作成しました。

『ヴァージン・パンク』がどのように生み出されたのか。その舞台裏を知る参考にしていただければ幸いです!

舞台挨拶レポ 作成者
第1回「企画について語る回」(あにもに)
第2回「作画について語る回」(mochimiz
第3回「「Clockwork Girl」について語る回」(otaku can change the world
第4回「音について語る回」(rino
第5回「色について語る回」(あにもに)
第6回「演出について語る回」(ab)
第7回「キャラクターについて語る回」(あにもに)


第1回「企画について語る回」

日時: 2025/06/28 (土) 12:20 上映後
会場: シネ・リーブル池袋 シアター1
登壇: 梅津泰臣 (監督)、久保田光俊 (シャフト代表取締役社長)
司会: 高橋 (アニプレックス)

シャフトで制作した理由

【梅津】
『それでも町は廻っている』や『幸腹グラフィティ』などシャフトさんでオープニングを手がけた際、そのクオリティが素晴らしかったんです。そこでこの企画を久保田社長に提案し、さらにアニプレックスの岩上さんに話が渡りました。本作は久保田社長と岩上さんがいなければ成立しなかった企画です。

【久保田】
梅津さんとはオープニング以外でも一緒に作品を作りたかったので、「梅津さんの100%以上が見たい」とお伝えしました。

企画書の段階ではどこまで具体的だった?

【久保田】
最初は3つの企画案がありました。その中で最も「梅津さんらしい」と感じたのが『ヴァージン・パンク』です。当初の仮タイトルは『Vespa』でした。キャラクター、美術設定、色彩など、アニメとして最適だと判断しました。

【梅津】
久保田社長から「原点回帰」という要望がありました。『ガリレイドンナ』や『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』を制作した後、次回作に迷っていた時期だったので、その言葉で気持ちが固まりました。シャフトのカラーリングには他スタジオにないセンスがあります。たとえばトミー・Jの色彩は当初は渋いイメージでしたが、久保田社長の提案で性格に合わせたカラーリングに変わりました。舌の色など、自分では思いつかない発想でした。個人的にシャフトらしさは「色」にあると思っています。自分のイメージとシャフトさんのセンスが融合して、作品が完成しました。

【久保田】
トミー・Jは印象に残るキャラにしたかったんです。梅津さんや色彩設計の渡辺さんと相談を重ねて調整し、さらに若本規夫さんの芝居が加わり、第1弾の良いゲストキャラになりました。

制作中に印象的だった出来事や思い出

【梅津】
プリプロダクションにかなり時間をかけました。作画もこだわりが強く、なかなか進みませんでしたが、その分クオリティは高いと思います。

【久保田】
梅津さんの100%以上を引き出せたと感じています。ただ、時間が無限にあれば良いというわけではありません。皆さんに見てもらうことで作品は完成します。そのための時間の使い方が一番難しかったです。

劇場公開が決まって制作方針に変化は?

【梅津】
最初からスクリーン上映に耐える映像を意識していたので、大きな変更はありません。シャフトさんで作る意義を考え、クオリティにこだわりました。

【久保田】
制作方針自体は変わらず、カットごとに満足してもらえるものを目指しました。

【梅津】
通常の制作会社には「ここまで」という期限がありますが、シャフトさんはこれだけの時間を確保してくれました。これは自分にとっても初めての経験で、以前の作品ではありえませんでした。

最後に一言

【久保田】
梅津監督は世界最高のクリエイターです。世界最高のアニメができたと信じています。

【梅津】
続編が何年先になるかは分かりませんが、必ず作ります。ぜひ劇場で何度も見てください。



第2回「作画について語る回」

日時: 2025/06/28 (土) 14:00 上映前
会場: シネ・リーブル池袋 シアター1
登壇: 梅津泰臣 (監督)、鈴木隆介 (プロデューサー)
司会: 高橋 (アニプレックス)

最もこだわった部分について

【梅津】
総尺35分(エンディングを除くと31~32分)に740カットを詰め込み、テンポ感や緩急を特に意識しました。うまくいったと確信しています。当然、740カット分のアニメーターが必要になったので、制作チームとの連携は大変でした。

【鈴木】
梅津監督と仕事をするのは毎回大変ですが、とりわけ本作は今までで一番大変でした。

【梅津】
楽しかったでしょう?(笑)

作画の難しさ・楽しさについて

【梅津】
阿部厳一朗くんとガッツリ組むことが命題で、ぴったりのシーンを割り振れました。高橋しんや(呼び捨て)はこれまでもずっと組んできたベテランなので、彼の持ち味を活かせるように考えました。観動真歩さんはとても若い女性アニメーターですが、担当したカット数は二原を含め100カット以上と最も多く、若手のホープです。

【鈴木】
アニメーターは基本的に、過去に梅津監督のもとで仕事をしたことがある方、または梅津監督から直接オファーを受けた方を中心に選定されました。自分はそのお手伝いをしました。

アクション作画について

【梅津】
本作では日常芝居に一番気を遣いました。アクションは上手い人に任せれば自然と上手く描いてくれるので、その時点で勝ちです。ただ、日常芝居をきちんと描ける人は本当に少ない。

【鈴木】
日常芝居ではコンテだけでなく、実際の人間の動きも多く参考にしました。シャフトの若手スタッフにポーズを取ってもらったこともあります。

【梅津】
宮崎駿さんもよく言っていますが、頭の中だけで動かさないことが大切です。現実の人間をきちんと見て描く。これが反映されたシーンが本作にはたくさんあります。やりきったと思います。それに、キャラクターごとに走り方が異なるので、さまざまな走り方を試せた作品でもありました。本当は時間があれば歩き方にもこだわりたかった。なんとなく描くことは避けるべきです。

【鈴木】
制作の終盤になってから全体を通して見直し、やり直すことになったカットもいくつかありました。

【梅津】
撮影処理が済んだものを見て、「なんか違うな」と思いリテイクしてしまいました。久保田社長、本当にすみません。

梅津監督が描いたカットについて

【梅津】
前作『弁魔士セシル』の頃から、処理演出に専念したい気持ちがあったのですが、結局は作画監督もすべて自分でやってしまいました。その疲れからか、まだ頭がボーッとしていますが、そのぶん自分の濃度、「梅津汁」が『ガリレイドンナ』や『弁魔士セシル』よりも滲み出ていると思います。

他作品では出さないような指示

【鈴木】
エフェクト作画にこだわりました。ほとんどのエフェクトは1秒24枚のフルコマで描かれており、普通のアニメではNGです。久保田社長に許可を得た……わけではないのですが、限界突破させていただきました。『Clockwork Girl』全体の作画枚数は約35,000枚です。

【梅津】
久保田社長には謝らないとですね(笑)。スケジュールに追われると、「なんか違う」と感じても直す時間が取れません。しかし今回は、シャフトとアニプレがたっぷり時間を作ってくれました。

作画・演出マニュアルについて

【鈴木】
基本的に作品ごとにあります。本作ではキャラクターを重視しました。

【梅津】
カゲやシワに関するNGマニュアルを作りました。自分が普段アニメを見ていて「これはやらない」と思うものを禁止に。ただし、ベテランほど手癖で描いてしまうので、全然マニュアルに従ってくれず、結局は自分が作監作業で修正することになりました。

最後に一言

【鈴木】
「梅津汁」が溢れ出ている作品だと思います。ぜひ楽しんでください。

【梅津】
笑いや衝撃もあります。素直な気持ちで見ていただけると嬉しいです。



第3回「「Clockwork Girl」について語る回」

日時: 2025/06/28 (土) 15:35 上映後
会場: シネ・リーブル池袋 シアター1
登壇: 梅津泰臣 (監督)、鈴木隆介 (プロデューサー)
司会: 高橋 (アニプレックス)

初めて完成版を見た際の感想

【梅津】
制作期間が長かったので「ようやく終わった」という気持ちと、「本当に終わったのだろうか……?」という気持ちがありました。「いつ終わるのかな?」という感覚をずっと持っていたので、実感がわかなかった。全編を通して見て「ああ、終わったんだ」とあらためて感じました。

【鈴木】
同じ気持ちです。「梅津さんの後ろにカットがないのは寂しいですね」と話しました。繋がったものを一本のムービーとして観る機会は限られていましたが、最後に見終わった時、「作って良かった」という思いと、「これを梅津監督のファンの皆様に届けたい」という気持ちを新たにしました。

タイトルに込められた意図

【梅津】
「ヴァージン・パンク」というタイトルは自分がつけたものではありません。当初の企画段階では別のタイトルがありましたが、スタッフと話し合う中で50~60案ほど自分でも出しました。しかしすべて却下されて悲しかったです。そんな中、脚本の高橋から「ヴァージン・パンク」という案が出ました。「Clockwork Girl」も同じく高橋からの提案で、副題が必要になり決まりました。自分のオリジナル作品で自分以外がタイトルを決めたのは初めてです。今ではしっくりきていて、大好きなタイトルになりました。

【鈴木】
その場では梅津さん以外が満場一致で決めました。この作品にぴったりのインスピレーションがありました。現場では「VP」と略して進めていましたが、人によっては「ヴァージン」と略すこともあり、社内で「今のご時世的にどうなの!?」と(笑)。

制作の初期から完成までに変わった部分、ブレなかった部分

【梅津】
紆余曲折はあまりなく、当初のイメージ通りの流れで完成しました。現場で起きたアクシデントに都度対応したぐらいです。

【鈴木】
ブレはなかったと思います。梅津さんの絵コンテを見たことがある人はわかると思いますが、かなり緻密に組む方なので、明確なビジョンがある状態で進行しました。ただ、絵コンテにないものが増えたのは事実です。実際、コンテは3回ほど増えています。

【梅津】
例えばエンディングでタイトルが出た後に乃愛というキャラクターが登場するシーンは、脚本にはなく制作途中で追加しました。オープニングの楽曲も同様です。中盤のアクションシーンも足しました。アニメーターには負担をかけましたが、結果的に追加して良かったと思います。通常30分アニメは実尺23分程度で300~400カットが定石ですが、今回は32分で740カットほど。カット数の多さは現場に相当な負担をかけるとあらためて実感しました。

R-15で公開するにあたって攻めた部分

【梅津】
当初から、アニメ業界にあるルールや制約を外し、「自分たちが表現したいものを作る」という意思で進めました。公開が決まった段階でR-18かR-15かという議論になり、R-18でも良かったのですが、エロ方面に印象が偏るのは良くないと思って、R-15にしました。一番望んでいた形で公開できたと思います。

【鈴木】
企画時点から「梅津監督を100%で出そう」という方針だったので、変に縛る必要はありませんでした。その結果、R-15になりましたが、エロやグロを目立たせる意図はなく、あくまでエンタメの一環として盛り上げるためでした。メーカー側から「さすがに……」と止められた裏設定がひとつだけありますが、それ以外は自分たちのやりたいことを全力で形にできました。

2回目以降の鑑賞時に注目して欲しい点

【梅津】
第2弾に続くフックが散りばめられています。「これなんだろう?」と思った点は続編で明らかになりますので、ぜひ見つけてください。

【鈴木】
1カット1カット緻密に作っているので、キャラクター以外にも背景やCGに注目して欲しいです。具体例を挙げると、乃愛ちゃんが本編にも1カットだけ登場しています。

(発見できたか観客席に確認があり、2名ほど挙手)

【梅津】
一瞬ちらっとしか出てこないので、一度では気づきにくいと思います。見つけてくださってありがとうございます。ぜひ複数回観る中で発見してください。

最後に一言

【鈴木】
こうしてファンの皆さんの前に立つ機会は滅多にありません。皆さんの姿を見て、自分たちが作ってきたものが届いていること、そこからもらえるパワーを感じました。

【梅津】
新作発表は久しぶりで、思い入れが深い作品になりました。「梅汁濃度」が相当に高い作品です。劇場で何度も観る中で新しい発見や楽しさを感じていただけたら嬉しいです。ぜひ繰り返しご覧ください。



第4回「音について語る回」

日時: 2025/06/28 (土) 17:15 上映前
会場: シネ・リーブル池袋 シアター1
登壇: 梅津泰臣 (監督)、久保田光俊 (シャフト代表取締役社長)
司会: 高橋 (アニプレックス)

キャスティングについて

【梅津】
キャスティングで一番印象的だったのはオーディションです。4、5年前に行って、その時点で主要キャストを決定し、収録も済ませていました。しかし、自分たちの現場の制作がなかなか終わらず、声優の皆さんを長い間待たせてしまいました。神氷羽舞役の宮下早紀さんにも随分お待ちいただきました。完成した作品をご覧いただける今、あらためて宮下さんのお芝居がとても印象的なので、ぜひ楽しんでいただきたいです。また、個人的には若本さんをキャスティングできたことも大きいです。非常に特徴的で面白いお芝居で、本作に欠かせない存在になっています。自分も久保田社長も特別な思い入れがありますので、こちらもぜひご注目ください。

【久保田】
スタジオ収録の際、アフレコ中に若本さんの演技に対して、われわれスタッフの方が大きなリアクションをしていましたね。

【梅津】
若本さんはベテランなので、椅子に座りながら演じられていたのですが、とてもそうは見えないほどの熱量がありました。ぜひその力強さを楽しんでください。

アフレコに関するエピソード

【梅津】
エレガンス役の小西さんは、長回しのシーンでアドリブをお願いしたところ、ノリノリで演じてくださいました。ルイス・ガウディ役の八代拓さんも、面白い芝居をしてくれています。

音響監督をアサインした経緯

【梅津】
はたしょう二さんは、『ガリレイドンナ』を担当したときにご一緒した音響監督で、その際とてもスムーズに進めることができました。今回もぜひお願いしたいと久保田社長に提案しました。その結果、素晴らしい仕上がりになったと思います。

【久保田】
私は初めてはたさんとお仕事しましたが、どのような仕上がりになるか楽しみにしていました。ワンカットごとに丁寧に作業され、ダビング終了後も編集や効果・音楽の追加など最後まで密度の高い音作りをしていただきました。ぜひ、その音を劇場で味わっていただきたいです。

【梅津】
音響効果を担当した倉橋裕宗さんも、現場でまだ完全に絵が揃わない段階から非常に良い音をつけてくださいました。このお二人の執念を感じてもらえると思います。

劇場上映での音響面のこだわり

【梅津】
プロデューサーから5.1chでの上映を提案してもらえたのが嬉しかったです。これは作り手として理想的で、一観客として作品を観る際にも音で心を揺さぶられる体験ができます。銃声だけでなく、画面外で鳴っている音にもこだわりました。

【久保田】
われわれは映像を二次元の「面」で作り込んでいますが、音楽や効果音に助けられる部分が大きいです。劇場での上映は、画面以上の空間や臨場感を生み出し、絵作りの大きな助けになりました。

【梅津】
「この音が入っているから作画を派手にしよう」あるいは「逆に抑えよう」といったケースもありました。音と絵の掛け合いが生まれる瞬間です。

音楽について

【梅津】
出羽さんはとても若い作曲家で、はたさんからの推薦でした。打ち合わせの中で、出羽さんが手掛けられた実写作品を見て「これは良い」と感じ、信頼できると思いました。本編でも絵に合わせて音を当て込むことができ、ハリウッド方式のような方法で取り込めました。

【久保田】
フィルムスコアリングのような形で進められたので、映像と音楽のシンクロ率が高くなったと思います。普通のテレビシリーズでは時間的に難しいですし、劇場作品でもなかなか採用されない手法です。ただ、今回は最初からこのやり方を目指していたので、ラッシュの中でどんどん取り入れていきました。

楽曲のオーダーについて

【梅津】
「こういう音楽が良い」というイメージを音響スタッフと相談しながら詰めていきました。お互い感覚が合っていたので進めやすかったです。オーダー時に一番大事にしたポイントは羽舞の周りの音楽ですね。心情的な面や、エレガンスに合う音楽には特にこだわりました。音響のはたさんが「映画『夕陽のガンマン』のエンニオ・モリコーネの音楽が好き」とよく話していましたが、実は久保田社長も好きなんですよね。昨年あったリバイバル上映を一緒に観に行き、「世代間の共通原理があるな」と感じました。もっとも、これはあくまで「センス」の話であって、本作に直接影響しているわけではありません。

主題歌について

【梅津】
既存曲を使いたかったのですが、プロデューサーにすべて却下されました(笑)。ソニーミュージックだからいけると思ったんですけどね。そこで、「80年代の日本音楽が2099年に再流行している」という設定を活かして、その雰囲気をオーダーしました。

【久保田】
懐かしい感じの曲で、相当粘りましたよね。既存曲の案はみんなで新規作成案に変えようと提案し続けましたが、これが一番苦戦した部分でした。

【梅津】
プロデューサーとぶつかることもありましたが、結果として良いものができ、とても気に入っています。

最後に一言

【久保田】
最初の舞台挨拶で本作のテーマを「色」という言葉で形容しましたが、演者や音にも「色」があると思います。そういった意味で、本作は素晴らしい「色」に仕上がったと感じています。ありがとうございました。

【梅津】
今作は、シャフトの撮影監督の二人(会津孝幸、江上怜)が参加してくれました。とても助けられましたし、何よりもシャフトさんで本作を作りたかった理由のひとつが、撮影監督のお二人の存在でした。素晴らしい映像に仕上がっているので、ぜひそこを楽しんでいただきたいです。また、社長がおっしゃったように、「色」は本作において大切な要素です。色の決定過程では、社長のアイデアから生まれたキャラクターもいます。「あのキャラって社長の発案だったんだ」と気づく視点でも楽しんでいただければと思います。ありがとうございます。



第5回「色について語る回」

日時: 2025/07/05 (土) 13:10 上映後
会場: テアトル梅田 シネマ4
登壇: 梅津泰臣 (監督)、久保田光俊 (シャフト代表取締役社長)、渡辺康子 (色彩設計)※サプライズゲスト
司会: 高橋 (アニプレックス)

色の特徴や挑戦したことについて

【梅津】
一般的なアニメでは、通常はシーンごとに色指定を大まかに決め、あとは流れ作業で進めることが多いですが、今回は1カットずつ相談して調整しました。背景や作画が上がるたびに、色を決定していきました。

【久保田】
シャフトでは、演出としてカットごとに色を変えても良いという考え方があります。カメラの寄りや引き、ライティング、レイアウトで本来色は変わるものです。必ずしも「ノーマル色」である必要はない、という映画的な発想で、今回はその考え方をさらに極限まで突き詰めました。

【渡辺】
納品前日まで梅津さんとやり取りし、色の作業を続けていました。最終盤の数カットは、私の判断で決めたものもあります。

【梅津】
トミー・Jは当初ダークトーンにしたいと思っていましたが、久保田社長から「派手な色の方がキャラクターに合う」という提案を受け、康子ちゃんに色を調整してもらいました。自分のイメージとシャフトの感性が融合しています。

【渡辺】
トミー・Jの髪は左右で色が分かれています。アニメの仕上げのセオリーとして、セルが分かれている箇所は色を変えるというのがあります。そこで、まず髪の色を分けることを考え、三原色をベースに作りました。

風呂場のシーンについて

【梅津】
風呂場は全体をブルートーンでまとめています。この青の色味を決める上で、いろいろと模索しました。

【渡辺】
アナログからデジタルに移行したことで、色の幅は広がり続けていますが、その一方で昔あった「イメージ的な色変え」の発想が忘れ去られています。今回はカラーチャートを使い、色をずらしながら検討しました。風呂場のシーンでは羽舞のオレンジ色の髪を、青い環境の中でもオレンジに見せるため試行錯誤しました。

オープニングについて

【梅津】
オープニングのカットは、康子ちゃんに自由に色を決めてもらいました。自分からは大まかなイメージだけ伝え、具体的な色の指定はしませんでした。

【久保田】
さっき楽屋でその話を聞いて驚きました。てっきり梅津さんが細かく色を指定しているのかと。

【渡辺】
自由に楽しく作業させてもらいました。ただ、一度黄緑色を使ったカットを渡した後、梅津さんが「緑色は嫌い」と仰っていたのを思い出しました(笑)。

【梅津】
緑は使いどころがとても難しい色です。ただ、黒は「色ではない」と言う人もいますが、自分は黒が好きです。オープニングには康子ちゃんの感性がよく出ていると思います。

思い入れのあるシーンについて

【梅津】
ひとつに絞ることはできません。すべて細かく入念に計算して作ったので、どのシーンにも思い入れがあります。

【久保田】
どこを切り取っても、アートのようなアニメになっていると思います。

【渡辺】
特に煙のカットを見て欲しいです。煙の作画はMセルくらいまで重ね、そのひとつひとつに色をつけました。手前は暗くコントラスト濃いめ、奥は明るめでコントラスト薄め、と空気遠近法を意識しました。ただ、完成映像では撮影処理(Wラシ)がかかり、一見消えて見える部分もありますが、そこはこだわりがありました。

注目して欲しいポイント

【梅津】
エンディング前の雨のシーンです。水の表現が非常に良く、撮影監督も「自慢のシーン」と言っていました。

【久保田】
ガウディも、もともとは渋い色でしたが、社内で様々なパターンを検討した結果、赤いジャケットになりました。キャラクター設計において色を活用している点にも注目して欲しいです。

【渡辺】
煙のシーンもそうですが、すべてのセクションが一丸となって作り上げた作品です。ぜひ全体を見ていただけると嬉しいです。



第6回「演出について語る回」

日時: 2025/07/05 (土) 14:50 上映前
会場: テアトル梅田 シネマ4
登壇: 梅津泰臣 (監督)、鈴木隆介 (プロデューサー)
司会: 高橋 (アニプレックス)

梅津監督にとって「演出」とは

【梅津】
アニメ制作は基本的に分業です。監督のみ担当する人もいれば、今回のように監督と演出を兼任する場合もあります。演出は、ビジュアル面で監督を補佐する役割だと考えています。今回は監督のほか、キャラクターデザイン、作画監督、絵コンテ、演出まで自分が担当しているので、監督と演出の違いはほとんどありません。

すべてを担当した梅津監督への印象は?

【鈴木】
ネットの感想を見ても、今回の目標だった「梅津濃度」、梅津ファンが見たいフィルムを作るという目標は達成できたと思います。監督がすべてを担当されたので、中盤で「もう無理だ」と言っていた時には、お尻を叩くのがプロデューサーの仕事でした。

【梅津】
正直、もっとお尻を叩いてほしかったですね(笑)。

演出方針について

【梅津】
演出は70%が絵コンテで決まると考えています。今回、その絵コンテをすべて自分が担当したので、演出方針もそこに反映されているはずです。

【MC】
鈴木さんは絵コンテを見たとき、どのような印象でしたか?

【鈴木】
素晴らしい絵コンテだと思いました。梅津さんの絵コンテは細かく、説明文もびっしりと詳細に書かれています。なかなかできることではありません。

【梅津】
ただし、絵コンテをアニメーターさんに渡しても、思い通りにいかないこともあるので、それを修正していくのが演出の仕事です。

演出でこだわった点

【梅津】
今回は原作のないオリジナル作品なので、シナリオから絵コンテに起こした段階で見えてくるものもありました。初見でどういう印象を与え、どう受け止められるかを意識しています。演出マニュアルや作画マニュアルも作りましたが、正直あまり見てくれる人は少なかったです(笑)。ただ、しっかり活用してくれる人もいたので、作った甲斐はありました。

注目して欲しいポイント

【梅津】
全セクションが頑張ってくれました。色、音響、編集……すべて見て欲しいです。特に注目ポイントはあるのですが、ネタバレになるのでここでは控えます。エンディングを除くと本編は33分、カット数も多いので「瞬きしたら2、3カット飛んでしまう」くらいです。ぜひ瞬きを我慢して見てください。

【鈴木】
美術に注目して欲しいです。特に生活感を意識していて、窓の中の灯りや、「汚し」の表現などは特徴的です。例えば、キービジュアルも下の方に鳥の糞が描かれているんですが、実際のキービジュアルではそこがカットされました。

【梅津】
舞台設定はポルトガルのリスボンがモデルで、美術監督の二人が現地取材に行き、空気感を参考にして作ってくれました。ちょうど自分は『刀剣乱舞-花丸-』のオープニング制作中だったので現場を4日離れられず、同行は断念しました。

演出面でのチャレンジ

【梅津】
シャフトさんで長い制作期間を取っていただいたおかげで、細かい芝居まで実現できました。そのこだわりをぜひ見つけて欲しいです。

【鈴木】
長期間の制作の中で、反省点も多くありました。次回作ではそれを改善していきたいです。

最後に一言

【鈴木】
劇場公開に向け、十分に満足いただけるものができたと思っています。

【梅津】
何度も見て欲しいです。瞬きして逃してしまったカットがあれば、もう一度観に来てください。



第7回「キャラクターについて語る回」

日時: 2025/07/05 (土) 16:20 上映前
会場: テアトル梅田 シネマ4
登壇: 梅津泰臣 (監督)、久保田光俊 (シャフト代表取締役社長)
司会: 高橋 (アニプレックス)

キャラクターのインスピレーション

【梅津】
企画を久保田社長に渡す際、キャラクターも一緒に添えました。自分はキャラクターデザインも手がけるので、アニメーションの時代の流れも意識しながら、今流行っている絵柄や数年後に流行しそうな絵柄を取り入れるようにしています。ただ、結局は自分が生理的に描いていて気持ち良いと思える絵に落ち着きます。「梅津さんは時代を気にせず自由に描けば良い」と言ってくれる方もいますが、自分の中では「時代感を取り込む」というテーマを常に意識しています。

【久保田】
最初に企画書でキャラクターを見たとき、「ザ・梅津さんらしいデザイン」だと感じました。制作が進む中で細部はアップデートされましたが、コンセプトは初期から一貫しています。

【梅津】
デザインの際、自分の癖をいったん置いて、時代の流行に寄せて描くこともあります。ただ、作画監督として自分が連続して描くことを考えると、「これは続けて描けるだろうか」と懸念があり、最終的には自分の絵柄に落ち着くことが多いです。ただ、アニメーターは基本的に自分の画風を偏愛することはなく、常に変革していく意識があるものです。『ヴァージン・パンク』も、自分自身の変化の過程のひとつだと思います。

【久保田】
とにかく今の梅津さんが「一番良い」と思うものを作ってほしかった。『ヴァージン・パンク』はその期待にしっかり応えていると思います。

キャラクターデザインで悩んだ点・手応えを感じた点

【梅津】
エレガンスのようなおじさんキャラは自分の得意分野です。様々な人生を経て歪んだキャラクターを描くのが大好きです。一方、ガウディはかなり苦労しました。以前、オープニングで『刀剣乱舞-花丸-』、『文豪ストレイドッグス』、また『DYNAMIC CHORD』でイケメンキャラをたくさん描きました。その経験から「美少年を描くこと」がひとつの課題になっていました。イケメンにも色々なタイプがいますが、ガウディをどのレベルのイケメンにするかは悩みました。

スタッフ間で人気のキャラクター

【梅津】
マギーは自由気ままなキャラで、アニメーターから「描きやすい」と言われました。羽舞は笑わない女の子で、基本的に怒っているようなキャラクターですが、その中にもある可憐さを見つけてくれるアニメーターもいました。

【久保田】
私はエレガンスがとても好きです。ただ、社内でヒアリングをしたところ、人気なのはガウディでした。一方で、エレガンスは「変態で気持ち悪い」という声もありました。個人的には、カッコよさと変態さを兼ね備えた魅力的なキャラだと思います。

【梅津】
ひとつここで伝えておきたいのは、ネットで「エレガンスのモデルが梅津監督自身ではないか」という感想を見かけましたが、それは違います(笑)。もちろん、少し重なる部分もあるのかもしれませんが……。

キャラクターを魅力的に描くために意識していること

【梅津】
キャラクターの魅力は絵柄も大切ですが、何より脚本が重要です。『ヴァージン・パンク』はシナリオにかなりの時間をかけました。脚本から魅力を引き出すのが絵の役割だと思っています。

【久保田】
100%以上の「梅津キャラ」が出来上がったと思います。さらにアクションが加わり、それぞれのキャラらしい動きがつき、キャストさんの芝居も乗ることで、面白いキャラクターに仕上がっています。

【梅津】
キャラクターの魅力は日常芝居に宿ります。ぜひその部分にも注目して貰いたいです。

キャスティングのポイント

【梅津】
羽舞については特に声質にこだわり、彼女にぴったりの声を選びました。エレガンスもオーディションを行いましたが、以前の監督作でお願いした小西さんがいたので即決でした。トミー・J役の若本さんは『弁魔士セシル』でカエルの役をお願いしたことがありましたが、今回のアフレコ前にご挨拶した際、「ゲストキャラだけどカッコ良い役だね」と言ってくださいました。「カッコ良い役……ではないかも」と思いつつも、素晴らしい芝居をしてくださったので、ぜひ堪能していただきたいです。

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